追加でもう一つ
Twitterできるならということで、紹介します。
M3からです
真の「日本の医師会」の創設が理想- 安達秀樹・京都府医師会副会長に聞く◆Vol.2
――選挙後の周囲の反応は。
4月1日の選挙当日に、感謝の会を開きました。私が最初の挨拶で、「残念に思います。『夢破れて山河あり』ですから、我々は京都に帰ります。この我々の主張の検証をして、さらに発展させていきたい」と申し上げた。その後、来られた各医師会の代表の方々が、ほとんど全員、挨拶ができる状況ではなかった。皆さん、涙され、絶句されていた。「森先生の考え方がなぜ理解してもらえないのか。このことを非常に残念に思う」と。これは私たちにとっては、衝撃でもあり、感動でもあり、財産でした。だからその責任は我々にはある。
――会長選挙が終わったから終わりではなく、検証し、次につなげる責任はある。
あるインタビューで、森候補は「日医を変えていくのに、二つのやり方がある」と言っています。一つは、地元で、草の根的にやり、その結果を出しながら変えていく。ただこれは時間がかかる。日医会長になり、トップダウンで実施した方が早く、今の状況を考えるとそのスピードでやらなければいけないほどの状況だと思う。だから会長選挙に出た。これは正しい。ただ、これが実現しなかったのだから、一つの都道府県医師会として、草の根的にやって、これを建設的な提案にして日医の会員としての責任を果たす。これはこれまでやってきたことで、回帰するわけです。
――研究会はいつ頃、立ち上げる予定でしょうか。京都府医師会として発足されるのか、あるいは任意の団体にされるのか。
それほど時間をおかずに立ち上げる予定です。組織形態は、どんな形にすれば一番いいのか、それも考えたいと思います。また全国的な議論につなげたいので、お集まりいただく方には門戸を閉ざすことはありません。
――先生がお持ちになっている「危機感」という意味では、どんなタイムスケジュールで主張を検証し、提言などをされていくと想定されているのでしょうか。
今の40歳代よりも若い会員は、今後、消費税も上がるなどの状況もあり、我々よりももっと強い危機感を感じている可能性が高いわけです。そこまで代替わりして、「個別の会員が本当に困る」という状態まで行ってしまえば、もう取り返しがつかなくなります。「こんなことになっているのか」「こんな状態にしたのは誰なのか」と言われるようなったのでは問題。そうならないうちに手を打たなければいけません。それが我々の次世代に対する責任でしょう。
――新しい日医執行部に対して、今後どう見ておられるのでしょうか。
「(横倉氏が日医の会長と副会長では)100倍違う上、スピード感を持ってやる」とおっしゃったのだから、当面はまずその手腕を拝見させていただきます。
――先生の中医協委員としてのお立場は、何か変わることは。
中医協委員は、厚生労働大臣の任命です。また、昨年秋に我々3人(注:安達氏のほか、日医常任理事の鈴木邦彦氏、全国医学部長病院長会議顧問の嘉山孝正氏)が中医協委員として再選される際に、日医の推薦を受けています。診療側7人のうち、5人は医科の代表ですが、日医がしっかりとした基本理念を持ち、活動するようになれば、各病院団体もそれに納得し、5人とも日医の推薦という形になるでしょうし、本来、そうした形でないとおかしいと思います。
――4月2日の日医の定例代議員会の際、横倉会長は「日医の綱領を定める」と発言されました(『「日医の綱領」の策定目指す、横倉新会長』を参照)。新執行部の取り組みとしては、この辺りを期待する。
私が3、4年前、日医の都道府県医師会長会議で、「社会保障立国論」を唱えた時に、拍手が聞こえた。それが横倉先生でした。横倉先生も同じ考えであり、その思いを「綱領」という単語で表しているのだと思います。ただ私は、綱領というより、日医の「基本理念」と言った方が合っていると思う。
与野党ともに不安定な状態で、まずはこの「基本理念」を作ることを急ぐべきだと思うのです。国の財布は一つであり、「引き上げは難しい」という財務省の抵抗がある中で、今回の診療報酬では、0.004%アップした。しかし、前回の0.19%、今回の0.004%にしても、結局は、本体改定の原資は薬価引き下げ分。これが正常な形とは思えない。国の方針として、税金の使い道として「医療を充実させる」という理由で引き上げるならば、0.19%や0.004%という話ではない。「診療報酬は引き上げない。新自由主義的に進める」のであれば、下げればいい。その代わりに混合診療を導入する。我々は前者として行きたいし、日本の国民には合わないだろうことも含めて、後者は否定したい。
だから、「基本理念」の作成は急ぐべきこと。それを「綱領」と言うと、非常に表面的に映る。
――日本の医療がどうあるべきか、そのために日医がどんな役割を果たすべきかを、「基本理念」で定める。
その通りです。それを検討するのが、日医総研の大きな役割だと思うのです。しかし、この辺りの機能は今は全然ない。だから私は「今の日医総研は、片肺飛行だ」と言っているのです。係数分析をすることは大事。その上で、例えば社会保険の一本化を提言するのはいいのですが、これは各論。なぜ一本化なのか。理論的根拠が弱い。
――そうした社会的、対外的な活動の一方、組織のあり方、「医師の団体」として日医が取り組むべき課題は。日医の定例代議員会でも、組織率の低下を懸念する声が数多くありました(『全医師の日医加入を求め、質問が集中』を参照)。
これは私の個人的見解ですが、勤務医による全国医師連盟ができた時に、実は相当期待をしていたのです。勤務医は被用者の立場。一方、日医は基本的には経営者団体としてスタートしている。経営が成り立たなければ、医療はできないので、これは大事なことです。ただ、中途半端に今の日医の組織の中に、常任理事の勤務医枠などを設けても、限界はあるでしょう。経団連の中に、連合の組織を入れるようなものだからです。
――雇用者と被用者の利害は時に対立する。
そうです。しかし、経団連とは違う事情が、日医にはあります。雇用者と被用者では立場は違いますが、医師としての責任は同じ。私自身は勤務医の時代、日医に対しては何の興味もなかった。「そう言えば、そんな組織があるな」という程度だった。当時はそれほど医療界におけて問題もなかった。経済は右肩上がりで、医療費は伸びた。臨床も、研究もやり忙しかったけれども、勤務医として、不安とか危機感を感じたことはあまりありませんでした。
しかし、これだけ医療が高度化し、煩雑になり、ますます業務内容が増えている。だけど医療費は伸びない。雇用者と被用者という立場を超えて、医師であるが故に持っている責任についての問題点が最近、多々出てきており、日本の医療提供体制のあり方を考えなければいけない。ただ、全国的に見て、勤務医の立場で声を上げる方は、ごく一部。勤務医の皆さんにも、問題意識を持ち、もっと主体的に考えてもらわなければいけません。
――では勤務医の組織はどう作れば、変わっていくのでしょうか。
日医の中に勤務医の組織を包含するのは、先ほども言いましたように、いろいろな面で限界があると思います。本当は、全国医師連盟がもっと大きくなって、被用者としての問題を中心にして議論すべきだったのでしょう。一方で、経営者の団体があり、病医院の問題を経営的観点から議論する。さらにこれらを超えて、医師という立場で解決しなければいけない問題については、両方で一緒に議論する。被用者と雇用者、両方の団体があり、両者が大同団結して、本当の「日本の医師会」になるのが、理想的なのだと思います。
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この文章を読んだ時になるほど、と思いました。
勤務医の立場で声を上げる人は一部でしょう。
1、今の医療に問題意識がある
2、勤務の厳しさを実感している
3、忙しい中に何とか「発信する意欲」「発信する時間」「発信する力」を持っていること。
僕も含めて多くの勤務医は忙しさに流されています。本当に忙しい勤務医は、それこそ死にそうなくらい忙しくて・・・たぶん、今の日本人が政治にあまり口を出さない(毎日に必死で、政治に目がいかない)のと同じような理由で声を上げていないと思います。
僕もそういった人の代弁者としての全国医師連盟や医師ユニオンに期待しております。
いつも読んでいただいてありがとうございます。今後もよろしくお願いいたします。