新・眠らない医者の人生探求劇場・・・夢果たすまで

血液専門医・総合内科専門医の17年目医師が、日常生活や医療制度、趣味などに関して記載します。現在、コメント承認制です。

電子カルテよりも処方箋の電子化をという意見:思わず納得

2012-05-27 16:46:38 | 医療

こんにちは

 

僕は明日から出張で数日留守にするのですが、嫁さんの友人が遊びに来るということで、その準備の買い物をしておりました。

その帰り道に「つばめ」が飛んでいるのをみて、少し時期はずれかと思いましたが、よいことだと感じました。

 

さて、今日はまずこちらの記事を紹介します

 

医療情報の電子化について

以下は、言論屋台「アカデミア」の投稿を短く抜粋したものである。全文を読みたい方は、そちらを参照されたい。
http://academia126.com/?p=376

私は医師である。

毎日、患者やその家族に、
1)「今までどういう病気にかかってきましたか?どういう治療をされましたか?」
2)「現在、どういう病気の治療を受けていますか?」
3)「どういう薬を飲んでいますか?」
というような質問をしている。

1)は「既往歴」に関する質問であり、2)は現病歴に関する質問であり、3)は「服薬歴」に関する質問だ。

いつも思うのだが、医師が患者側にこんなことを聞くのは、本来、おかしいのではないか。症状や受診動機を聞くならともかく、どんな病名で、どういう医療行為を受けてきたか(いるか)など、特殊な興味でもないかぎり、患者は正確に記憶していないし、伝えられてもいない

患者を介さず、専門家の書いた情報をダイレクトに読めれば、どんなに楽かと思う。本来、そのために、「紹介状」というものがあるのだが、受診するたびに、紹介状を事前に用意することは、現実的ではない。

カルテを電子化・オンライン化するだけでは、医療情報の共有はできない

世間には、カルテを全国共通規格で電子化してオンライン化すれば、医療情報が関係者の間で共有され、医療が効率化されるだろうというような夢想を語る、孫正義のような人がいるのだが、そんなに簡単にはいかない。

カルテが電子化・オンライン化されるだけでは、情報は伝わらない。カルテ(診療録)は、医師法第24条により記載を義務付けられているが、内容には何の規則もない。

カルテの実態は、医師の個人的備忘録だ。他人に読ませることを前提として書かれてはいない。とても他人が読めたものではない。自分がわかればいいからである。研修医クラスなら、指導医からカルテの書き方の指導をされているので、人に読ませるカルテを書くこともあるが、読むのは指導医だけだ。部外者には何が書いてあるんだかよくわからない。まして、診療科や職種が違えば、なおさらわからない。

つまり、カルテがオンライン化されていても、情報を伝えるには、読む人のレベルに合わせて、要約して書くという作業が必要不可欠なのだ。この点は、紹介状を書くのと何ら変わるところはない。紙カルテが電子化されれば、他人の汚い字を読まないで済むので、可読性が高くなるメリットはあるが、それだけだ。

患者のプライバシーや告知の問題もある。患者は担当医以外に知られたくないことがあるし、医師には、患者のためを思えばこそ、患者に伝えたくない情報があるのだ。

電子カルテを全面導入するなら、記載内容ごとに閲覧権限を細かく管理する必要があるが、そこまで手の込んだ電子カルテはまだない。丸ごと見せるか、見せないかのいずれかだ。部分的に閲覧資格を制限すると、必要な場合は、制限を解除するために、管理者から許可を取る必要があるが、執筆者に聞かなければ、見せていいかどうかわからない。結局、閲覧権限の管理にコストがかかってしまって、何のための電子カルテなのかよくわからなくなる

つまり、電子カルテは発展途上の技術であり、Windows XPみたいな決定版が出るのは、ずっと先だ。現状は、せいぜい、Windows 3.1ぐらいだ。中途半端に規格化して、進歩を止めるべきではない。まして、全国共通規格のオンラインカルテの開発など、時期尚早である。

服薬歴の電子化は低コストで、効果は絶大

しかし、服薬歴の電子化に限れば、話は比較的簡単だ。認可医薬品の名前や規格は、政府によって一元管理されている。誰が、どの薬をどれだけ処方されているかということに、曖昧さはまったくない。また、本人に秘密にすることもできないので、告知の問題もない。オンライン化さえしなければ、プライバシーは守られるだろう

具体的には、服薬歴を、ICカードに記憶させるのだ。媒体が増えると管理が面倒だから、お薬手帳と処方箋と保険証を、カード1枚に統合する。保険診療を受けるのに、保険証を持ってこない患者はいないので、お薬手帳を忘れてくるという問題はなくなる。

服薬歴の電子化は、医師の手間の削減や情報の精度向上以外にも利点がある。薬剤師の仕事の大半を自動化できるのだ

薬剤師の業務の一つに、「処方箋の疑義照会」というものがある。薬剤師法第24条に規定されるごとく、処方の間違いを発見することは薬剤師の法的義務なのである。現在は、処方箋を見て、不審な点があれば、処方医に電話で照会するという形で、手作業でやっている。

手作業の非効率性や信頼性の低さもさることながら、このシステムの問題点は、複数薬局を使うと、併用禁忌や重複投与を検出できないということにある。

厚生労働省と日本薬剤師会は、複数医療機関から発行された処方箋を、「かかりつけ薬局」でのみ応需することで、この問題に対処しようとした。しかし、患者の移動の手間や、在庫費用の問題により、かかりつけ薬局はほとんど普及しなかった。不特定多数の処方医が使う可能性のあるすべての医薬品を、一つの薬局が在庫することなど、無理にきまっている。

厚生労働省も、どうやら、かかりつけ薬局の非現実性に気がついたらしく、今春から、「お薬手帳」を全員に発行し、携帯させることにした。処方歴を、かかりつけ薬局に蓄積するのではなく、患者が自分で持ち歩けるようにしたのだ。これなら、どこの薬局に処方箋を持って行っても、過去の処方歴と照合して、ミスを発見してもらえる。

しかし、最新のオーダリングシステムなら、入力された範囲内での投与量ミスや併用禁忌ぐらいは、自動検出してくれる。患者の属性(性別、年齢、体重、腎機能、肝機能、病歴)を細かく入力しておけば、もっと詳しいチェックも可能だろう。お薬手帳が電子媒体となれば、オーダリングシステムは過去の処方歴も情報源として、ミスを検出できる。薬剤師による、手作業の処方チェックは必要なくなる。薬局薬剤師は、処方箋に従って、薬をピッキングして渡すだけでよい。

また、お薬手帳や処方箋の電子化は、情報入力の手間の削減にもなる。現状は,医師が、オーダリングシステムに処方をキーボード入力して、処方箋を紙にプリントアウトし、それを薬剤師が目で見て、再びキーボードで薬局の調剤コンピュータに打ち込んで記録するという二度手間をやっている。電子化されれば、2回の入力が1回で済む。入力ミスも減るだろう。

20年前でもできたことが、いまだに実現しないのはなぜか?

この程度の電子化は、私が20年前に薬剤師免許を取ったときに、すでに可能だった。最新の処方箋、前回の調剤記録程度の情報量なら、大容量フラッシュROMなど必要ない。テレホンカード程度の技術で充分だ。テレカそのものでは容量が足らないが、磁気ストライプの本数を増やせば、記憶容量は拡張できる。情報をQRコード化して、処方箋やお薬手帳に印刷してもいい。QR1個で足らないなら、複数個を同時使用すればいい。基本的には90年代の技術だ。

現在では、ICカードや、リーダ・ライタは、キャッシュカードやクレジットカード用に量産されている汎用品を流用できるから、単価は数百円から数千円だし、オーダリングシステムや調剤記録コンピュータの電子処方箋・お薬手帳への対応も、既存のソフトをちょっと手直しするだけだから、導入コストは数十万円というところだろう。

お薬手帳・処方箋の電子化というアイディアは、私独自のものではない。ずっと前から、多くの人が提案している。システムの試行も行われている。しかし、病院や薬局が個別に導入しても、フォーマットが違うとデータ互換性がないので、使いものにならない。誰かが標準フォーマットを制定する必要がある。それは、本来、政府の役目なのだが、無視されている。住基カードのように、情報を一元管理する巨大データセンターを作る必要はない。単にデータ交換のフォーマットを作るだけだから、ほとんど費用はかからない。それなのに、政府は何もしない。一方、オンライン電子カルテのモデル事業には、莫大な補助金が支出される。

数十万円で導入できる、お薬手帳・処方箋の電子化は放置され、個人診療所のスタンドアローンのシステムでも導入に数百万円、大病院のオンラインシステムだと、初期費用は1億円以上、維持更新費用だけで、毎年数千万円のコストがかかる電子カルテの導入ばかり行われている現状は、どこか間違っていると言わざるをえない。

(井上 晃宏)
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さて、この意見をどう思われましたでしょうか。
 
まず前半部分の電子カルテの話は僕は大部分同意見です。
 
今の日本の医師数では外来でカルテをきちんと書くほどの時間はないです。
 
僕は外来で20分くらいかけて話をしたら、逆にカルテの内容は簡単にしか書けません。予定の時間を大幅にオーバーしているからです。カルテを書くことよりも患者さんと話すことを優先しているので、当たり前ですがそうなります。
 
入院カルテでも同様です。
僕はどちらかというと「患者さんへの説明」に関してはBlogで書いているような内容を、患者さんからの説明も含めて細かく書いているので、看護師さんからはそれを見るだけでどのような話になったかわかるといわれました。
大がかりなものでなくても患者さんに簡単な説明を行ったら、「こういう話をした」という記載だけは行いました。ただ、毎日のカルテをすごく細かく書いている暇はなく、研修医の先生のカルテを見て明らかに間違っているのだけ訂正するような感じでした。
 
それ以上に実際、たまに大学病院に行って入院カルテを見ても患者さんに行ったすべての処置が記載されていて、むしろわかりにくいです。
 
僕が患者さんに読んでもらうためにわかりやすく書いている部分がインフォームドコンセントの項目、他の医師に対して書くのは紹介状だったり、他科への診療依頼ですね。自分がその紹介状をもらって、確実に次に行うことがわかるようにしろと指導されていたので、結構細かく書いてます。
 
 
僕が電子カルテで助かるなぁと思うとすれば「検査結果」と「薬剤処方箋」です。
 
 
処方箋を見ればだいたい患者さんがどのような問題を持っているかはある程度わかりますので。
 
そういう意味で処方箋の電子化はありだと思いました。患者の属性の入力…というところに一部、患者さんの情報がかかわってくるのですが、まぁ簡単にできるならばそれはよいのではないかと。
あとは電子カルテでなくても「健診データ」ですね。カルテよりもデータの方がありがたいです。
 
 

いつも読んでいただいてありがとうございます。今後もよろしくお願いいたします。

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それでは、また。

 
 
 
 
コメント
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