さて、このまま続けます
【解説】「がん登録の金銭対価」に慎重論も- 現場の負担減と精度担保が課題
http://www.cabrain.net/news/article/newsId/37203.html
地域がん登録を、国の事業に位置付けようとの機運が高まっている。超党派国会議員の議連は、法制化の方向で一致したが、課題は山積している。がん登録が義務化されると、現場への負担が増えると懸念されている。これに対し、財政支援を求める声もあるが、「登録件数に応じて金銭が支払われるような制度になれば、がん登録自体の精度が保証されなくなる」などの慎重論もある。負担が増える医療機関に配慮しつつ、登録情報の精度を担保する仕組みが必要になりそうだ。
がん対策には、がん登録の推進が不可欠。がん治療の効果を検証するには、がんの罹患数、がん患者の生存率や治療成績などの情報が必要だ。特に症例の少ない希少がんや小児がんは、データが足りない。現行制度の下で、地域がん登録は、健康増進法に規定された努力義務。実施主体が都道府県などであるため、県内に住んでいる住民が県外の医療機関を受診したり、転出した場合、患者を捕捉しにくくなる。また、都道府県の足並みも、なかなか揃わなかった。7月に東京都、2013年1月に宮崎県が登録を開始し、ようやく全ての都道府県での登録制度が整うことになる。
しかし、地域ごとのがん登録体制には、ばらつきがあり、登録漏れの把握や予後調査ができないと指摘されている。最新の全国のがん罹患率は、07年の21府県の登録情報を基に推計する一方、最新の5年生存率は1999~2002年の6府県の登録情報を使用しているのが現状だ。がん登録を国が主導するのは世界の流れだが、日本は遅れを取っている。米国や豪州では医療機関に報告を義務付けているほか、英仏では行政に調査権限を与えている。韓国では03年のがん管理法制定時に、がん登録を国の事業に位置付け、06年の改正時には個人情報保護法の適用除外とした。
がん登録の推進には、財源とマンパワーの確保も課題だ。がん登録には十分な知識が必要。院内がん登録を実施している「がん診療連携拠点病院」を例にとると、国立がん研究センターがん対策情報センターが開催する研修の修了者が登録作業を行っている。がん患者の多くない医療機関にとり、登録義務化に伴って人員確保が必要になれば、負担感は大きい。すでに診療報酬での手当を求める声も聞かれるが、あるがん診療連携拠点病院のがん登録室長は、「がん登録に金銭を対価にするのは反対。儲け主義のところがあれば、『がんの疑い』も、がんに登録されてしまう」と警戒する。
-----------------------------------------------
これは多分「登録すれば登録料でいくら」となってしまうと、「悪性腫瘍」とは言えないようなものまで登録されるかもしれないという恐れはあります。
しかも、それは事実関係がくるわないように手術されるのでしょう。もしくは内視鏡的に、薬物療法で…など治療をすることになると思います。
そうでないとおかしくなってしまうので。
このことに関して不利益は2つ
1つは最も大事な患者さんが余計な処置を受けることによる不利益。僕は日本の医師は1983年ころのアメリカの医師と違い、患者さんのメリットにならないことをするとは思いません。いや、アメリカだってそんな医師は多くないと思います。
しかし、医療従事者と病院の経営は別だと思います。経営が成り立たないと話にならないということになり、やる羽目になるのではないかと思います。
2つ目はこの記事にも書かれているように、登録の精度が落ちる。要するに治療をする必要のない「良性腫瘍」などを「悪性」として登録していれば、当然生存率はよくなっていきます。これは恐らくそういうことをする病院が出てくれば、生存率がやたらとよいことにつながり、発見できると思います。
しかし、国際的な日本の医療に対する信用度が下がり、国際論文などの信用度も低下するのではないかと思います。
これに絡んでもう一個、同じCBの記事です。
超党派の国会議員でつくる「国会がん患者と家族の会」(代表世話人=尾辻秀久・自民党参院議員)は11日、東京都内で公開の形で総会を開き、がん登録の体制整備や法制化について議論した。尾辻氏は、がん登録の法制化には個人情報保護などクリアする課題が多いことを踏まえ、「難しい法律になる。議員立法で命懸けで出さなくてはいけない」と述べた。
通常、同議連の総会は国会内で開催しているが、この日は、NPO法人日本医療政策機構の「がん政策サミット2012春」のイベント会場で、全国の自治体関係者や患者会代表らを前に開いた。同議連で事務局長を務める梅村聡参院議員は、これまでの議論を通じ、議連においてがん登録の体制整備で一致していることを説明した上で、「がん対策には、がん情報を一元的に集め、分析して管理することが求められる」と強調した。
このほか議連メンバーからは、がん登録の法制化について、「登録情報に誰がアクセスできるか、その情報を漏れないようにするにはどうすればいいかの議論が必要」などと、個人情報保護の側面から慎重な対応を求める意見があった。また、がん登録を義務化した場合、情報を管理する人材の育成や、負担の増える医療機関を財政面で支援する必要性も指摘された。
この日の総会では、イベント参加者とも意見交換した。がん患者からは、「医師により告げられる生存率が変わり、自分の人生設計ができない」「精度の高い登録情報にしてほしい」などと、登録体制の整備を求める声が相次いだ。その一方で、「がん登録が進まないのは、主治医の負担が増えているからではないか」と、登録を義務化する制度設計では、医療現場に過重な負担にならないよう求める声も上がった。
------------------------------------------------
医師により癌の生存率が変わる。これも微妙なところではあると思います。
統計学的なところはきちんと出ていますので、国際的な評価は皆同じだと思います。ただ、例えば新薬が登場した前と後では生存率が異なるといわれている。しかし、新薬だけに長期データはない・・・そういうのを考慮して話をしているかもしれません。
僕は血液内科医なので「どの腫瘍も治る可能性がある」と思い話をするので、統計学的なものという前提で話をしても最終的には「統計は統計でしかなく、○○さんが治るか治らないかのどちらかでしかない。まずは必ず治すというつもりでやっていきましょう」というような話で終わる。
あとがん登録とかいろいろな登録事業ありますが、現場の負担は大きいですよ。患者さんを優先するか、登録などの事務的作業を優先するかの違いはありますが…普通患者でしょう(汗