新・眠らない医者の人生探求劇場・・・夢果たすまで

血液専門医・総合内科専門医の17年目医師が、日常生活や医療制度、趣味などに関して記載します。現在、コメント承認制です。

B型肝炎ウイルス無症候性キャリアの方への説明

2012-05-20 15:08:38 | 医学系

こんにちは

 

コメントでB型肝炎ウイルスのキャリアに関して説明をということでしたので、簡単に書いてみます。

今回はたまたま別の病気で受診した方にしましょう。僕の経験では・・・、やはり少し高齢の方ですね。検査したことがなくて、大きな病気になったのが初めてという方。

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「○○さんは今回、××が疑われて当科に紹介になりました。この病気の診断の際に今後輸血をする可能性などを考えて、肝炎ウイルスなどの検査をさせていただきました。その際にB型肝炎ウイルスが陽性になりました。」

「私は肝炎なんですか?」

「いえ、肝炎は起こしておりません。B型肝炎ウイルスはウイルスが肝炎を起こすわけではないのです(肝臓に感染しますけどね)

「意味が分かりません。どういうことですか?」

「少し細かく説明していきますね。B型肝炎ウイルスというのは肝炎を起こすウイルスと言われていますが、実はウイルスが感染して肝臓を壊すのではなくて、ウイルスを殺そうと感染した細胞ごとやっつけてしまう体の抵抗力が原因で肝炎が起きます

「まだ、よくわかりません(こういう風にいう人はなかなかいません。多分、僕のキャラクターなんだと思います)」

「まずは肝炎が起きているかをまず話をします。肝炎が起きている、つまり肝臓が壊されているかどうか…というのはAST/ALTと書かれていますが、この数値を見ます。これはげんざい、肝臓が壊されているかどうかを見る数値です。これは正常範囲です。すなわち壊されてはいません」

「なるほど、正常値ですね」

「難しくなるといけないので、覚えなくてよいのですが実は肝硬変になると『壊れる細胞』がなくなってしまうので、やはり正常値になったり、壊れる量が減ったりします。しかし、その場合は肝臓の機能が低下しているはずですが、この総ビリルビン(T-Bil)やアルブミンというたんぱく質、PT活性と書かれていますが肝臓で作られている血を止める物質はいずれも正常です。すなわち肝臓の機能は正常なのです」

「なるほど、じゃぁ安心ですね」

「いえ、少しだけ気にしていただかなくてはならないことがあります。肝炎が起きていないことは納得できましたでしょうか?」

「大丈夫。納得したよ」

「しかし、B型肝炎ウイルスは存在しています。B型肝炎ウイルスは通常、生まれてしばらくしてから(思春期以降は急性肝炎と言いますが)の感染は急性肝炎の形をとります。それで肝炎ウイルスを排除しきってしまうことも多いのですが、慢性肝炎になる方もいます。怖いのは劇症肝炎と言って命に係わるパターンですが、いずれにせよ肝炎を起こすか起こさないかは、どの時期に肝炎ウイルスに接触したかということが重要になります

「その説明は必要ですか?」

「できれば納得できるように説明させていただきたいのですが。状況によって我々血液内科の医師は免疫抑制剤や抗癌剤などを使用しますので、非常にこの話は重要になります。人は生まれたときにB型肝炎ウイルスに接触すると「自分の一部」と思ってしまい、攻撃しなくなります。専門用語では免疫寛容と言いますが、○○さんの防御機構はB型肝炎ウイルスを敵と思っていないということです。だから肝炎が起きないのです。」

「なるほど」

「B型肝炎のウイルスが持続感染している人を『キャリア』と言いますが、○○さんのように肝炎を起こしていないキャリアの方を無症候性キャリアといい、全体の9割はこっちです。残りの1割の人は慢性肝炎の状態にあり、肝硬変へ進んだりします。B型慢性肝炎の状況であれば専門医にいろいろ話を聞いていただき、治療することになると思います」

「じゃぁ、私は安全なんですね?」

「無症候性キャリアの方でも実は肝細胞がんが稀に発生します。0.1~0.4%/年と言われていますが、要するに一定の確率で肝細胞癌が発生する可能性があります。それは考慮しておく必要があります。一度超音波検査などは行ってもよいかもしれません」

「慢性肝炎ではないけど、無症候性キャリアで、少しは肝細胞がんの可能性があると」

「そうですね。全くの0とは言えないです。生活上のことを申し上げますと運動や食事の制限は全くありません。自由にしてよいと思いますが、血液などを介して他人に感染させる可能性がありますので、そこは考慮するべきだと思います

「孫などに感染させたくはないのだが?」

「お年が1歳未満だと先程の免疫寛容が生じる可能性がありますので、血液などが付着する可能性のある行為は控えたほうが良いと思います。もし、もう少し上のお子さんであればワクチン接種を行うという方法もあります

「なるほど」

「いずれにせよ、○○さんはB型肝炎ウイルスの感染はありますが、それらによって今悪いことが起きているわけではないのです」

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医療行為というのは患者さんに対してメリットがあるかないかで実行するかを決めます。実際にB型肝炎の抗ウイルス薬というものはありますが、慢性肝炎の患者さんならともかく一般的には無症候性キャリアの方に使うことはないです

何故かというと無症候性キャリアの方は何も悪影響を与えられていないので、治療を行うとそれによりメリットはほとんどなく、デメリットは大きなものが(副作用が)出る可能性があるからです

 

ちなみにHTLV-1キャリアの方も将来的にATLLを発症する可能性があるからと言って抗ウイルス薬を飲むことはないですよね?

 

肝細胞癌に関しては難しいのですがB型肝炎ウイルスとC型肝炎ウイルスでは少し機序が違うのです。B型肝炎ウイルスはDNAウイルスであり、C型肝炎ウイルスはRNAウイルスに位置付けられます。DNAウイルスは細胞に入ってヒトの細胞のDNAの中に割り込んで増殖します。割り込む位置が悪いと肝細胞癌が出現するという、運の良しあしとしか言いようのない発症機序です。

それ故慢性肝炎の人も、肝硬変の人も(こちらは無症候性キャリアより確率は高いです。C型と同じ機序もあり得ますので)、無症候性キャリアの方も肝細胞癌を発症する可能性があるわけです

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「我々が今後行う可能性のある治療は抵抗力を下げる治療が入っています。免疫力が低下した後に再び免疫が高まってくると、突然『こいつは敵だ』と認識することがあります。特にリツキサンという悪性リンパ腫の薬を使用したりするとB型肝炎の再活性化により劇症肝炎が発生して死亡することがありますので、そのような治療を行うときは治療開始から治療後半年、もしくはそれ以上の間抗ウイルス薬を使用します」

「なるほど、よくわかりました」

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B型肝炎ウイルスキャリアで無症候性であれば経過観察だけで、細かくは存じないのですが半年~1年程度の間隔で経過観察をしているのではないでしょうか?

HTLV-1の経過観察も同じようなものですので。

 

ですので一般には無症候性キャリアであっても定期受診はすると思うのですが、それだけの目的で受診した人を僕は担当していないので(上記のようなパターンは多いのですけどね)、このくらいの説明でご容赦いただければと思います。

 

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アクネ菌がサルコイドーシスの原因か?:思うことはいろいろありますが、面白いですね

2012-05-20 10:24:32 | 医療

さて、続けます

 

 臓器や皮膚に肉芽腫と呼ばれるしこりができ、死亡するケースもある難病、サルコイドーシスがニキビの原因でもあるアクネ菌によって引き起こされるとみられる、江石義信東京医科歯科大大学院教授らの研究チームが発表した。18日付の米国・カナダの病理学会誌(電子版)に掲載された。
 江石教授は、ステロイドを用いる現在の治療は副作用も大きいとして、「アクネ菌への抗菌剤を使う新治療の臨床研究を行いたい」としている。
 肉芽腫は、体内に入った細菌などの拡散を防ぐため、免疫細胞が菌を取り囲むように集まってできる。内部にある菌が、肉芽腫が形成されるきっかけとなる物質と考えられており、研究チームは肉芽腫内にアクネ菌を確認した
 患者のリンパ節からアクネ菌が検出されることは分かっていたが、皮膚に常在する他のアクネ菌が混入した可能性が否定できなかった。江石教授はアクネ菌に反応する抗体を開発し、患者196人から採取したリンパ節と肺の組織に添加して顕微鏡で観察。肉芽腫内に、抗体が反応する円形の物体が多数存在することを突き止めた。 
 
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面白いですよね。
これが原因だということになると・・・。
 
ただ、肺とかリンパ節などは「外」に近い部位です。肺は気道の存在を考えれば外気に接していますので外と言えば外に近い。リンパ節も傷口から流れてくるアクネ菌をシャットアウトしきれずに・・・ということなのだろうと思うが・・・・。
 
神経サルコイドーシスとか心臓とかそういうところには「内部」を通っていかねばならないと思う。すなわち「菌血症」が起きているのか(菌体が必ず見つかるのなら)?
それとも神経サルコイドーシスはアクネ菌から開始された免疫反応なのか?
 
いろいろ不思議に思うところはありますが、面白い話だと思う。
 
また、経過観察しているサルコイドーシスは多いから、アクネ菌に対する抗菌薬治療はやってみてもよいのではないかと思います。
 
 
追加でHodgkin lymphomaの治療後にリンパ節主張が出現し、サルコイドーシスという診断になったが、Hodgkin lymphomaの再発の可能性を絶対に否定できないといわれ困ったことがある。まぁ、絶対に再発ではないと書けないだろうけど。
 
こんな時、アクネ菌抗体でそめると一発診断になるのかな?
 
そんなことを思いました。
 

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あなたは賢いのに、なぜ政府の政策はこんなに愚かなのか?:情報の問題かな?

2012-05-20 09:37:34 | Weblog

おはようございます

 

今日は膝に加えて腰痛も出現し、のんびり休憩しております。というか、ヘルニア再燃ですね微妙な感じですが、悪化するといやなので。去年やったL5/S1でなくて、L4/L5のヘルニア(2007年にやったほう)だな、このしびれや痛みの領域を考えると…(汗

 

さて、そんなこんなで走るのも取りやめて、ゆっくりしておりますが・・・どういうわけかBlogは書いてしまう(汗

 

とりあえず、この記事を皆様に紹介します

【地球人間模様】<市民科学者>政府内の専門家とは、政府の政策にお墨付きを与える存在にすぎないことに気付いた

http://www.47news.jp/47topics/ningenmoyou/153.html

英語にシチズン・サイエンティスト(市民科学者)という言葉がある。在野の立場を貫き、「科学の知」を武器に権力を監視する科学者のことだ。米プリンストン大教授の物理学者、フランク・N・フォン・ヒッペル(74)もその一人だ。米原爆開発計画「マンハッタン計画」に参加しながら原爆投下にいち早く警告を発した祖父、仕事一徹で聡明な物理学者の父、学者一族の気骨が市民目線で社会変革を求める老科学者の魂に宿る。

(中略)

ベトナム反戦運動ピークの60年代後半、スタンフォード大で教壇に立っていたヒッペルに転機が訪れた。政府顧問を務める同僚科学者に学生が「あなたは賢いのに、なぜ政府の政策はこんなに愚かなのか」と問い掛けたのだ。反戦運動のさなか、物理学者という生き方を内省していた時期だった。「政府内の専門家とは、政府の政策にお墨付きを与える存在にすぎないことに気付いた。以降、市民科学者として生きることにした」。覚醒の瞬間だった。

(中略)

同時に、地球温暖化防止の観点から自身の立場を「反原発」ではなく「反原発権力」だと説明する。「原発を推進してきたエスタブリッシュメント(権力層)は無責任だ。技術的問題が起きても、対外広報に腐心し、安全をめぐる肝心な問題をないがしろにしてきた」

(中略)

OSTPはフォード政権時代の76年に議会が設立。その主な役割は①大統領や政権幹部に的確で時宜を得た科学技術に関する助言を行う②行政府の政策決定に科学的妥当性を持たせる③行政府内の科学技術政策を調整する―ことにある。
 東京電力福島第1原発事故は、危機時の政策立案を行うに際して科学技術に関する知見がいかに重要かを如実に示した。日本政府内にもOSTP並みの専門家集団の設立が望まれる。(文 太田昌克、写真 メグ丸山、敬称略)

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中身はいろいろあると思います。ただ、中断の一言

「あなたは賢いのに、なぜ政府の政策はこんなに愚かなのか」

というところです。

 

国会議員の何名かの話を聞くと、非常に頭がよく筋が通った何かを持っていると思う。そういう風に聞かせているのかもしれないが、それでも素晴らしいと思う(まぁ、話を聞くと逆に「馬鹿か・・・このひとは…」と思う方もいるが)。

 

何故、そのような頭のよい方々がとる政策がこれほど混乱するのか。これほどおろかに見えるのか・・・。

 

1つは「同じ情報を国民が持っていないから」

だと思う。

多分政府が同じ情報を国民に与えていないから、政府の判断した基準が理解できない。仮に我々医師が治療に関して「これ以上は治療するのは困難である」と考えたとしても、同じ知識を持っていなければその判断の理由がわからない。それ故に時間をかけてゆっくり説明し、理解してもらったと思うまで話すのだが・・・(だから、一人の患者さんの説明に時間がかかるのだ)。

 

政府は本来「この判断を行った理由は、このような情報が集まってきているからで、その結果このように判断した。他の行動の可能性は1~4まで考えられたのだが、2~4に関してはこのような理由で否定した。」というように国民に結論の告知でなくて、極力説明をしてもらいたいものだ。もちろん、判断基準を明示できないところもあるだろう。それでもある程度は開示してほしい。

判断した知識・基準を告知してもらえれば、その周辺知識も含め、今の時代なら調べきることもできるだろう。国民はそこまで馬鹿ではないが、政府同様「時間は限られており」日常生活以外の事に時間をかけられるほどの余裕はない。

政府が「説明する時間が足りない」というならば、そのための人材をもっと増やすべきだと思う。

ただし、説明する人が政府内の専門家とは、政府の政策にお墨付きを与える存在にすぎないのは人として失格である。公務員は公僕なのだから、国家のために、国民のための専門家であるべきである

2つ目に「しがらみ」にとらわれやすい国民性でしょうか?

たぶん、アメリカなどでも「国際的大企業」などは政府にもちょっかいをかけているのでしょうけど、それ以外にもいろいろしがらみがありますよね。2世議員、3世議員とか。今までこうだったのに、いまさら支援しないなんてわけにもいかないとか。

日本という国は日本人ばかりがすむ「村」みたいなもので、しがらみが多いのだと思います

3つ目にマスコミさんの情報発信でしょうか。わからないものはわからないと言ってもらいたいところです。誤った情報が独り歩きしたり、変な色眼鏡が付いた情報が伝えられたり・・・。全く事実と異なる情報が週刊誌などは記載しているようにも見受けられます。記者さんからしたら面白くない答えをすると記事にならないとかw

 

別に事実を確実に伝えて、それに関してこう考えると書くのはよいと思う。そうでなくては各新聞記事が同じでは情報統制されているのとおんなじなので。ただ、情報というのは1つめにも書いたように最も大事な要素なので(まぁ、国家機密とかに手を出したら駄目ですよ)、確実にわかっている事実を伝えてほしいように思う。

 

いつも読んでいただいてありがとうございます。今後もよろしくお願いいたします。

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