風のささやき 俳句のblog

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一本の木 【詩】

2022年09月01日 | 
「一本の木」

あなたは湖畔にたたずんでいた
白いかすみ草が咲いているように
そこだけ明るんでいた

太陽はいく千もの光の魚を
水面に浮かべた
それは金色のヒレを動かしながら
ひらひらと泳ぎ出した
真っ直ぐに伸びたあなたの白い足もとへ

光の魚が群れをなすと
その真ん中に立って
あなたはそこから
大きな一本の木になった
真っ直ぐに空へと伸びる
姿勢の良い姿そのままに
太陽の呼ぶ声に応え
空を抱きかかえるように
太い枝を広げた

光の魚はあなたの枝の
芽吹いたばかりの若葉になった
風が通るたびに
その一つ一つが眩しく
楽しく笑い揺れた

その木陰で僕は休んでいてもいいの
と 尋ねると
木の葉を揺する
それは肯う合図

だからあなたの木陰には
たくさんの生き物が
安心をして寝そべった
その高い梢には白い雲が休んでいる
すべてのものがあなたを大好きだった

あなたの周りにはやがて
木々が背を伸ばし
あなたはその真ん中で
ひときわ高く
全てを見渡す
母の眼差しのようだった

僕は安心をした小さな子供のように
あなたの幹に凭れかかり
木漏れ日をまぶしく見上げた
鳥も虫も動物もいる
あなたの下ではすべてが庇われた
この世界の大切な友達だった


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