「顔」
# 1
あなたの 肩の上にまた
青ざめた 顔が浮かぶ
途方に暮れて どうしたらいいのかも
分からなくなった顔だ
「もう止めたらいいのに」と
何度も小さく つぶやいているのに
あなたは 出ていってしまう
心のざわめくまま
するりと身軽に 回転ドアを抜けて
夜の喧噪の中へ
心に 炎を点す 刺激を求めて
# 2
そうしてぐったりと
あなたはまた ねぐらに帰る 疲れている
いつの間にか 頭の中に詰め込んだ
止まらないおしゃべり
二日酔いのような 頭痛
暗闇を泳ぐ目線は 視点も定まらずに
刺々しい心 自分に刺さり 不機嫌になる
# 3
そんな時には また
寂しそうに 目線を落とす
青白い顔が あなたの肩に 浮かぶのに
あなたは 何も気が付かないふりで
心を覆い隠している
悪夢のしみついてしまった 包帯で
けれど疼きは やがて傷口を開き
痛みを麻痺させる 薬をもとめて
あなたは 出会うこともない
人の間を訪ね歩くのだ
# 4
やがて腐り始める あなたの心に
青い干し柿のように
しおれた寂しげな顔は
消え失せて もう二度と
肩に ほのかにも 浮かぶこともなく
あなたは本当に あなたを失ってしまう
いつしか 荷車を運ぶ
牛のように 血走る寂しい目をして
街の片隅に 涎を垂らし
モーと鳴きながら 暮らすばかりで
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