風のささやき 俳句のblog

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顔 【詩】

2022年03月31日 | 

「顔」

# 1

あなたの 肩の上にまた
青ざめた 顔が浮かぶ
途方に暮れて どうしたらいいのかも
分からなくなった顔だ

「もう止めたらいいのに」と
何度も小さく つぶやいているのに
あなたは 出ていってしまう

心のざわめくまま
するりと身軽に 回転ドアを抜けて
夜の喧噪の中へ
心に 炎を点す 刺激を求めて

# 2

そうしてぐったりと
あなたはまた ねぐらに帰る 疲れている
いつの間にか 頭の中に詰め込んだ
止まらないおしゃべり
二日酔いのような 頭痛
暗闇を泳ぐ目線は 視点も定まらずに
刺々しい心 自分に刺さり 不機嫌になる

# 3

そんな時には また
寂しそうに 目線を落とす
青白い顔が あなたの肩に 浮かぶのに
あなたは 何も気が付かないふりで
心を覆い隠している
悪夢のしみついてしまった 包帯で

けれど疼きは やがて傷口を開き
痛みを麻痺させる 薬をもとめて
あなたは 出会うこともない
人の間を訪ね歩くのだ

# 4

やがて腐り始める あなたの心に
青い干し柿のように
しおれた寂しげな顔は
消え失せて もう二度と
肩に ほのかにも 浮かぶこともなく

あなたは本当に あなたを失ってしまう
いつしか 荷車を運ぶ
牛のように 血走る寂しい目をして
街の片隅に 涎を垂らし
モーと鳴きながら 暮らすばかりで



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