「遠くへ」
200キロを超えるスピードで
僕の体を八戸へと運んで行く
8時31分のはやて1号
昨夜 遅かった
僕の頭は青白く麻痺をして
砂嵐のようなノイズに満ちている
神経の行き届かない
石のように重たい体は
座った時の姿勢で
どこまでも沈んで行くようだ
僕はまるで
宅急便の荷物と大差はなくて
受取人の待つ場所へと
時間通りに運ばれていくことを
良しとされている
封筒に入っているのか
ダンボールに収められているのか
それとも洋服に身を包んでいるのか
それだけの差の僕の
頭には何の思いも浮かばず
ただ風景が掃除機に
すいこまれるように流れていく
誰がこんなにも急いで
僕を運んでくれと命じたんだ
いつの間にか僕の心は
体からは置いてきぼりとなって
もうその姿も見えないでいるから
僕は遠くへ運ばれ過ぎた
それに気づくのが遅すぎた
抜け殻となった僕の体だけが
荷物のように目的地から目的地へと
手渡されていくことは
さほど不思議なことでは
ないのだろう
さらに遠くへ 遠くへと
僕はなすがままに
運ばれようとしている
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