新鹿山荘控帳

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佐藤優著「自壊する帝国」なんとか読了す

2008-11-18 18:22:41 | 読書
佐藤優著「自壊する帝国」なんとか読了しました。鈴木宗男議員バッシングの関連で逮捕、起訴された報道から、それくらいの外務省役人かとの印象から、関心を持っていませんでした。

ところが、偶然本書を読むことになり、まったく印象が変わりました。優秀な人間の、ある意味プロの仕事の軌跡を読んで、彼の能力・ロシアでの人脈を妬んだ高級官僚たちに嵌められたのかもと思うのでした。マスコミの報道の仕方にも偏向があるような気がしました。

ソ連からロシアへの変革については、それほど興味が無いというか、知識も情報も持っていませんから、本書の歴史的・政治的な事柄は正直理解出来ませんでした。

私が興味を持ったのは、日本は情報戦争の無法地帯といわれているのに、ソ連国家末期からロシアへの変革期にこんな情報活動をしていた専門職員(ノンキャリア)がいたことです。

彼の経歴にも驚きました。同志社大学神学部と大学院で組織神学を学ぶ。具体的な研究対象は、「チェコスロバキアの社会主義政権とプロテスタント神学の関係について」です。まったく判りません。
またロシア語を高度な実務に対応させるため、外務省で採用されたあと、イギリス陸軍語学学校ロシア語コースで徹底的に叩き込まれるのです。

在モスクワ日本大使館赴任後、モスクワ国立大学言語学部に留学、後に同大学哲学部宗教史宗教哲学科で日本の外交官で初めての教鞭をとった。

大学での留学が彼の人脈作りの基となったのです。ソ連連邦共和国からモスクワ大学へ入学している知的エリート達と会話をするためには、まして資本主義国の外交官が語り合えるのは、宗教という分野でしかなかったのでしょう。

ロシア正教、東欧のキリスト教、沿岸諸国のイスラム教、そしてこの上に複雑に絡む多数の民族、そして全ての上に存在するロシア共産党です。
このなかで、崩壊していくロシアを密かにウラで資金を送る資本主義国家。そしてKGBで代表される秘密警察。スパイ映画など足元にも及ばない現実です。

また知的エリート達の知的水準、学問の深さは彼らの背負ってきた民族の歴史の深さからでしょう。その彼らが、日本人として一個の人間として信用し、つぎつぎと学者、政治家、役人、副首相までつぎつぎと紹介してくれるのです。この辺の記述はそれこそドラマのようです。此処で彼の学んできた宗教学が役立つのです。

ロシア人のウオッカの飲む程度のすごさに驚きます。一晩に五本・十本は当たり前です。ウオッカを自分達と同じ様に飲むかで、使える人間か判断するとは脅威です。ところが、筆者はロシア人に負けないくらいウオッカが飲めるのです。

私は、二流大学の商学部卒です。回りに流されてきました。時間が戻せるなら、学問を選んで別の人生をやってみたい気もします。

宗教学的(キリスト教)、政治学史学的、民族学的、外交上の専門語がふんだんにでてきますが、面白いです。ぜひ読んでみてください


当然筆者が最初に出版した「国家の罠」も読んでみたくなり、書店で立ち読みをしました。でも購入は止めました。一寸しています。書き切れませんので、このことはまた。
コメント
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