jazz and freedom and avenger

勝手気ままな戯事日記 暇つぶしに・・・・

評が割れる ・・・・・ CALIFORNIA HERE I COME / BILL EVANS

2022-06-18 |  Artistry of Bill Evans

 

相変わらずエヴァンスのレコードを聴く日が続いている。

この作品は1967年8月17、18日にあのヴィレッジ・ヴァンガードで正規に録音されながら、死後の1982年まで未発表のまま過ぎている。詳しくは知らないが、情報では二日間で46曲を録音したもののエヴァンスが首を縦に振らなかった、と言われる。このLP(2枚組)はその内、15曲が選曲されており、残りはCDで聴くことができるようです。

今まで聴いた回数は、多分、片手で収まるだろう。その理由が思い出せず、今回、ピック・アップすることに。巷でどんな風に聴かれているのだろう?

これまで自分の周りで本アルバムが話題になった記憶がなく、 Netで検索すると、自分のネガティヴな聴き方と違い、アマゾンのレビューでは高評価を受けている。未発表=出来が悪い、とは必ずしも思わないけれど、客観的に言えば、エヴァンスもVERVE(レコード会社)もリリースするまでない、と判断しており、高評価とのギャップが気になるところです。VERVEはエヴァンスにだんまりで”LIVE”(1964年)、”& STAN GETZ”をリリースした前科(笑)があるので、エヴァンスのOKバーが高いとは言え、その気になれば時期が少しずれてもリリースは出来たはずではないかな。

そこで、もう少し、検索の域を広げると、やはり本作と距離を置いた聴き方をしているファンが少なからず居ますね。

 

 

前置きが長くなりました。自分なりの結論を急ぐと、

一つは、エバンスにしては前のめり感が強いかな。例えば、”In A Sentimental Mood”などその傾向が顕著です。ホーム・グラウンドでのライヴ・レコーディングで気張り過ぎたのかも知れませんが、自分はもう少し一音一音の間があり、タメが利いたエヴァンスが好きなんです。ゆったりしたテンポの”Alfie”、”Emily”なんかは良いですよね

二つ目は、音。所有盤は初版の米ポリグラム盤。全体にエネルギッシュなサウンドですが、ややつまり気味なのにエヴァンスのpが固くて高域も荒く耳に当たる一方、フィリーのdsは後ろに引き下がり、p、b、dsのアンバランスが馴染めない。録音クレジットでは、エンジニアにフィル・ラモーン、更に、ミックス・ダウン&エディテイングにフランク・ライコ、マスタリングはスチュー・ロメインと一流所の名が挙がっている。こうなると自分のシステムの問題なのか、と疑問が湧きます。

そこで、更に検索を深追いすると、米ポリグラム盤はフィリーは控えめで、国内盤は逆にちゃんと出ている、と言うコメントに当たった。但し、pの音に関しては触れられていなく、ネガティブではない。念のため、You Tubeで聴くとフィリーは後ろに引き下がっていなく、恐らくCDも同じと思います。

飽くまで好みの尺度に依りますが、本作は聴くソースにより印象、評が割れる可能性を孕んでいる。否、ただ単に自分のシステムに問題有か?

 

 

 

 

 


単なる異色作に非ず ・・・・・ WITH SYMPHONY ORCHESTRA / BILL EVANS

2022-05-25 |  Artistry of Bill Evans

 

この所、エヴァンスのレコードを聴く頻度が増えている。特に理由はなく、何故かエヴァンスのpが耳に心地よく響く。ただ、70年代以降のエヴァンスに自分はやや冷ややかなので、自然とそれ以前の作品ばかりである。その中で、本作は今までは殆ど聴いた記憶がなく、多くの方?と同様、クラッシックとの融合、オケ付き、そして気色の悪いイラストが原因です。巷では賛否両論に分れ、しかも、存在自体が話題に登ることもまずない。

バイアス抜きで聴いたところ、これが実に良いんだなぁ。甘からず辛からず絶妙なバランスをキープするオガーマンの編曲、テイラーのツボを押さえたアルバム作りの巧さ、二つのレールに乗り、1ミリたりとも脱線しないリリカルなエヴァンスのp、誤解を恐れず言えば、語弊が有るやもしれませんが、最上級のイージー・リスニング・ジャズの一枚、一遍に愛聴盤の軒下に移りました。

エヴァンスの名盤として「泣く子も黙る名盤群」の一員に加わる事はないけれど、異色作として距離を置いたままでは勿体無い。

なお、「音」に関しては、所有盤は3rdプレスなので割引しなければいけないが、1stプレス盤ならエヴァンスのRVG録音(1965年)を危惧する必要はないと思います。オガーマンが描くフレームの中でエヴァンスのp(トリオ)がくっきりと浮かび上がっている。

エヴァンスを聴くなら、一年の中でこの新緑の時期がピッタリかもしれませんね。

 


無理にリリースしなくても ・・・・・AT THE JAZZHUS MONTMARTRE / BILL EVANS

2022-04-18 |  Artistry of Bill Evans

 

1969年11月24日、コペンハーゲンのJazzhus Montmartreで録音され、死後の1987年(左)、翌88年(右)にリリースされた作品。

全18曲(一枚9曲)、”Waltz For Debby"を始め、エヴァンスのヒット作・オン・パレード集といった選曲です。何か特殊な事情の元でのライブだったのでしょうか? 

饒舌で、言い方は悪いけど何所となく「一丁上がり」の感がしないでもない。リリースなんて本人は毛頭、考えていないワケで、死後とは言え、ブートならいざ知らず歴としたレーベル(マイルストーン)からリリースされるとは、いやはや ・・・・・・・・・、男はつらいね、人気者の宿命です。

音源は全て集めるというディープなエヴァンス・ファン専用の2枚と思った方がいい。

それにしても第一集(左)のカヴァのお粗末さは酷過ぎます。

 

庭に出るとハナミズキが満開でした。

 

 

 


ぶらっと自転車で、そして”INTERMODULATION / BILL EVANS & JIM HALL

2022-02-27 |  Artistry of Bill Evans

 

釣り池に来ました。釣り人はたまたま写っていませんが、朝の8時前なのに随分います。駐車の台数にして10台ほど。以前来た時、大きなカメラが据えられた三脚台もあり、狙いは何なんだろう?

右端の茂みにシラサギ?が見え、巣でもあるのかな。街中に残った僅かな自然は貴重ですね。

 

一時間半ほどちんたら走り、帰宅、朝食の後この一枚を

 

「ジャズの秘境」の中で「エコーまみれ」とネガティヴ(笑)に語られたV・ゲルダーが録音した”INTERMODULATION”のMONO盤(V-8655)。

巷ではエヴァンスとゲルダーの相性はあまり良くない、との評で、この盤も鼻詰まり気味ですが音の密度が濃く、しかもブライト感をかなり加えているのでナチュラルな出方ではないけれど、なかなか魅力ある音になっている。

ラストのJ・ホールのオリジナル”All Across The City”が大好きでしたが、B-1”Angel Face”も良いですね。作曲がJ・ザヴィヌルとは今まで気が付きませんでした。

カヴァのドローイングもイイ感じで、好きな一枚です。


良さがやっと解りました ・・・・・UNDERCURRENT / BILL EVANS・JIM HALL

2022-02-12 |  Artistry of Bill Evans

 

このチープなカヴァのせいか、時折、安レコードのエサ箱に投げ込まれている2nd(1968年リリース)。オリジナルを見つけるまで取り敢えず押さえておこうと手に入れたまま、ずっと居座り続け半世紀近くなる。その理由は、リハーサル中、突如、丁々発止の演奏が始まり、偶然にテープも回っていて、これぞインプロビゼーション、インタープレイの極致と、マスコミ、ジャーナリスト達に称賛され、枕詞のように言い繰り返されたTOPの「マイ・ファニー ・・・・・」に初めから違和感を覚え、苦手でした。80年代後半になり、そのエピソードはフェイクだったことが判明したけれど、距離感はあまり縮まらなかった。

前回Upした著書「ジャズの秘境」に大きくフューチュアーされ、オリジナルも再発ものも音が芳しくない、と記述されている。再発ものでも悪くない記憶だったので久し振りに針を降ろした。いゃ~、優、良、可でいけば優と良の間に滑り込むほどでした。恐らく、著者とシステムのグレード、耳のシビアさが違うのだろう。

 

 

年末に入手したトーレンス+SMEのプレイヤーは、実はフォノ・ケーブルがオルトフォンの8Nものに取り替えられており、良い効果がもたらされている。好きな音が出てくるので、じっくり聴くことが出来、本作の良さが漸く解りました。中でもホールのオリジナルB1~J・ルイスのワルツ曲B2への流れがいいですね。

 

 

後年、この作品の録音日も訂正された件は「ジャズの秘境」に載っているけれど、フェイク・エピソードについては何故か、触れられていない。著者が知らないハズは無いと思うけれど、どうなんだろう。業界のメンツを潰しては拙い、とでも ・・・・・・?

それはともかく、本作がやっと何時でも手が届く棚に移りました。

 


疑問の氷解と新たな発生・・・・・PORTRAIT IN JAZZ / BILL EVANS

2022-02-06 |  Artistry of Bill Evans

 

10数年前、このDCCレーベルの24KARAT GOLD DISCを弊HP“Bluespirits”で取り上げ、STEREOの録音エンジニアはLPに記載されているJ・ヒギンス(MONO録音と両方)ではなく、R・フォウラーではないか?と問題提起した。とういのは、このCDにエンジニアはR・フォウラーとはっきりとクレジットされている。その時、あまり反響はなく、むしろこのクレジットの方が信憑性に欠けるような形で流れた記憶がありますが、ひょっとすると、R・フォウラーで既に決着しており、知らないのは自分だけなのではないか、と不安が残ったままだった。

先日、カミさんのnet注文に合わせ、「ジャズの秘境」(2020年発行)を取り寄せた。てっきり通好み、マイナーなCD好録音盤群の紹介と思っていましたが、そうではなく冒頭から重苦しい展開に少々、辟易し、まず一旦軽く読み流す事にした。そして、後方の「ビル・エヴァンス:ファースト・トリオのベストCDを探る」の章で著者はこの24KARAT GOLD DISC(1994年)をベストと紹介し、STEREO録音のエンジニアはR・フォウラーと根拠を添えて明言している。文脈の流れからして、問題提起以降の話と読み取れます。

 

 

Engineer:Ray Fowlerとクレジットされている。

 

 

 

すべては、コスト削減なのか、ノー・チェックでMONO盤のカヴァ記載を流用した間違いから始まったわけです(笑)。

 

長年の疑問が氷解したものの、新たな疑問が・・・・・・、

この本の中で「”PORTRAIT IN JAZZ /  BILL EVANS”のモノラル・マスター・テープは1970年前後に廃棄処分され、もはや存在しない」と、二度にわたり、何となく意味深に書かれている(こちらの邪推かもしれないが)。なお、どういう過程で廃棄処分になったのか書かれていないのがちょっと残念ですね。劣化があまりにも激しかったのかな。

つまり、それ以降、モノラル・マスター・テープを使ったLP、CDも存在しない事になる。ところが1999年に「オリジナル・マスター音源使用」と謳ったMONO盤(LP)がリリースされた。しかもSJゴールドディスク賞マーク付きで。

ちょっと待てよ、モノラル・マスター・テープは存在しないハズだが ?・・・・・・・ 曲者(笑)は「オリジナル・マスター」か、モノラルとはなっていないなぁ。

ステレオ・マスターをミックス・ダウンしたのかな?、また”Autumn Leaves”の音圧がガクンと下がるのも気になりますが、そもそもSTEREOヴァージョンとは違うので、この一曲はマスター・コピー?か、ディスク・ダビングしか考えられないのではないでしょうか。

もし大きな勘違いを犯しているならば、どうかお許しを。

とにかく、また疑問が湧き、楽しませてくれます(笑)。

 

 


BILL EVANS 晩年の三作から ・・・・・ YOU MUST BELIEVE IN SPRING (その二)

2020-07-30 |  Artistry of Bill Evans

 

米国盤の音の特長は、カッティング・レベルが高いと言うより、SPからの「音離れ」が良く、ボリュームを上げなくても音が確り前に出てくる。エヴァンスのpも音が煌めき、これ以上はケバイ、下種っぽくなる寸前で止まっている。

Warner Bros.の「音」の狙いは、オーディオ的見地よりも一般的な音響システム、環境でエヴァンスの魅力を最大にプレゼンテーション出来る「音造り」を優先したのではないかな。ゴメスのbも誇張気味な面も否めないが、音に色、表情が乗り、粘りも生まれエヴァンスとの呼応が以前より聴き取れるレベルに至っている。つまり、出来る限り多くのジャズ・ファンに本作の良さをダイレクトに伝えたいという方針からなのでしょう。加工臭が少ない自然なサウンド・クオリティを求めるならば、噂のドイツ・プレス盤等々が候補に挙がってくるでしょう。

Warner Bros.の作戦は大成功となったけれど、リリース後、すんなりと評価、人気が上がったワケではなく、一つの壁がたちはだかった。それは、A-4の”We Will Meet Again”がJ・グリフィン(ts)の十八番ナンバー”Hush A Bye”にソックリというパクリ疑惑が表立った。同曲はリリース上、前作となる同名のレコードにも収録されており、81年のグラミー賞受賞(前作)により公に不問が確定し、今では、一部から最高傑作とまで崇められるようになり、ファンのエヴァンス復権の願いが叶った「起死回生の一発」ですね。

その余波で今でも、歴としたレーベルから怪しげなブートまで発掘音源が賑やかですが、アタリ、スカを問わず、「聴いてみたい」と思わせる不動の人気を保っている。

好きな曲は、名もなき小品A-3”Gary's Theme”、エヴァンスの懐の広さ、深さを感じさせるリリシズムは無量無辺。

B-2”Sometime Ago”、ゴメスのメロディアスなプレイが聴きものですね。

 


BILL EVANS 晩年の三作から ・・・・・ YOU MUST BELIEVE IN SPRING(その一)

2020-07-25 |  Artistry of Bill Evans

 

「起死回生の一発」、又は「逆転満塁サヨナラホームラン」と称したら、「確かに!」と思うリスナーと「何それ?」と思うリスナーの割合はどうなんだろう?40年も経てば世代交代も含め、恐らく後者の比率が高いだろう。

もし、この作品が無かったならば、エヴァンスは「あの四部作と60年代限定」の伝説的ピアニストで終わったリスクも無きにしも非ず、と言ったら信じてもらえるかな(笑)。ま、この感覚はリアルタイムで体験しないと分からないかもしれない。

70年代、新しい試み、チャレンジとレコード・セールスの狭間で自分のスタイルに揺れ、晩年の評価、人気は苦しかった。

Warner Bros.に移って最初の録音(1977/8/23~25)にも拘わらずリリースは死後の81年まで先送りされた。そのワケはFantasyの最終録音盤”I WILL SAY GOODBYE”(1977/5/11~13)が1980年の初めまでリリースされず、同じトリオが続くことを避ける内にタイミングを逸していたとされる。リリース決定権がどちらにあるか契約条項で変わるけれど、それだけセールスに繊細だったのだろう。

しかし、結果的に幸運だった。Warner Bros.は追悼盤としてリリースに当り、ヒットさせる戦略を練り、Fantasy時代のウィーク・ポイントだった「音」に着目し、マスタリングをDoug Sax率いるマスタリング・ラボに依頼している。また、タイトル曲だけに?具体的な処理は分らないけれどAdditionaⅼ Remix and Editingとして他の3作、全て録音しているColumbiaレコードのFRANK LAICOを起用している点も興味深い。またカヴァも気を配り、Fantasyの追悼盤の酷さと雲泥の差ですね。

リリース当時、押しの効いた音が評判でした。

最近、ドイツ・プレス盤のナチュラルな音が巷で話題になっていますが、残念ながら未聴です。

久し振りに聴いてみましょう。

用意したカートリッジはSHURE V15 typeⅤ、スタイラスはMR、シェルはオーディオ・クラフトのAS-4PL。

 

 

上下2本のダブル・ピンに加えツメが2ヶ所設置されたパーフェクト・ロック・タイプです。リード線はシェル側が直付けで接点ロスを極力避けています。更にセラミックスのスペーサーを挿入し無駄な振動を抑え、音像をくっきりさせています。

 

 

ちょっと長くなりました、続きは次回に。

 

 


BILL EVANS 晩年の三作から ・・・・・ WE WILL MEET AGAIN

2020-07-22 |  Artistry of Bill Evans

 

前回の続きでupするアルバムを録音順かリリース順にするか、少し考えリリース順で”WE WILL MEET AGAIN”を。FantasyからWarner Brosに移り4作目(録音)、リリースすることを前提とした最後のスタジオ録音。

クインテットですが、tpが入るのは「インタープレイ」(1962年)のハバード以来ではないかな?

このレコードの特異な所は、収録時間の長さでA面約32分、B面約28分、計60分とCD並みです。凄い技術力ですね。CDはまだ実用化されていない。

興味深い点は、録音がColumbia(NY)のスタジオで行われ、エンジニアはFRANK LAICO。彼はColumbiaの録音担当社員(多分)なのでColumbiaのレコードにはクレジットされないが、他レーベルなのでクレジットされたのでしょう。好録音で知られるマイルスの”Someday My Prince ・・・・”等々の録音担当をしている知られざる優秀エンジニアですね。

Warner Brosの前2作も彼の手で録音されている。ひょっとしてFantasyの音に満足していなかったエヴァンスがLAICOをリクエストしたのかもしれません。本作の音は明らかにFantasyと異なり、粒立ちが良くなっている。

プライベートでは決して良い状況ではなかったけれど、未来に向け何か意を決したような明るいエヴァンスが聴けます。開き直ったと言ってもいい。ただ、ソロ2曲を除き、各曲の演奏時間を長くした分、ハレル(tp)、シュナイダー(ts、ss)の力量が問われる展開だが、エヴァンスは無頓着でロング・ソロを吹かせ、イマジネーションが尽きた二人が苦しそうな場面も散見される。

ハレルは良いトランペッターなので、実力を発揮するシチュエーションをちゃんと用意してあげれば、もっと貢献できたのでは?また、二人の力量に合わせ、ソロ構成を工夫すると良かったんじゃないかな。

でも、その大らかさがエヴァンスの場合、メンタル面良好のバロメーターに繋がっている反面、問題はフィジカル面か、残された時間は僅か1年だった。

 

 

 


BILL EVANS 晩年の三作から・・・・・ I WILL SAY GOODBYE

2020-07-19 |  Artistry of Bill Evans

 

J・マンデル絡みでエヴァンスの晩年作を取り出した。マンデルの曲を収録しているのは左の二枚ですが、この際、まとめて。

リアルタイムでこの時代のエヴァンスを聴いていた者にとって、当時を語るには辛いものがあり、なかなかキーボードが進まない。

この頃のエヴァンスの評価、人気は現在では信じられない位落ち込み、「もう、あかん」ならまだしも、公然と「カクテル・ピアニスト」と名指しする者も現れるほどで、もし、「起死回生」の一発となった真ん中の”YOU MUST BELIEVE IN SPRING”がなかったなら、「エヴァンス伝説・人気」今ほどではなかっただろう。”QUINTESSENCE”(1976年)辺りから自分の中でそろそろ「ヤバイ!」と思うようになっていた、のも事実です。

この3枚の裏事情からも、エヴァンスの微妙な立ち位置が朧気ながら掴める。

まず、録音日は、左から順に、

① ”I WILL SAY GOODBYE”(FANTASY)  1977/5/11~13

② ”YOU MUST BELIEVE IN SPRING”(Warner Bros) 1977/ 8/23~25

③ ”WE WILL MEAT AGAIN” (Warner Bros) 1979/8/6~9

そして、リリースは、

①は1980年1~3月ごろ

②は死後翌年の1981年

③は1980年3~6月ごろ(一説には1979年末)

つまり①、②は所謂「お蔵入り」状態になっている。なお、エヴァンスが亡くなったのは1980年9月15日。

 

①はFantasyでのラスト作。

 

最終作なので「立つ鳥跡を濁さず」とでも言うのでしょうか、思わせぶりなタイトルとカヴァの割に澄ましたプレイに専念している。エヴァンスとFantasyの音はあまり相性が良くないせいか、クリアだけど高域が薄く派手なのでプレイ自体が軽く感じられ、更にゴメスのピック・アップで増幅したbが相変わらず味気ないのも難点ですね。録音技術のせいかもしれない。

全体に及第点はクリアしているけれど、エヴァンスにしてはなにか物足りない、どこか気取っていて、もう少し深みが欲しかった。

リリースを先延ばししたのはエヴァンスの意向なのか、Fantasy側の事情なのかは兎も角、それなりの理由を孕んでいる。

今回はこの一枚で。辛口でゴメン。