jazz and freedom and avenger

勝手気ままな戯事日記 暇つぶしに・・・・

SINCE WE MET & RE;PERSON I KNEW / BILLEVANS

2019-06-08 |  Artistry of Bill Evans

 

第二の故郷と言える「ヴィレッジ・ヴァンガード」での1974年1月11、12日、二日にわたるライブ録音、プライベートでは新しい女性との結婚とメンタル面では高揚していたに違いない。実に能弁なエヴァンスが聴かれる。

右の”SINCE WE MET”はリアルタイムでは録音からやや遅れてリリースされたが、左の”RE;PERSON I KNEW”は追悼盤?として死後の1981年に。

決して上手いとは言えない黒を基調としたイラスト・カヴァの”SINCE WE MET”は何となく期待を持たせるが、一方は聴く気も失せる酷さ。

結論を先に言えば、70年代屈指のクオリティを有していると思う。しかし、”SINCE WE MET”を押すファンに今までお目にかかった事が無く、最近発刊されたジャズ批評の40名による「私が選ぶ3枚」でも僅か1人しか”SINCE WE MET”を挙げていない。勿論、”RE;PERSON I KNEW”はいない。

何故だろう?理由は「音」です。エヴァンスのpはキンキンと耳に当たり、しかも厚みがなくキラキラ過ぎ。ゴメスのピック・アップを通したbも味気なく無遠慮に押してくる。また聴衆の拍手まで意図的に増幅?されように大きく、これじゃ、折角の「名演」が台無しです。 

録音が拙かったのか、それともマスタリングの段階で何か余計な処理を加えたのか?

”SINCE WE MET”はSTEREOだが、”RE;PERSON I KNEW”は音を是正しようとして?MONOとなり、観客の雑音が入る(これが自然)曲があるものの、pのキンキンさがやや和らぎ、bも引っ込み、拍手も抑えられ、多少マシになっている。

ただ気になるのは、音の拙さについての噂は耳に入っていないのでCDは良くなっているのだろうか?

少しでも聴き易くと、マッキン34Vのイコライザー・コントロールで1,500ヘルツと10Kヘルツを絞っている。

 

TOPのタイトル曲、新しい夫人との出逢いを綴ったオリジナル曲”Since We Met”はさすがエヴァンス、ロマンティックな香りを放ちながら起承転結がビシッと決まったプレイは見事ですね。この時点でトリオとして初出の”Time Rememberd”もいい。ただ、テンションが張った演奏が続くのでちょっと欲張り過ぎ、詰め込み過ぎの感がして、ラストの”But Beautiful”が付け足しのように聴こえる。

方や、エヴァンス・ファンも悲鳴を上げる”RE;PERSON I KNEW”、このカヴァのセンスは何処から生まれるのでしょう。しかし、所謂「ボツもの」と言ってもこの二日間のレベルは高く侮り難し。珍しくグルーヴィー感を出す”Re;Person I Knew”、このヴァージョンが一番好きかも知れない。続く”Sugar Plum”、バカラックの”Alfie、初めの3曲の流れが抜群にいい。

 

自分の好みで一枚に仕上げると

A面が、”Since We Met”、”Time Rememberd”、”Re;Person I Knew”、

B面が”But Beautiful”、”Sugar Plum”、”Alfie”、

これで音がまともだったらマジで太鼓判を押すのですが・・・・・・・・ 


TRIO 64 & 65 / BILL EVANS

2019-06-01 |  Artistry of Bill Evans

先日、B・EVANS生誕90周年記念として上映された”TIME REMEMBERED”を観てきました。

よく出来た作品ですね。ちょっと驚いた事が二つ。

一つはJ・HALLとのデュオ・アルバム”INTERMODULATION”の中から”All Across The City”がスコア付きでUP、二つ目は、少し前に紹介したGETZとの”LIVE IN BELGIEUM”から”The Peacocks”があの赤いカヴァと伴にフューチャーされていた。どちらも秘かな愛聴曲なので・・・・・・・・

監督のB・スピーゲル氏と波長が合います(笑)。

シンプルなタイトルの二作を。

 

 

 ”TRIO 64”(1963.12.18 )

昔から「通」の間では高い支持を受けているアルバム。エヴァンスはマイ・ペースで、ピーコックはノンビート・ライクで付かず離れず、困惑気味で腕は動くが手は動かないモチアン、そうした微妙な演奏空間に聴き耳が立つのだろう。

飽くまで想像の域を出ないけれど、TOPの”Little Lulu”(TV番組の主題歌)はエヴァンスにとって本意だったのだろうか?ひょっとして交換条件として好きな「サンタが街にやってくる」の収録を主張したのでないかな。聴き比べるとノリが違う。

本作の聴き所はB面のラスト3曲、”For Heaven's Sake”、”Dancing In The Dark”、”Everything Happens To Me”。

エヴァンスはソロ・ピアノ気分で弾き、能弁ではないけれど語りは決して薄口ではない。”Dancing In The Dark” の後半、ピ-コックがエヴァンスに周波数を合わせるパートはGooで、それなら他も、演れたのに・・・・・・と(笑)。でも、聴くほどに渋さが増す3曲ですね。なお、ピーコック、モチアン、二人とも映画のインタビューに出ている。

 

”TRIO 65”(1965.2.3)

人気曲をズラッと揃えた一枚。意図せず初心・入門盤としてのイメージが付き纏っているのか?演奏レベルの割に今一つ人気がない。どうせならRIVERSIDE盤を聴けばいいとでも聴き手の心理が働いたのか・・・・・・・、また、整い過ぎが裏目に出た感が無きにしも非ずです。ベスト・トラックは皮肉にも初出の”Who Can I Turn To”か、こうした曲を弾かせたらエヴァンスの右の出る者はいない。

 

で、これも推測ですが本作録音の下地となる作品がこれではないでしょうか。

 

1964年7月7、9日、CAのThe Trident in Picturesque Sausalitoでのライブもの。リアルタイムではエヴァンスがリリースを強く拒み、VERVEとの契約が切れていた1971年、日の目を見た音源。その際、VERVEは「タウンホール」のカヴァを流用し、タイトルもそっけなく、味気ない青の単色摺りの仕打ちを。いくらビジネスと雖もちょっとえげつないんじゃない。ま、国民性の違いでしょう。

それはともかく、これが結構良く愛聴盤の一つ。ウエスト・コースト屈指の名エンジニア・W・Heiderの録音もいい。

ライヴとあってこちらもお馴染みの曲が肩を並べている。ただ、聴衆の反応が良過ぎてストイックなエヴァンスは「オレはこんなに客受けするプレイをしてしまったのか」と、自責の念に駆られたかもしれない。

リリースしない条件として、同じメンバーで完璧を狙って半年後、スタジオ録音したのが”TRIO 65”では?

この”Live”をすんなりOKするぐらいの大らかさを持っていれば、もっと長生きできたのに。

しかし、命と引き換えても「美と真実」を追求する姿勢こそ、エヴァンス流美学の「神髄」だったのだろう。凡とは違う。


EVANS & MANNE ON VERVE

2019-05-10 |  Artistry of Bill Evans

 

 

RIVERSIDEと比べVERVEの作品はあの四部作の威光により個別は兎も角、総じて下に見られている傾向があります。

ソロ、デュオからWith Symphony OrchestraまでVERVEは編制が多岐に亘り、色んな顔が見えて的を絞り難いせいかもしれない。それともう一つ、「音」、V・ゲルダーとエヴァンスの相性はどうなんだろう?

全てゲルダーの手とV・ヴァレンティンの意向が入っているワケではありませんが、「ちょっと鼻声」とでも言うのでしょうか、pの音が丸くなったイメージが付いて回る。

 

S・MANNEとの2枚を。左が”EMPATHY”(1962. 8.14)

MANNEを筆頭に並列にクレジットされているのは、エヴァンスがまだRIVERSIDEとの契約を完全にクリアしていなかったためですが、MANNEも当時、CONTEMPORARYと契約しており、この組み合わせを考え実現させたC・テイラーのプロデューサーとしての才はさすがです。

そうした裏事情によりMANNEとEVANSのダブルネーム的演奏のためエヴァンス・ファンには物足りなく聴こえるのはやむを得ないでしょう。

TOPの”The Washington Twist”で意表を突かれ、ラウンジ・ピアノ寸前の”Danny Boy”に???が。でも、B面は”With A Song ・・・・・”に余興が入るものの3曲共に出来は良い。

肝心の音は鼻詰まりまで至らなく、繊細なニュアンスを求めなければ案外、肯定的に聴けます。因みにV・ヴァレンティンの名は入っていない。

 

右は”A Simple Matter of Conviction”(1966.10.11)

本作はエヴァンスのリーダー作になっているだけに気合は十分ですが、TOPのタイトル曲のフェード・アウトは如何なものだろう?続く”Stella By Starlight”を効果的にUpしようとした狙いなら俗っぽいですね。B-1の”I’m Getting Sentimental ・・・・・・がベスト・トラック。ただ、全9曲は多すぎで、B-2の”Star Eyes’はエヴァンスしては凡演の類に入るだろう。

注目すべき点はその後長い付き合いとなるE・GOMEZ(b)のリアルタイムでのレコーディング初参加です。後年ピックアップを使用した音と異なり弾力あるアコースティクスなサウンドはなかなかの聴きものです。

この国内盤は世界初のドイツノイマン社製SAL-74/SX-74・トータルカッティングシステムを採用、プレスされ音圧レベルが高く迫力もあり、国内盤のイメーを覆します。低域に厚みが加わりpの重心も下がり重量感は半端でありません。なお、こちらにはV・ヴァレンティンの名があります。

 

この2作に甲乙を付けるなんて無意味ですが、敢えて付けるなら世評と違い”EMPATHY”を。

決め手はゴルフで言う所の上り3ホール(曲)の出来映えで”EMPATHY”はパー、パー、バーディ、対して”A Simple Matter of Conviction”はダブルボギー、辛うじてパー、パーと聴きました。

MANNEのドラミング、「騒がす、慌てず、焦らず」、そしてセンシティブなプレイは「校長先生」です。

 

直ぐ手が伸びるアルバムではありませんが、内容は意外に面白味があり、エヴァンスって結構、気分屋ですね(笑)。


10年後の立証 ・・・・・・・ STAN GETZ & BILL EVANS

2019-04-20 |  Artistry of Bill Evans

その昔、ゲッツがpを弾いたらエヴァンスに、エヴァンスがtsを吹いたらゲッツに、なんて噂が実しやかに囁かれた事があった。「クール」と「リリシズム」の微妙な混ぜ具合がベースになってそれほど的外れな話ではなったけれど、もっと重要な共通項を見逃すわけにはいかない。それは両者とも、そのイメージとは真逆の「ハード・ヒッター」、「武闘派」という本質だと思う。そのギャップの幅と奥行きが聴く者を魅了し、死の直前まで第一線で活躍できた根源ではないでしょうか。

1964年録音の共演盤。二人とプロデューサー、C・テイラー、三人共に「リリースに値しない」と判断し、1973年まで「お蔵入り」したと言う音源。多分、エヴァンスが一番渋ったのだろう。

折角、コストを掛け録音したのに・・・・・・とVERVEは腹いせかどうかは兎も角、だんまりで、しかも、他の未発表作品群と画一的なカヴァ・デザインでリリース、おまけに尻尾に一休み中の悪ふざけトラックをこっそり差し込んでいる。もう嫌味?ですね(笑)。

  

 

リアルタイムで聴いた時は「なるほど」と思ったが、今日の耳で聴くと、それほど悪くない。お蔵入りの元凶は誰の耳にも凡そ見当が付きます。でも、本来、ヴァーサタイルなエルビンの名誉のために視点を変えてみると、テイラーからセッションに指名され、指示通りにプレイしたはずなのに、期待通りの出来に仕上がらなっただけで、明らかなミス・キャストですね。「つわもの」が三人揃うと調整がなかなか難しい好事例では?

このアルバムはbをR・カーター、R・ディビスと変えて(二日間)、それぞれA面、B面に律儀に振り分けていますが、実はこれがあまり面白くない。TOPの”Night And Day”なんかちょっとラフでベタ過ぎますね。

例えば、A面を”My Heart ・・・”、”Night And Day”、”Grandfather's ・・・、B面を”But Beautiful”、”Melinda”、”Funkallero”の曲順したらどうなんだろう? 結果的に成功に至らなかったテイラーの制作意図が朧気ながら見えてくる。

 

10年後、ベルギーでのライブもの。ゲッツ +エヴァンスの当時のレギュラー・トリオ の組合わせだけに、上作に比べ遥かにしっくりして、期待通りの内容となっている。愛聴盤の一枚。

後にCD化された際(未聴)、オランダでのライブ音源4曲にサンドウイッチされ、曲順も異なり”You And The Night ・・・・・・”の冒頭には、エヴァンスの誕生日を祝うゲッツのパフォーマンスが入っているようですが、当アルバムはその部分はカット?され、 いきなりゲッツの無伴奏ソロからスタートしている。これがHappy Birthdayの即興演奏とは聴こえないのですが・・・・・・・・

A面、”You And The Night And The Music”、”But Beautiful"、”Emily”、B面、”Lover Man”、”Funkallero”、”The Peacocks” 

VERVE盤と”But Beautiful"、”Funkallero”の2曲がだぶっている。

 

 

”Funkallero”では特別、新しい試みをしているワケでないが、欲張らず2、3のキー・フレーズを中心に、リフと絶妙なタンギングを織り交ぜながらリズミカルに、時にはラフにブローするゲッツのテナー、ライヴ演奏の極意を憎らしいほど熟知している。

本作のハイライトはラストの”The Peacocks”、ゲッツとエヴァンスの「常軌を逸した」デュオである。あまりにも美しすぎるのだ。恐ろしいまでに深々とした叙情性に身震いするほどです。大袈裟ではなく、ジャズという音楽表現が到達した最高次元の一つと言っていいだろう。曲の終わりにGetzが“Happy Birthday Bill!”と言っている。

 

この1974年8月16日のステージの良さは筆舌に尽くし難く、オーディエンスの歓声が全てを証明している。

なお、「音」はやや低域がブーミーですが、逆に厚みが加わり「上等」です。


迂闊でした ・・・・・・・ ALONE / BILL EVANS

2019-03-30 |  Artistry of Bill Evans

 

 

例外はあっても、元々、ピアノ・ソロはあまり好みではなく、このアルバムも開封した時に一度聴いただけで内容は全く記憶がない。

それにタイトルと病的なイメージのイラストが重なり過ぎ、まるで・・・・・・・・

”ALONE”が必ずしも”LONELY”ではなく、自分の美的センスの無さは分かっているけれど。

 

気が進まなかったけれど針を降ろすと、一度しか聴かなかった理由が分かった、「音」が濁っている。ピアノ・ソロでは致命傷ですね。

てっきりRVG録音(先入観から)と思い込んでいましたが、響き方が異なり頭の隅に微かに聴き覚えのあるものだった。

裏カヴァを見ると、なんとエンジニアはRay Hall、しかも場所はNYのWebster Hall、あの”WHAT'S NEW”とまったく同じです。もう迂闊と言うよりも大失態です。それに本作は”WHAT'S NEW”の僅か三ヶ月前の録音。

どうしてこんな「音」に、という疑問が湧き上がり、センター・ラベルを。そこにはMGMではなくPOLYDORのクレジットが、つまり再発というより再々発盤の可能性が高いですね。ガチョ~ン。

 

「音」の問題は置いて、改めて聴いてみましょう。

ソロ・アルバムを吹き込む心構えは充分に出来ていたのでしょう、タッチがいつもより心なしか強くしっかりしている。感情移入も妙に深入りせず一音一音の強弱、イントネーションも比較的フラットだ。

ビジュアル的に表現すれば、猫背になったり鍵盤に覆い被さるのではなく背筋がピンと張っている。小細工せず凛然と攻める、そこが良い。

グラミー受賞作にも拘わらず、わが国ではそれほど人気がないのは、猫背になったり鍵盤に覆い被さるイメージが定着しているからだろう。

 

世評通り、一曲のみのB面”Never Let Me Go”が聴きもの、特に中盤~後半、そしてエンディングに掛けてのイマジネーションの豊かさ、深さは他の追従を許さない。やはり「もの」が違いますね。

 

さぁ、Evans、Hall、Webster Hall、三位一体となったMGMプレス初版盤を探そう。

 


MOON BEAMS / BILL EVANS

2018-12-07 |  Artistry of Bill Evans

 

京都・HANAYAで流れた一枚。

マスターとの会話、店内撮りに気を取られ・・・・・・、しかも、ここ20年以上、聴いていない記憶が・・・・・・

何故?と思い出しても、はっきりした理由が浮かばなく、恐らく所有する再発ABC盤のカヴァと、もう一枚、オリジナル・カヴァの国内盤の音が相乗してネガティブに働いたのだろう。

 

  

改めて聴いてみると、カヴァはいまいちだがABC盤の音は良い。一方、国内盤はカッティング・レベルが低いせいか、生気に乏しく、まるで蒸留水のように味気ない。まさかカヴァに合わせBGM風音作りをしたとは思えないけれど、「まさか」ほど「まさか」ではないものは・・・・・・・・・

エンパイア4000D/1で聴くABC盤は、pが煌びやかで耳に付く箇所がありますが、発散する響きに上手く包み込まれ、妙に艶めかしく感ずるほど。このカートリッジは個性が強くハマると 実力以上のものを発揮しますね。

”I Fall In Love Too Easily”、”Stairway To The Stars”、こんな良い演奏が有ったとは、迂闊でした。タメを絶妙に利かしながらさり気なさを装い忍び寄るエモーショナルな炎が心の奥部まで焼き焦す。この2曲、私的名演箱に入れよう。

 

 

 同一セッションの姉妹盤、”How My Heart Sings!”

 

 

ターコイズのOrpheun盤。 カヴァはMONO仕様ですが、中身はSTEREO盤、よくあるケースですね。

対照的にテンポの速い演奏を集め、出来にバラ付きがありますが、初めからしっかりしたコンセプトがあったわけではない?ので止むを得ないでしょう。

 

 

 

聴き漏らしている名演がまだまだありそうです。


GREEN DOLPHIN STREET / BILL EVANS with PHILLY JOE JONES

2017-12-23 |  Artistry of Bill Evans

 

1959年録音の未発表作品。

昔からこの国内盤(VICTOR)のエヴァンスのタッチと音が好き。MONO盤なのにモノ針よりステレオ針の方が自分の好みに合っている。

何が何でもMONO盤にはモノ針というワケでもなさそう。それが当てはまるのは、モノラル・カッター・ヘッドで切られた純正モノラル盤ではないかな。

C・ベイカーのリーダー・セッションでフラストレーションが溜まった?エヴァンスが残業してレコーディングしたものとも言われ、確かにLP一枚分に満たない曲数からしてそうした憶測も成り立ちます。

ただ、エヴァンス自身はかなり気合が入っているけれど、フィリーはともかくチェンバースは録音のせいか、「残業なんかイヤだよ~ もう帰ろ~」といま一つ気が乗っていない。サブ・タイトルにチェンバースがクレジットされていないのは偶然か?しかし、それが逆にエヴァンスのノリの良さを浮き彫りにしている。

TOPの'You And The Night And The Music’はTVのタバコCMに使われた事もあり、人気が有りますが、自分はいつもB-1'How Am I To Know?’に耳が行く。

'EVERYBODY DIGS’の'Minority’に似た男気溢れる硬質でクールなプレイが堪らない。エヴァンスの魅力を「リリシズム」と一言で済ませるのは簡単だが、本質は対極的な「ハード・ボイルド」と理解している。

 

ポテンシャルを生かしきれないままだったSHURE Me97HEにこのリード線を。

 

 

純度8Nという先入観なしに透明感を増した音が飛び出し、オーバーな表現かもしれないが、一瞬、レコードを間違えたのかな? ここまで音を変えてしまうのは如何なものか、と。

でも、これがMe97HEのポテンシャルの高さとポジティブに解釈すべきでしょう。

なんでもトライしてみるもんだ。

エヴァンスの「水晶」のような音に溺れる。


また発掘盤が ・・・・・・・ BILL EVANS / ANOTHER TIME

2017-09-04 |  Artistry of Bill Evans

 

 

日経のカルチャー・コーナーで片面の1/3を占めるほど異例に大きくフューチャーされていた。

昨年発売された`SOME OTHER TIME’に続く第二弾。

前作が個人的に「スカ」だったので未聴。

 

「最高の布陣の一つ」という認識はないなぁ~、自分だけ?

 

`SOME OTHER TIME’ではほとんど死んでいるディジョネットのdsはどう?

「緩急自在でバンドに活力を与えている」そうだ。

ま、どうでもいいのですが・・・・・・

 

因みに、ディジョネットは「正直言うと`SOME OTHER TIME’よりdsが上手く録れている本作の方が好き」と語ったそうです。

うぅ~ん、見事、発売元にやられましたね、もう遅いわ(笑)。 商売上手です。


ひっそり愛聴する ・・・・・ ALL ACROSS THE CITY / JIM HALL

2017-06-28 |  Artistry of Bill Evans

 

 

世評で、いつも‵UNDERCURRENT’と比較され、常に敗者にされる宿命を背負った一枚。

でも、ターンテーブルに乗る頻度は遥かにこちらの方が多い。もちろん、好きなC・ポーターの'I’ve Got You Under My Skin’がTOPに入っている事もありますが、実はラストにひっそり収録されているJ・ホールのオリジナル‛All Across The City’ が聴きたくて。

まるで日本の曲「雪の降るまちを」を連想させる和風メロディが心に沁みてくる。アルバムの最後、このポジションが絶妙ですね。さすがC・テイラー。

ドリル・ホールのカヴァ(ゲート・ホールド)だけど、買い替えする気はなく、RVGが録音とカッティングをしている点が物を言っている。勿論、ディレクター、V・Valentin によりBN等で聴けるゲルダー・サウンドとは似てもに似つかないVERVE音に変換されているが、それでも弾力ある音(やや丸っこく、デリケートさに欠けるけど)はなかなか魅力があります。録音はしているもののゲルダー自身がカッティングしていないレコード(VERVE)の中には、ちょっと・・・・・・・・

また、モノラル盤だからかもしれないが、カッテイング・レベルが高いのもメリット。

 

もう一枚、 ‛All Across The City’ が収録されているアルバムを。

 

 

作曲者ホールはソロを取らずサポート役に徹する、という変り盤(笑)。

しかし、ソロを任されたJ・レーニーが聴く者の心の穢れを洗い流すような素晴らしいソロを弾き語り、シムスの啜り上げるテナーもよく、それこそ「雪の降るまち」を粛々と進む情景が眼に浮かびます。

この作品はボサノバを始め、リズミカルな曲が多く、殊更、印象深い演奏になっている。また、ホールのもう一曲のオリジナル‛Move It’はロリンズの‛THE BRIDGE’に入っている'John S ’に似たモダンな曲想で、当時、ロリンズから強い影響を受けた事が分ります。良い演奏ですね。

所有する国内盤の音はやや団子気味なので、こちらはCDで聴いています。  

 

こんなメロディを書くJ・ホールは、ひょっとして日本人より日本人かも。


MORE FROM THE VANGUARD / BILL EVANS ・・・・・ 一粒で二度美味しい

2017-03-04 |  Artistry of Bill Evans

 

 

冴えないカヴァだけれど、コレがいいんだなぁ~

1984年リリースの国内盤。邦題は「不思議な国のアリス」。

中身は、1961年6月25日のあの‘VILLEAGE VANGUARD’ライブの未発表別テイク集。

‘Sunday At ・・・・・・・’と‘Waltz For Debby’の二枚を一度に聴いた気分になります。

曲目は、

A面 ー Alice In Wonderland 、 Detour Ahead 、 All Of You
B面 ー Gloria’s Step 、 My Romance 、 Jade Visions 、 Waltz For Debby

 

本番テイクと聴き比べるは野暮というもので、本作は曲の配列が抜群で落穂拾い臭は全くなく、独立した作品として充分価値があると思う。それだけ各テイクのクオリティが高いというワケ。

ラファロのオリジナル‘Jade Visions’は、こちらのテイクの方がエヴァンスのpが短いながらも素晴らしく自分は好きですね。

全体に、本番テイクに比べ、ややスィンギーと言えるかな? 秘かな愛聴盤です。

なお、‘The Village Vanguard Sessions’(MILESTONE 2枚組、1973年リリース)で既に日の目を見ているため、本作にも収録されなかった‘Porgy’は後に‘Waltz For Debby’のCDのボーナス・トラックで初めて聴きましたが、コレもいいですね。他の曲とちょっと雰囲気が異なるため本番から外されたと思いますが、音楽家としての「器」の大きさを感じます。秘めた愛を深々と語り綴るエヴァンスのpにころっと殺られる。

 

久し振りに後期エヴァンスの人気盤‘You Must Believe In Spring’を。

エヴァンスの最高傑作と言う人もいるけど、さぁ、どうかな?

 

 

 

煌びやかな音色とナイーブなタッチ、エヴァンス流リリシズム、確かに文句の付けようがありませんね。

でも、‘MORE FROM THE VANGUARD’、‘Porgy’を聴くと、エヴァンスが生前、何故、リリースを認めなかったか、その理由が何となく解ります。

 

エヴァンスにとって「あの日」は「特別な一日」ではあったけれど、「奇跡」では・・・・・・・・・