「富士そば」の角を曲がる時、いつも「今日は開いているかな?」と不安になる。三、四回に一度は臨時休業、又は、所用でオープンは午後〇時から、とプレートが掛かっていた。ま、マスター一人で切り回しているのでタイミングが悪かった、と諦めるしかない。でも、開いていた時は、妙にテンションがハイに。
ある日、転げ落ちそうな階段を降り始めると、今まで耳にしたことが無い音色とフレージングのtpが流れてきた。誰だろう、一瞬、B・ミッチェルかな?と思ったが、チョット違う・・・・・・・・・・
‘Secret Love’だった。続いて‘Softly As ・・・・・’が。tpがリーダーでJ・ヒースとケリーは解ったけれど、いくら頭を巡らしてもtpはサッパリ解らない。
マスターがレコードを納める時、カヴァを横目でチラッと。 今のようにネットからの情報はなく、どうしてこの盤の存在を知ったのか、記憶は無いが、狙っていたブツだった。因みに「幻の名盤読本」にも取り上げられていなかった。
まだ、あまり注目されずSTEREO盤だったためか、NMでも懐の心配は要らなかった。
カッティング・レベルはやや低いもののパワーを入れると音が豹変する。エンジニア・RAY FOWLERの特徴の一つです。
格上のサイドに囲まれ、無名のスリートのtpは線は細いけれど、何とかリーダー・シップとオリジナリティを出そうと一生懸命、工夫している。好感が持て、‘But Beautiful’を聴くうちにだんだん応援したくなりますね。
ベスト・トラックはラストの‘The Hearing’、モード色と仄かなエスニックな香り、そしてサスペンス・タッチが交錯するC・ジョーダンの隠れ名曲。ケリーのバックでJ・コブのリム・ショットが入る辺り、勝手に手足が踊りだす。
スリートも「ヤク」に溺れたそうで、リーダー作はこの一枚で終わってしまった。残念です。
遥か昔の思い出の一ページ。