先入観、固定観念が衰え始めた記憶回路を更に、しかも確実にスポイルしていく。
ハッキリした理由はないけれど、ドラマーのリーダー作を積極的に聴くことはなく、ラ・ロカの1stリーダー作を忘れていたわけではないけれど、レコード棚の一番冷遇された隅(ドラマーのリーダー作群)でこの一枚を。
ずっと記憶の中で彷徨していた「一曲」、あれ程好きだったスタンダード曲‵Lazy Afternoon’にやっと。
糸を引くねり飴のように低~高音まで伸び切るJ・ヘンダーソンのtsに殺られる。
巧みなブレッシングとリードの響かせ方が見事で、まるで霧の中をドローンで遊泳しているようだ。
これほどまでに抒情詩的な趣に溢れた演奏は滅多にありません。ジョー・ヘンの優れた、そして隠れた資質ですね。知られざる名演です。
間違いなく、BNでは異例のダブルSTEVEの起用がケミカル反応を引き起こしたのだろう。
アルバムを通して、この日はジョー・ヘン、生涯ベスト・パフォーマンスと言っても過言ではありません。
とは言え、J・ヘンダーソンの「裏リーダー作」とは言わせないラ・ロカのドラミングの妙、冴えが聴きもの。また、作曲力(オリジナル3曲)もセンスもGoo。
エスニック・ナンバー‵Malaguena’、‵Basra’ばかり言及されるが、ソウル・ロックの‵CANDU、モーダルな‵Tears Come From Heaven’等、他の曲も中身が濃いです。
ドラマーのリーダー作、理想形の一つ。