今まであまり良い印象を持っていなかった作品。録音された1965年当時のジャズ・シーンの流れからしてスタンダードを中心にカリプソまでとなると、聴く以前に「そりゃ、ちょっと・・・・・・・ね」が偽らざる実感だった。尖がっていなければ「非進歩的」とは思わないけれど。
ただ、B・シール自身が撮ったロリンズの愛車、カルマン・ギアやゲルダーがわざわざ出向えているライナー・フォトに何かしら仄々した空気を感じたのも事実だった。
年末、入手した電源コンセント「R1」を色々とテストを重ねた結果、MC7300専用に接続するのが一番効果的でした。
最終チェックに選らんだ一枚がこのインパルス第一作目、良いイメージを持っていない方が「中身」も「音」も客観的に聴けるだろうと。
カートリッジは定番中の定番、SHURE・TypeⅢ、音域がグッと広がり得意とする高域の艶やかさがUP、更にダイナミック・レンジも大きくなり陰影、立体感が増している。”Green Dolphin Street”のロリンズのtsがこんなに生々しくスリリングだったとは・・・・・・・、今まで何してたんだろう。
ただ、やや煌びやか過ぎるきらいがあるのでTypeⅤ(スタイラスはVN5MR)に差し替えると、
煌びやかさが程よく抑えられ滑らかで「芯」のある迫力音に変り、やはりⅤのほうが格が上ですね。
tsの朝顔の微妙な動きがしっかり聴きとれるし、”Everything Happens To Me”でのW・ブッカーの弾力あるソウルフルなベース・ソロも凄く驚きですね、窓ガラス、ドア・ガラスがビリつきます。ブライアントのp、ローカーのドラミングも小気味よい。何よりもロリンズのtsが生き生きしているではありませんか。
50年を超す歳月と「R1」という小道具を用意させたけど、ゲルダーさん、「あんたはやはり偉い」。
このアルバムは少なからず賛否両論を呼びましたが、自分は今までを猛省し「賛」に転じます。
その僅か10日前の1965年6月28日、コルトレーンは既にアヴァンギャルドの領域に一歩踏み込んでいた。
サイド11人の内、コルトレーンが演ろうとした事を本当に理解できたのは「オレとハバードの二人だけだった」とシェップが語るほど難解な問題作。解らなくて当たり前か。
コルトレーンとロリンズ、同じレーベルでそれぞれ違う道を歩み出したが、二年後、誰も予測できなかった事態に。
コルトレーンは急逝、ロリンズはインパルス三作目”EAST BROADWAY RUN DOWN”の出来を親会社ABCレコードの担当重役から叱責を受け、プライドを傷付けられたロリンズは新録を拒否、表立った活動を一時中止していたそうです。
二人の中心人物を失い漂流し始めたモダン・ジャズは何処へ。自分のステージより観衆を集め沸かせるC・ロイドのステージを横目で見たマイルスが放った次の一手は・・・・・・・・
堰を切ったように流れはマイルスが先導する「エレクトリック・ジャズ」に一気に向かった。
正に激動の時代、その空気を肌で感じ、吸い込んだ体験は、今思えば、何物にも代え難いもの。
ロリンズよ、目を閉じないで欲しい。「モダン・ジャズ」の灯が消えるのは寂しい。