ライナー・ノーツは同じピアニストのH・パーランが書いており、ロウソンについて”underratted(過小評価)と言うよりも、“under-exposed”、直訳すると「露出不足の」、つまり「日陰の男」と評している。まぁ、42才にして初リーダー作(本作)とは、彼の長いキャリアと比較すると、的を射た表現と言える。
本レコードの特徴はまず「音」。NY録音(1977年)だが、まったくアメリカの匂いがしない。「JAZZCRAFT」がデンマークのレーベル、そして、エンジニアも名前(MICHAEL EWASKO)からしてヨーロッパ系?ということも手伝い、粘りっ気の少ないクリーンな音作りがなされている。それに加え、もともとソリッドなピアノ・タッチを聴かせるロウソンだけに、最初のアップ・テンポの‘The Highest Mountain’を聴くと、「チョット、潤いに乏しいなぁ」と感ずるやもしれませんが、逆にロウソンの初リーダー作に掛ける意気込みと感じ取るのも不思議ではありません。
また、本作では、久々にB・クランショウのウッド・ベースが聴かれるのも嬉しい。パーランもコメントしている通り、以前とはかなりサウンドが異なります(交通事故の後遺症?)。でも、伸びの良いツン・ツン・ベースが楽しめます。それと、ライリーのナチュラルで絶妙なシンバル・ワークも聴き逃すわけにはいきません。
で、中身はどうかと言うと、”The Highest Mountain”はともかく、ロウソンのオリジナル(2曲)を始めミンガス、パウエルもの、スタンダード、映画音楽等とバラエティに富む構成で最後まで聴き手を飽きさせない。
ロウソンも所属していた“The Piano Choir”のピアニスト、SONELIUS SMITH作の‘The Need To Smile’、オリジナル曲、ゴスペル・フィーリングに満ちた‘Rip-Off’では77年という時代感覚を十分表現している。そしてラスト・ナンバ-、映画‘Fitzwilly’からの‘Make Me Rainbows’。ソウルぽさを体全体で撒き散らすロウソン、イケてる。
ただ、全体に無愛想なピアノ・プレイが惜しく、いい意味での「野心」の香りが些かでも有ったならば、誰にとっても「プライム・タイム」になったであろう。
なお、ロウソンは1997年、僅か3枚のリーダー作を残しこの世を去っている。終生、“under-exposed”であった。