トリスターノ派ピアニスト、ロニーの唯一のリーダー作。トリスターノと聞くと何だか小難しいイメージが付き纏うが、サボイというレーベルのせいか、或いは、dsにK・クラークが入っているせいか、全編に亘って堅苦しい所がなく、実に心地よく、ノリの良い演奏が続く。
ロニーのpはコニッツやマーシュとのクール派セッションで聴かせる指の関節をポキポキ折るような歯切れの良い、折り目正しいタッチが特徴であるが、本作では、むしろスイング感、歌心をより前面に押し出しており、柔軟な側面を見せていて、ここが聴き所です。後年、歌伴もソツ無くこなすあたり、守備範囲は結構広く、頑ななトリスターノ原理主義者ではないようです。
そして本作の最大の聴きものはレコーディング・チャンスに恵まれず、不遇を囲っていたT・ブラウンのts。充分に与えられたソロ・スペースを生かして、伸び伸びとスムーズにtsを鳴らすブラウンは思わぬ拾い物です。クール派テナーの一人として兄貴分のマーシュとよく比較されるが、クネクネ感がマーシュに比べ少なく、よりスインギーに素直に歌うブラウンのtsを愛するファンは少なくない。ブラウンのリーダー作”FREE WHEELING”(Vanguard)は「幻の名盤」として知られている。
tbのDENNISについては、一時、ミンガス・グループに在籍していたことぐらいしか知らなく、ここでは、tbが持つ素朴な味を充分に聴かせてくれます。
tsとtbが絡むと「白けた流れ」が生じ、感情を押さえたクールなプレイは好きになれないと、ある人は評するけど、そうかな? なんか、別の意図を持たせたハッタリに感じます。それと全曲、ラベルのように暖色系です。
地味ですが間違いない一枚です。
“Bluespirits20040807”
僕は日本盤しかもっていないのですが、大好きなアルバムなので、思わずコメントさせていただきました。
ロニー・ボールは、クリス・コナーの「at the village gate」で伴奏をやっていて、それが気にいって、聴いていたのですが、リーダー作はこれだけなのが残念です。もしかしたら、他にあるのでしょうか?
テッド・ブラウンは、ご指摘のとおりで、僕も好きなテナー奏者です。上不三雄さんのマシュマロレーベルが、2009年の来日時にライブ録音して、2作品リリースしています。でも、録音が少ない人ですね。
このカヴァに腰を引くかもしれませんが、演奏自体はすごく良いですよね。ボールのリーダー作、恐らく本作一枚と思います。発掘物でも他にあると嬉しいのですが・・・
ブラウンのtsもご機嫌ですね。以前から、上不三雄さんのお店に一度、行ってみたいと思ってます。