カナ文字が親しまれやすいのは、日本固有の文字であるからだろう。
英語が親しまれやすいのは、いつの間にか世界を席巻してしまう魅力か魔力があったからで、発音を変形した英語に似た言葉がカナ文字になって親しまれやすいのは、カナで書き表しやすいからだろう。
英語風のカタカナ文字は、言葉の響きと文字の形とが巧い具合に融合している。
カタカナ文字は、漢字との結合もしやすく、巧い具合に新しい言葉ができあがる。
この融合と結合を利用すると、異質のものを都合よく変えて組み合わせることができる。
先日惑わされたクリニックというカナ文字言葉も、素敵な先生が優しい笑顔で待っていてくれるところを想像してしまう。
言っては悪いが、診療所という僻地の偏屈医者がいそうな場所の呼び名とは大違いである。
「情報リテラシー」という言葉に、こんな説明があった。
情報リテラシー(information literacy)とは、情報 (information)と識字 (literacy) を合わせた言葉で、情報を自己の目的に適合するように使用できる能力のことである。
説明は短く端的なほど理解しやすい。
「自己の目的に適合するように」で、情報リテラシーという言葉の本質を見事に言い表している。
「文字どおり正確な」という literal の元来の意味は、巧みな融合と結合によって、「自己の目的に適合するように」と変容され、「情報活用力」、「情報活用能力」、つまり「情報を使いこなす力」に化けている。
せめて情報と呼ばれることがらの、実態を知る力と評価する力ぐらいの水準でいてほしいこのこと言葉も、「自己の目的に適合するように」というのであれば、情報やデータを取り扱うためにコンピューターやネットワークを操ることのできる知識や能力という、はるかに低位なことがらの表現にもなってしまう。
情報リテラシーという呼び名は、用法上どこかに飛んでしまった literal の意味が、カナの部分のあることによって、かすかに残っているような錯覚を覚えるところが不可思議でもあり怪しい魅力にもなっている気がする。