相撲の手の中で、勝っても負けても嫌な味が残るのは張り手である。
勝負事には何がしかの無頼の要素がある。
張り手を反則にできないのも、あまりに整いすぎては堅苦しさが強くなり、客足が遠のく懸念からだろうか。
無頼の手は、無礼との見境がむずかしい。
無頼の手が、たまたまの運に恵まれて勝ちにつながると、同じことは止めておこうと頭では考えていても、勝負の瞬間にまた無頼に走ることがある。
体が勝手に動き、無頼の手が無礼にずり落ちてしまう。
結果で痛い目にあうことがなければ、自制を働かせられない現代人には、痛い目を作らなければ無礼への仕切り線がずるずる下がっていく。
痛い目の作り方を一つ提案しよう。
立ち合いに張り手を使って勝ったときはよいが、負けたときには張り手への罰として黒星を一つ半加算というのはどうだろうか。
表の星は八勝七敗でも、立ち合いに張り手で挑み負けた番組があれば、三役の場から下ろされるという、そんな痛い目はどうだろうか。