オヤジにとっては興味深い「場」です。
このクラスの指揮者が4名揃って、公開で議論することが稀有なことではないでしょうか。
実際の議論はもっといろいろなことが出たのだと思います。
いろいろな考え方があってよいと思います。
少なくとも「4つも必要か?」ではなく、「4つある必要性を感じる状態をつくること」だと思います。
公的な補助や支援が当たり前でなく、音楽を生業にする人たちの団体が「興行」や「営業」としての努力がいかなるものかが問われるでしょう。
現代は貴族がパトロンになる時代ではなく、増してや日本にとってはそういった時代以降に入ってきた文化ですから、在り方はヨーロッパと同じではないと思います。
ちなみに4月22日のプログラムは以下のとおりでした。
オヤジは実際に聴いていないので何ともいえませんが、オケの特徴よりは指揮者の特徴が出ていると感じたのは天邪鬼でしょうか。(笑)
指揮:藤岡 幸夫(関西フィル首席指揮者)
関西フィルハーモニー管弦楽団
◆黛 敏郎:BUGAKU(舞楽)
指揮:飯森 範親(日本センチュリー首席指揮者)
日本センチュリー交響楽団
◆サン=サーンス:交響曲第3番 ハ短調 作品78 「オルガン付」
指揮:外山 雄三(大阪so.ミュージック・アドバイザー)
大阪交響楽団
◆ストラヴィンスキー:バレエ組曲「火の鳥」 《1919年版》
指揮:井上 道義(大阪フィル首席指揮者)
大阪フィルハーモニー交響楽団
◆ベートーヴェン:交響曲第7番 イ長調 作品92
最後に余談2つ。
4人とも東京や神奈川の出身で、恐らくは東京住まいのはず。
ココが東京と比べた大阪の弱さかもしれません。
そして最後の井上道義さんの発言。
84歳の外山さん、69歳の井上さんからすれば、50代前半の飯森さん、藤岡さんは「若い指揮者」。
世間とはちょいとズレた感覚ですが、音楽を齧っているオヤジには「確かに・・・」と肯いてしまいます。
50代半ばのオヤジもまだまだ「若い」ですゾ!(笑)
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<【関西の議論】大阪に4つもオケは必要か? 統合、共存、四番バッターばかりでは…橋下改革の命題に4オケ指揮者が大議論>
産経新聞 http://www.sankei.com/ 2015年5月12日
大阪のオーケストラはどう生き残るべきか-。現在、大阪府内に拠点を置く4つのオーケストラを率いる指揮者たちが一堂に会し、意見を交わした。大阪のオケは、橋下徹大阪市長が大阪府知事時代から進めている文化行政の方針転換によって補助金をカットされるなどして、経営的な困難が続く。改革の嵐の中、これからどうオケを運営して、聴衆を獲得していくべきかについて、4人の指揮者による議論の様子をリポートする。(安田奈緒美)
◆4オケ“夢の競演” 「客の取り合いしたらダメだ」
《4月22日夜、大阪・フェスティバルホールでは、大阪府内に拠点を置く4つのオーケストラが競演する画期的なコンサートが開かれた。4つのオケがそれぞれの魅力を発揮できる約20分の曲を披露。客席は4つのオケの特徴を聞き分けることができた。
その翌日に4つのオケの指揮者たちが一堂に会して、それぞれの意見を交わした。出席者は大阪交響楽団次期ミュージック・アドバイザーの外山雄三▽大阪フィルハーモニー交響楽団首席指揮者の井上道義▽関西フィルハーモニー管弦楽団首席指揮者の藤岡幸夫▽日本センチュリー交響楽団首席指揮者の飯森範親の4人》
藤岡 4つのオケが客の取り合いをしたらだめだと思う。相乗効果を狙っていかないと。魅力あるオケの成長で、大阪の文化を盛り上げていきたい。
外山 私は1959年から(大フィル創設者の)朝比奈隆先生に呼ばれて大フィルを振るようになりましたから、大阪とは長いおつきあい。大阪の街のオケは、自分の街のオケに感じます。大阪交響楽団も若いオケですが、良い演奏に向かっていろいろ努力していきたい。
◆「世界的に見ても大阪には1つのオケでいい」
《議論の口火を切ったのは大フィル首席指揮者の井上だった》
井上 都市に良いオケが欲しいのなら、世界的な例を見ても僕は大阪には1つのオケでいいと思う。能力の高い人に良いお給料を払って、代表的なオケを作る。僕はそっちの方に進むべきじゃないかと思う。
《4オケの統合問題は関西でも折りに触れて議論されてきた。平成18年には、関西経済連合会の秋山喜久会長(当時)が、それぞれのオケに運営資金を出してきた財界の立場から、大阪の4オケを大合同したらどうかと提言した。
以降も在阪のオケでは、大阪府によって設立されたセンチュリーが橋下徹・大阪市長が府知事時代に補助金をカットされ府から完全独立したり、大フィルが大阪市からの補助金を全額カットされたりした経緯がある。どの楽団も運営難が続くという実情がこういう発言を導いたのか》
◆「1つだとオケは発展しない。切磋琢磨してこそ」
飯森 井上道義先生のおっしゃったことと逆の立場ですが、1つの都市に1つだとオケは発展しません。他の楽団があってこそ切磋琢磨できる。全部のオケが生き残るために事務局、指揮者、楽員、オケに関わるすべての人が真剣な取り組みが必要だと思う。
藤岡 オーケストラ文化の裾野を広げないと、プロになる人も減って、レベルも下がってしまう。4つのオケがどんどん成長しないといけないんです。
外山 優れたメンバーを集めたら、優れたオケができるわけでもない。私たちは、実際にそれを東京で体験しています。金にあかして良いプレイヤーを集めたら良いというわけではない。とはいえ、同じ街に4つのオケが存在してどうしたら良いのか、私にも誰にも答えがないのではないか。ただ、朝比奈先生が大フィルを作ったころは、ストラヴィンスキーなど新しいものを演奏しようとしたとき、指揮者も楽員も苦労していた。ところが今、大阪の4つのオケの技術的な大きな進歩がある。感慨深いものがあります。
◆「今、オケをつぶしたらホールがつぶれる」
藤岡 それに今、オケをつぶしたら、まずホールがつぶれますよ。大阪には、世界に誇るホールがあるのに、その伝統を失うことになる。
飯森 朝比奈先生はもともと「1都市1オーケストラ」論者だったといいますが、昔、関西フィルを振って「1都市1オケではだめだな」とおっしゃったと聞いています。4つのオケの切磋琢磨は大切だと思うんです。一方で僕が音楽監督を務める山形交響楽団は1都市1オケですが、隣に仙台フィルハーモニー管弦楽団があって、切磋琢磨できる。それに野球でも4番バッターを集めた球団が、優勝できなかったでしょう。
井上 僕は意見違うんだよな。音楽家というのが良い職業になって、その街にとってオケを持つことが誇りになればと思っているから。
藤岡 僕は大阪に来て、関西フィルにきて16年目なんですが、ずっとお客さんを増やしたいと思ってきた。そのために、大阪や周辺の街の人たちと誠実につきあってきた。そうすると、こっちの人たちって応えてくれるんだよね。関東(のホールやコンサート主催者)だと、今年はこっちのオケを呼んだから、来年はあちらのオケって機械的になっちゃうんだけど。だから、私たちはできるだけ長く街の人たちと長くおつきあいして、本拠地の大阪でのコンサートに足を運んでもらうように努力していきたい。
◆「オケと指揮者は分けて考えないと…」
《4オケの生き残り方について、井上は大阪にはオケは1つでいいのでは、と投げかけ、藤岡、飯森の両者は4つ存在するべきだと論じ、外山はトッププレイヤーの集合体だけが良いオケではないと判じてこの議論は終了した。そして最後に、50歳台の藤岡、飯森に対して再び井上が疑問を投げかけた》
井上 藤岡さんにしろ、飯森さんにしろ、若い指揮者は、オケのこと、一人称でしゃべるよね。外山先生どう思う?
《5月で84歳になった、日本を代表する指揮者の外山に尋ねた》
外山 オレ年いったと思っていないから。ま、でもオレのオケとは言わないな。何でだろう。
井上 オケと指揮者は分けて考えないといけないと思うんだよな…。
《一見、とっつきにくそうなクラシックの世界。その世界でライバル関係にあると言える4つのオケの指揮者たちが忌憚なく意見を言い合うのも、直裁的な大阪風か。議論が深まって大阪のオーケストラ文化が発展することを期待したい。》