昨日は久しぶりに、翌日までに仕上げるべき課題が何もない夜を迎えた。何ヶ月ぶりかなあ。いつもはCDをかけてもただ聞いているだけだが、昨夜は一緒になって歌ったりした。余裕がなせる業である。
こういう日々が当分続く。嬉しいな。
昼に資料室に行くと、3年生のいつものメンバーが来ていた。みんな一昨日のスピーチコンテストのことを知りたくてたまらない様子。みんなその日は副専攻の大切なテストの日だったので、行きたくても行けなかったのだ。昨年コンテストに参加した範さんはその時の経験を悔しそうに話していた。彼女は終わりから2番目にさせられたが、スピーチの順番が遅いと採点基準が厳しくて不利になるとか。そんなことあるかな?
やっぱりクラスメートの楼さんの最優秀賞はかなり衝撃的だったようだ。何しろ財大日本語学科始まって以来の快挙だ。財大は江西省でトップの大学と言っても、日本語学科は学内では、人数も少なく、肩身の狭い思いをしている。入学時、他学部を希望してレベル的に無理な子が、日本語学科に振り分けられたりすることもあるのだ。外国語学部は英語学科と日本学科だけだが、日本語学科に対する予算配分はとても少なくて、卒業生を担当された日本人の先生を卒業式にお招きしたくても、その経費が出ないから招待もできないと、新平老師が愚痴を言っていたことがある。
日曜の夜、その新平老師が興奮気味にお祝いの電話をかけてくれ、私まで褒めちぎられて恥ずかしかった。指導者賞とかももらえるそうだ。そんなものもらっても何になるのかちょっと分からないが、給料が上がることは決してない。範さんは、
「財経大日本語学科の最盛期を迎えました。ここ当分続くでしょう。」
と予言めいたことまで言う。しかし、冷静に考えれば、このようなコンテストに入賞したかったら、そのコンテストの傾向を分析し、準備を怠りなくしさえすれば受賞の可能性が高いという感触を今回得た。それでもやはり、今回最優秀賞をゲットした最後の決め手は、その子が持つパワーだ。
楼さんは、はっきり言ってクラスのトップレベルの日本語力を持つ子ではない。しかし、彼女には独自の輝きがある。裏表のない堂々とした態度、型破りなおもしろがり精神、そして、ガリ勉ではないがいざやると決めてからの集中力と実行力だ。ついでだが、彼女の血液型はB型、私と同じだ。我々は似た者同士でチームとして心を一つにし易かった。
彼女は第二部の即席スピーチが最も難関であることを熟知していた。というのは、急にテーマを与えられても即答できる実力がないことは、彼女自身とてもよく分かっていたからだ。第一部の自前のスピーチ練習と同時に、即席スピーチの題目予想をし、その予想した題目について作文を書き、それもスピーチ練習した。なので、全部で15種類ぐらいのスピーチを暗唱して練習したことになる。
その全てについて、作文添削から発音等の表現練習に付き合っている私の方が、途中で嫌になるくらいだった。しかし、幸いなことに彼女には、9才のときから「名探偵コナン」を見続けて鍛えた耳があった。 文法は弱いが、発音・アクセント矯正はかなりスイスイ入った。「わだし→わたし」「おもています→おもっています」「お肉も切手→お肉も切って」からスタートした彼女は、約一ヶ月で、スピーチ内容についての発音はかなりクリアになった。(少なくとも審査員の一人の九州出身の方が話す日本語より共通語に近かった。 )
楼さんにはおもしろいエピソードがある。彼女の前歯は小学生の時、クラスのいたずらっ子の所為で根が折れて義歯になった。その義歯が黒ずんでいたので、今回のスピーチコンテストの前に白い歯に変えようと、3月初めから歯医者に通っていたが、なかなか進展せず、仮の歯をつけてやり過ごしていた。それがぐらぐらしてくしゃみでスポンと取れたりするようになった。彼女はその仮の歯をしょっちゅう外しては、私にニッと笑って見せたり、ボーイフレンドの郭さんに、その抜けた顔を記念撮影させたりしている。
中国の女の子は、おそらく日本の子同様、ボーイフレンドには最高の姿を見せようとするのが普通だ。彼女の行動は周囲の女の子からはとても奇異なものに映っている。英語学科のショウさんは「日本語学科の女の子は奇人変人揃いだ。」とまで言う。楼さんは気にしない。
受賞が決まったとき、彼女はステージから観客席に両手を広げてポーズをとった。それも他の選手は誰もしなかったことだ。賞品を江鈴五十鈴自動車株式会社副社長の永田さんから渡されたときには、ハグをして、永田さんを大いに喜ばせた。いちいち恥ずかしがっていたら、最優秀賞は得られないという見本か。
資料室の優等生たちにその話をすると、あきれ顔だったが。
こういう日々が当分続く。嬉しいな。
昼に資料室に行くと、3年生のいつものメンバーが来ていた。みんな一昨日のスピーチコンテストのことを知りたくてたまらない様子。みんなその日は副専攻の大切なテストの日だったので、行きたくても行けなかったのだ。昨年コンテストに参加した範さんはその時の経験を悔しそうに話していた。彼女は終わりから2番目にさせられたが、スピーチの順番が遅いと採点基準が厳しくて不利になるとか。そんなことあるかな?
やっぱりクラスメートの楼さんの最優秀賞はかなり衝撃的だったようだ。何しろ財大日本語学科始まって以来の快挙だ。財大は江西省でトップの大学と言っても、日本語学科は学内では、人数も少なく、肩身の狭い思いをしている。入学時、他学部を希望してレベル的に無理な子が、日本語学科に振り分けられたりすることもあるのだ。外国語学部は英語学科と日本学科だけだが、日本語学科に対する予算配分はとても少なくて、卒業生を担当された日本人の先生を卒業式にお招きしたくても、その経費が出ないから招待もできないと、新平老師が愚痴を言っていたことがある。
日曜の夜、その新平老師が興奮気味にお祝いの電話をかけてくれ、私まで褒めちぎられて恥ずかしかった。指導者賞とかももらえるそうだ。そんなものもらっても何になるのかちょっと分からないが、給料が上がることは決してない。範さんは、
「財経大日本語学科の最盛期を迎えました。ここ当分続くでしょう。」
と予言めいたことまで言う。しかし、冷静に考えれば、このようなコンテストに入賞したかったら、そのコンテストの傾向を分析し、準備を怠りなくしさえすれば受賞の可能性が高いという感触を今回得た。それでもやはり、今回最優秀賞をゲットした最後の決め手は、その子が持つパワーだ。
楼さんは、はっきり言ってクラスのトップレベルの日本語力を持つ子ではない。しかし、彼女には独自の輝きがある。裏表のない堂々とした態度、型破りなおもしろがり精神、そして、ガリ勉ではないがいざやると決めてからの集中力と実行力だ。ついでだが、彼女の血液型はB型、私と同じだ。我々は似た者同士でチームとして心を一つにし易かった。
彼女は第二部の即席スピーチが最も難関であることを熟知していた。というのは、急にテーマを与えられても即答できる実力がないことは、彼女自身とてもよく分かっていたからだ。第一部の自前のスピーチ練習と同時に、即席スピーチの題目予想をし、その予想した題目について作文を書き、それもスピーチ練習した。なので、全部で15種類ぐらいのスピーチを暗唱して練習したことになる。
その全てについて、作文添削から発音等の表現練習に付き合っている私の方が、途中で嫌になるくらいだった。しかし、幸いなことに彼女には、9才のときから「名探偵コナン」を見続けて鍛えた耳があった。 文法は弱いが、発音・アクセント矯正はかなりスイスイ入った。「わだし→わたし」「おもています→おもっています」「お肉も切手→お肉も切って」からスタートした彼女は、約一ヶ月で、スピーチ内容についての発音はかなりクリアになった。(少なくとも審査員の一人の九州出身の方が話す日本語より共通語に近かった。 )
楼さんにはおもしろいエピソードがある。彼女の前歯は小学生の時、クラスのいたずらっ子の所為で根が折れて義歯になった。その義歯が黒ずんでいたので、今回のスピーチコンテストの前に白い歯に変えようと、3月初めから歯医者に通っていたが、なかなか進展せず、仮の歯をつけてやり過ごしていた。それがぐらぐらしてくしゃみでスポンと取れたりするようになった。彼女はその仮の歯をしょっちゅう外しては、私にニッと笑って見せたり、ボーイフレンドの郭さんに、その抜けた顔を記念撮影させたりしている。
中国の女の子は、おそらく日本の子同様、ボーイフレンドには最高の姿を見せようとするのが普通だ。彼女の行動は周囲の女の子からはとても奇異なものに映っている。英語学科のショウさんは「日本語学科の女の子は奇人変人揃いだ。」とまで言う。楼さんは気にしない。
受賞が決まったとき、彼女はステージから観客席に両手を広げてポーズをとった。それも他の選手は誰もしなかったことだ。賞品を江鈴五十鈴自動車株式会社副社長の永田さんから渡されたときには、ハグをして、永田さんを大いに喜ばせた。いちいち恥ずかしがっていたら、最優秀賞は得られないという見本か。
資料室の優等生たちにその話をすると、あきれ顔だったが。