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Brugge Style
武器を奪われた王子
英国ロイヤルバレエの「白鳥の湖」ガラですばらしく良い席が取れたことと、ロイヤルアカデミーの「ビザンチン展」に対して夫が抱く異常な興味を口実に、クロッカス休暇中のブルージュとおさらばしてロイヤルなロンドンへ行った。
ロンドン、ポンド急落で行き時です。
...以下、「白鳥の湖」ディレッタントとしては書き留めておきたい感想など。
第一幕の王子の誕生日のシーンで、ジークフリード王子が母親である女王から「クロスボウ(弓)」あるいは「銃」を授けられ、それを携えて狩りに出かけることによりオデットと巡り会う、という筋書きが書き換えられていた。
ロイヤルバレエの新筋書きでは、彼は母親から武器を授けられず、しかも後に彼が携えて出かけるクロスボウは彼の友人どもが衛兵から奪った「借り物」であるのだ。
これはつまり彼が母親から一人前の男性として承認されることなく、また、借り物の武器によって運命の女性と知り合った(ここをさらにフロイト先生風に性的に解釈してもかまわない)ということに他ならない。
これが意図的な筋の変更であると言わずしてなんであろう。彼らの悲劇はここですでに暗示されているというわけだ。ええ、適当に思いつきで書いていますのでご了承お願いします。
次に、帝政ロシアが舞台である白鳥の湖は初めて見た。
なぜこの時期のロシアなのかは分からない。チャイコフスキーが作曲したから?ロシアが初演だったから?ヴィクトリア期のイングランドという試みはなかったのだろうか?
たいていは領邦国家体制時代のドイツなのだ(おそらく原作がドイツの「奪われたベール」であるからだろう)。例外としては例えば、白鳥の湖の演出としては個人的に最高の出来だと思うベルリン国立バレエの「19世紀ドイツ」、他にはパリオペラ座の「スターウォーズ風」などもあるが。
そしてオデット。
彼女の容姿がなんといっても若すぎた(だから彼女には眠れる森の美女のオーロラ姫などははまり役だろう)と思う。
オデットは魔法によって白鳥に変えられた女性である。彼女は他に誰も愛したことのない男性から愛されることによって魔法がとけることを待ち続けている。
待ち続ける...これは長い間でなくてはならない。オデットの悲壮でこの世のものにはありえない美しさというのは、16歳の姫が1年待ち続けたくらいでは現れない性質のものなのだ。
だからオデットは年増(年増風)じゃなくてはならないのだよ。
例えばベルリン国立オペラの Steffi Scherzer (<DVDが出ていて演出的にかなり好き)。
しかしそれにしても古典バレエの主役男性というのはどうしてああそろいもそろってボンクラ揃いなのか...次回はその辺を考えてみよう。
.....
それにつけてもビバ・ロンドン。今月末はアメリカンバレエシアターの白鳥の湖公演もあるし、田舎者にとっては憧れのバビロンである。
武者小路実篤の「友情」に、よき芝居とよき音楽とよき本、それにルーブルとオペラ座のあるパリへ行きさえすれば、人間は真の自己を実現でき、自由になれると信じている素朴な人々が登場するが、まあわたしもそれと変わらない。
と言うか、ええっ!それって真理じゃないの(笑)?!しょっく~。
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