明日(12月14日・月)、沖縄県議会土木環境委員会で識名トンネル事件に関する損害賠償事件の和解案の裁決が行われる。
仲井眞知事時代、「沖縄県政史上最大の不祥事」と言われた識名トンネル事件。私たちは6年間におよぶ住民訴訟を続けた結果、2018年9月、最高裁で2名の元県幹部らに7,168万円の賠償請求を知事に義務づける判決が確定した。県民の被った損害は、5億8千万円だったが、その一部が補填されることとなったのである(経過と問題点等については、本ブログの本年11月14日号を参照されたい)。
県は2人に対して損害賠償金の支払いを求めたが、2人は支払わなかったため、県は地方自治法に基づき、彼らに対して損害賠償を求める訴訟を那覇地裁に提訴した。
ところが県は、今回の県議会に、「裁判所からの和解勧告があった」として、「被告らが県に、それぞれ1000万円(計2000万円)の解決金を支払うことで和解する」という議案を提出した。
せっかく最高裁で7,178万円の損害賠償が確定したのに、なぜ、2000万円で和解するのか? その差額分(5,178万円)は、県民の負担となるのではないか? これでは、「住民訴訟の制度を根底から否定するもの」(大阪高裁H21.11.27判決)と言わざるを得ない。
12月11日、この議案を審議する県議会土木環境委員会が開かれたので傍聴した。与党、野党の双方から、多くの疑問が出された。
和解勧告案には、「被告らの資力等を考慮し」とされている。しかし、「元幹部らは、保険に入っていなかったのか?」という質問に対して、土建部の担当者は、「保険は個人が任意に加入するものなので、入っているか否かは承知していない」と答弁した。
しかし一人の被告に関して、民間保険会社からは下のような文書が裁判所に提出されている。詳細が不明な点もあるが、「保険金を支払う」と記載されており、彼が今回の和解で1000万円を支払った場合、保険金で補填される可能性がある。少なくとも、「保険については関知しない」と言うような県の説明は納得できない。この保険についてきちんと説明すべきであろう。
そもそも何故、和解に応じる必要があるのか? 和解には応じず、判決を求めてはどうなのか? 計2000万円の解決金で収めてしまった場合、差額の5,178万円は県民の負担となるが、この損害については誰が責任をとるのか?
最高裁で7,178万円の損害賠償が確定したのだから、判決を求めても県が敗訴するとは考えられない。12月11日の土木環境委員会でも、ある野党議員は、「和解を拒否したら7,178万円に戻ってしまう。和解には反対するものではない」と発言していた。
ただ、野党議員の中には、「納得できない。提案を取り下げるべきだ」という意見もあった。与野党とも、まだ最終的な態度を決めていないようだが、県民が被った損害補填をどうするのかという視点で提案への賛否を決めるよう要請したい。