今日(5月1日・水)、県内の17の市民グループが連名で知事に対し、辺野古・埋立承認の再撤回を求める要請書を提出した。
昨年12月28日、国が設計変更申請を知事に代わって代執行で承認し、本年1月10日からは大浦湾での工事が強行された。県は、辺野古側の土砂の仮置きや、海上ヤード工事について問題点を指摘し、工事の中止を求める行政指導を行っている。防衛局はそれを無視し、工事を続けているが、県はそれ以上の対応策を打ち出せていない。
こうした、「県、阻止に手詰まり」(2024.4.25 沖縄タイムス)という状況を突破するためには、埋立承認の再撤回に踏み切るほかない。
今日の提出行動には10数名が参加。土建部・海岸防災課、知事公室・辺野古問題対策課の担当者らに対して、それぞれの思いを訴えた。そして、5月中の遅くない時期に、県幹部との面談を求めてこの日の行動を終えた。
要請書の全文を末尾に掲載する。
沖縄県知事 玉城デニー様 2024年5月1日
辺野古新基地建設事業、埋立承認の再撤回を求める要請
<要請団体>
沖縄平和市民連絡会、沖縄環境ネットワーク、ジュゴン保護キャンペーンセンター、うるま市島ぐるみ会議、島ぐるみ会議・南風原、本部町島ぐるみ会議、島ぐるみ会議・大宜味、ガマフヤー支援者の会、PFAS汚染から市民の生命を守る連絡会、Okinawa Environmental Justice Project、反戦地主会、一坪反戦地主会、奥間川流域保護基金、ヘリ基地反対協ダイビングチーム・レインボー、嘉手納ピースアクション、ミサイル配備から命を守るうるま市民の会、沖縄・琉球弧の声を届ける会
日々の県政運営に心から敬意を表します。
さて、辺野古新基地建設を巡り、国が知事に代わって防衛局の設計変更申請を承認する代執行のための訴訟で、最高裁第1小法廷は2月29日、県の上告を受理しないと決定し、県の「敗訴」が確定しました。この代執行訴訟の一連の経過は、地方自治の本旨や民意を顧みず、国の強権的な手法を追認したもので、司法の役割を自ら放棄した不当なものです。
すでに国は、昨年12月28日に設計変更申請を代執行で承認し、本年1月10日から大浦湾に石材を投下する海上ヤード造成工事を始めました。しかしこの工事については、承認の際の留意事項である環境保全対策等についての県との事前協議がされていません。また、石材投下に伴い、白塵が舞い上がり、海が白濁していることから、石材が洗浄されていない疑いが強まっています。そのため県は繰り返し、工事中止を求めてきましたが、防衛局は県の行政指導を無視して工事を強行しています。
私たち県民は、今も連日、キャンプ・シュワブのゲート前、海上、本部塩川港・安和桟橋等で懸命の抗議行動を続けています。知事も、こうした県民の声に応え、あくまでも辺野古新基地建設を阻止するために、知事が持つあらゆる権限を行使していただきたいと思います。
その具体的な方策の一つが、再度の埋立承認撤回です。
埋立承認後の事情の変化等によりその効力を持続するのが適当でないと判断された場合、知事は埋立承認を撤回することができます。翁長知事急逝後、謝花副知事が、2018年8月に埋立承認を撤回しましたが、その後、辺野古側への土砂投入が始まった際にも、謝花副知事は埋立土砂の性状等を問題とし、「政府の対応はあまりにひどいので、2度目の撤回を視野に入れ、作業・検討している」と表明され、同席していたデニー知事も、「再撤回は理論上可能」と述べられました(2019.1.17 沖縄タイムス)。
その後の辺野古新基地建設事業の経過を見ると、多くの「事情の変化等」があり、今こそ、埋立承認の再撤回が喫緊の課題となっています。たとえば次のような点です。
① 辺野古新基地の耐震設計は当初申請の時点から、中小地震を対象とした「レベル1」での設計であった。しかし、2022年3月、政府の地震調査委員会が、「南西諸島でM8級の巨大地震のおそれ」、「沖縄本島に近い南西諸島北西域で30年以内にM7~5の地震が発生する確率は60%程度」という長期評価を公表した。「レベル2」での耐震設計に見直さなければならない。
②「津波防災地域づくりに関する法律」に基づいた県の「津波浸水想定」(2015年3月)では、辺野古崎周辺の津波最大遡上高が7mと想定されているが、辺野古新基地の外周護岸の標高は6.0m~8.1mの高さしかなく、津波が来た場合、新基地は全て海面下に没してしまう。米軍基地の大量の燃料や爆薬、化学薬品等の危険物が大浦湾に流れ、大変な被害が生じる。設計の見直しが必要である。
③ 環境省が「生物多様性の観点から重要度の高い海域」(海域番号14802)に指定した大浦湾一帯を埋立てることは、2023年3月31日に閣議決定された、「2030年までに陸域及び海域の30%以上を保護地域にする」という「生物多様性国家戦略2023-2030」に反している。
④ 防衛局は2007年の土質調査で軟弱地盤の存在を把握していたにも関わらず、埋立承認願書では、その事実を明記しなかったことが明らかになった。これは、当時の仲井眞知事が「承認申請の際に軟弱地盤の存在を知らされていた」と語っていることと合致する(6.28 読売新聞)。
⑤ 辺野古新基地建設事業では、違法工事や、留意事項違反が相次ぎ、防衛局は、40回以上の知事の行政指導にも従ってこなかった。
⑥ 陸上自衛隊と米海兵隊が辺野古新基地に陸上自衛隊の離島防衛部隊「水陸機動団」を常駐させる等、共同使用することで合意していることが2021年に明らかになった。また、米海兵隊も、南西諸島の島々を小規模に分かれた部隊で転々とするEABO(遠征前方基地作戦)構想等で再編される。辺野古新基地のような大きな基地が、ミサイルの時代に有効に機能するのかどうか等の再検討が必要である。
⑦ 米国連邦議会調査局や米国会計検査院は軟弱地盤地における辺野古新基地建設の困難さに言及している。また、昨年11月6日、在沖米軍幹部が、「軍事的に言えば、普天間から辺野古に移った場合は機能が低下する」、「辺野古が完成した後も普天間の維持を希望する」と発言している。普天間飛行場の改修・強化工事も続いており、辺野古新基地が完成しても普天間飛行場が返還されないおそれがある。
⑧ 埋立承認後の3回の知事選や2019年の県民投票で、辺野古新基地建設には反対という県民の民意が明確に示されてきた。
こうした状況を踏まえ、以下のとおり要請します。
記
1.知事は、代執行により工事が進んでいる現在の状況で、あくまでも辺野古新基地建設を阻止するためにどのような具体的な方策を取ろうとされているのかを明らかにされたい。
2.私たちが再度の埋立承認撤回の理由と考える上記8項目について、知事としての見解を具体的に示されたい。
3.埋立承認後の事情の変化に基づき、再度、辺野古新基地建設事業の埋立承認を撤回されたい。