昨日(3月3日・日)、糸満市・魂魄の塔横で始まった熊野鉱山の開発現場を見にいった。
米須から国道を右折して少し行くと、正面の山が大きく削られ、山肌が剥き出しになった光景に驚く。
一帯は魂魄の塔をはじめ、先の大戦の戦没者を弔う各地の慰霊碑が祀られた米須霊域である。そのすぐ横で、こんな荒っぽい方法で鉱山の開発が始まってしまった。これから本格的な採掘が始まれば、土砂・石材を満載したダンプトラックが走りまわり、霊域の静謐さはさらに損なわれてしまうだろう。この3年以上、戦没者の遺骨の尊厳を守るために懸命の取組を続けてきたが、力及ばなかったと残念でならない。
(熊野鉱山の現状(3月3日))
南部地域一帯は沖縄戦跡国定公園に指定されている。私たちは、業者の開発届に対して、知事が自然公園法第33条(「知事は、当該公園の風景を保護するために、当該行為の禁止、制限、必要な措置等を講じることができる」)に基づき、事業の中止・制限命令を出すよう求めてきた。
しかし知事は、「事前の遺骨調査や県との協議」等の措置命令を出したものの、「事業の中止・制限」には踏み込まなかった。
それでも業者はこの措置命令を不服とし、公害等調整委員会に申立てを行った。公害等調整委員会は、何回かの審理の後、双方に「合意案」を示し、県も私たちの抗議にもかかわらずそれを受け入れてしまった。業者は事業開始前の調査なしに事業に着手でき、「遺骨が見つかれば、半径5mの範囲を2週間、作業を停止して調査する」という内容にすぎない。重機による掘削で遺骨が見つかるはずはないし、業者が遺骨を届けなくても何のペナルティもない。(この経過については、右側カテゴリー欄の「南部土砂問題」の当時の報告に詳しいので参照されたい。)
ただ、この「合意条項」には、「事業者は、表土を剥離した範囲を順次、緑色の農業用シートで覆う」とされている。これは、風景を保護するために掘削した崖等を覆うという当然の措置だが、上の写真にもあるように、表土はすでにめくられているが、現時点で農業用シートで覆われた部分は全くない。
県は、「合意条項」違反として、業者を強く指導し、改善措置を講じさせなければならない。