防衛局が大浦湾の地盤改良工事のために、本年9月6日に立ち上げた土木工学の教授らからなる「技術検討会」の問題点については、同日のブログでも説明した。
防衛局は、第1回検討会の資料は公開したものの、議事録は長く公表してこなかったが、10月8日になって、やっとホームページで議事録を公開した。内容の半分は、事務局からの資料説明に終始し、委員らによる審議はわずかしか行われていない。
ざっと目を通しただけだが、とりあえず気になった点だけを指摘したい。
<「追加の地質調査」を求めた、日下部東工大名誉教授の鑑定書はどうなったのか?>
防衛局は、本年1月に地盤改良工事の「技術検討書」をまとめた。それをもとに安倍首相が衆議院の代表質問に対する答弁で、「一般的で施工実績が豊富な工法で地盤改良は可能と確認された」と言い切った。
しかし防衛局は、その後、県の埋立承認撤回に対して行った行政不服審査請求の審査の中で、日下部東工大名誉教授に鑑定を求めている。「確認された」のではなかったのだ。
日下部名誉教授の鑑定書は、防衛局の「技術検討書」を、「概略設計としては妥当」としたものの、追加の地質調査の必要性を指摘したものであった。
・「引き続き詳細検討が行われ、断面の修正、地盤調査・土質試験の追加の可能性も含め、『必要があれば前段階に溯って再検討を行う』ことは想定されている。」
・「詳細設計で要求される詳細調査では、必要に応じ、より密度の高い地盤調査や土質試験を実施するなどしてより精緻な解析を実施するのが有益と考えられる。」
・「必要に応じ、追加の地盤調査・土質試験が計画・実施されることも想定される。」
ところが防衛局は、この鑑定書を全く無視し、追加の地盤調査を行おうとはしていない。今回公開された「技術検討会」の議事録でも次のように記載されている。
・「(地盤調査は)本数的に一般の工事ではこれだけ多点で実施することはない。しかかりとデータの密度は担保されている。調査としてはしっかりとされている。」
・「調査箇所につきましては、結構密にやられている。十分な個所数がある。」
「やり方としては王道的で、非常に結構なことです」というような歯の浮くようなお世辞も出されている。なんのことはない。これでは、8名もの土木工学の大学教授らを動員して「技術検討会」を立ち上げたのは、日下部名誉教授の指摘を実施しないための口実づくりではないか。
<耐震基準の問題点についても議論なし>
国内の主要空港は耐震性をレベル2で検討しているにもかかわらず、辺野古新基地はレベル1で設計されていることが問題となっている。しかし、公表された検討委員会の議事録では、事務局がさらっと「レベル1」と説明したが、委員からは何の質問も出されていない。外部の「有識者」というのであれば、少なくともこの点について議論ぐらいはするべきであろう。
<優先される米軍の要望>
また9月20日のブログでは、今回の地盤改良工事の委託業務では、特記仕様書に米軍との4回もの協議や、米軍の設計基準の翻訳等が義務づけられていることを指摘した。防衛局の監督官との協議回数以上に米軍との協議を行うとされており、地盤改良工事は米軍の指揮監督下で実施される。
防衛局は、今回、公表された「技術検討会」の議事録でも、「米軍の要望として上がっている」「米軍の方は要求してきている」 などと繰り返している。委員長は、「アメリカの工兵隊かどこかの基準に書かれている値ですか?」と聞いているが、その基準の妥当性についての議論はない。「有識者」というのであれば、この米軍の基準の妥当性についても検証するのが当然であろう。
(参考)地盤改良工事検討業務の特記仕様書