今日(5月24日)は、北部訓練場ヘリパッド工事強行のための機動隊派遣の違法性を問う住民訴訟控訴審の第1回口頭弁論。高江住民の会や、宮城アキノさんら大勢の人たちが傍聴に来てくれた。
原告代表のOさんが口頭で意見陳述。母親が東村平良出身で幼い頃から毎年厚を東村の祖父母の家で過ごしたというOさんは、当時の思い出を語りながら、2016年、全国・県警から1000名もの機動隊を動員して強行されたヘリパッド工事の問題点を分かりやすく説明された。
ただ、我々が申請していた2人の証人調べは採用されず、控訴審はこれで結審、判決は8月31日(水)午後3時となった。
(口頭弁論後の報告集会)
以下、Oさんの意見陳述書を全文掲載する。
意見陳述
那覇市民のOと申します。山原・東村平良出身の母と宮古島・平良出身の父の間に「復帰」前の○年に那覇市に生まれました。幼い頃より毎年夏を東村の祖父母の家で過ごした私にとって、山・森・海が一体となり人々の暮らしと共にある山原・東村は、沖縄の「原風景」となっています。「山んはぎねー、海んはぎーん」、山が禿げてしまったら海も荒廃するという沖縄の諺です。母やその親きょうだいを通して私は、山原の森が島に生きる人間にとっていかに大切なものであるかを学びました。
県民の「命の森」である山原の東村高江周辺への米軍ヘリパッド建設は、たくさんの不正義、正統性の欠落の積み重ねの上に強行されたものです。
まず、戦後の米軍占領下で山原の広大な森林が米軍基地として接収され、戦後77年、「復帰」50年を経ても今なお米軍がジャングル戦闘訓練場として使用し続けていることの不当性は、強調してもしすぎることはありません。
米軍ヘリパッド建設は、北部訓練場の過半の土地を返還するかわりに残された部分に移設するのだと喧伝されていますが、実際は、老朽化し使い勝手の悪いヘリパッドを返すかわりに、米軍が新たに導入する航空機「MV22オスプレイ」の訓練に対応し、海・川・山をつないだ演習に都合のいい場所に、上等な発着所を、日本政府に作らせる(お金も日本持ち)というものです。沖縄県民の負担軽減ではなく負担増大です。
そして日本政府・防衛省は、オスプレイの沖縄配備計画を隠し続けてきました。ヘリパッド建設の環境アセス調査は従来の機種のみで、オスプレイ使用による環境影響は調査や評価もされずに進められました。
那覇防衛施設局(のちの沖縄防衛局)は、環境アセスの際の説明で嘘や欺瞞を重ねました。私も参加していた環境保護団体の要請の際、森林伐採による環境破壊の懸念を問いただした私たちに、防衛施設局の担当者は「工事には旧林道を使用するので、木は一本も斬りませんよ」などと大嘘を吐いたのを昨日のことのように思い出します。適当な言い逃れでその場をしのぐ、真摯さもなく不誠実で非科学的かつ非現実的な防衛施設局の数々の言動は、私たち市民の信頼を失わしめるに十分なものでした。
高江の区長さんをはじめ住民のみなさんは区の総会で反対決議を何度も上げ、住民の会をたちあげてヘリパッド建設反対の声を届けようと様々に努力を重ねていらっしゃいましたが、その声は「米軍の要望だから」とことごとく拒否され、せめて集落に直近のN4地区だけでもやめて欲しいとの区長さんの最低限の訴えも虚しく、工事が容易なN4地区は真っ先に作られてしまいました。また、住民の会の代表が数万筆の署名を持参して上京し防衛副大臣に面談する機会を得た際、これから来る住民の会は「過激派」だなどの虚偽を副大臣に吹き込んだというエピソードもあります。農家やカフェを営みそれまで市民運動等にまったく関わったこともなく、ただただ自分たちの命と暮らしを守りたい人たちのいったい何を恐れているのか、スラップ訴訟まで仕掛け、4歳の子どもまで裁判にかけようとしたことは、沖縄防衛局の歴史に残る大きな汚点となっています。
東村高江への米軍ヘリパッド建設に関して沖縄防衛局および防衛省、日本政府が犯した問題、数々の不正義をひとつひとつ挙げるときりがありませんので、この先は、私たちがこの訴訟で問うていることについて述べたいと存じます。詳細は私たちの代理人より訴状や書面にてお伝えしております。私がここで強調したいのは、2016年の米軍ヘリパッド建設強行の際に沖縄県警が公安委員会の「持ち回り決裁」という無理を通して行った他都府県への「援助要求」こそが、大規模な抗議行動を惹き起こしたという事実です。
被控訴人は、援助要求を行ったのは、大規模な抗議行動が予想され沖縄県警の人員体制では十分な警備を遂行することが困難だからだ、実際にあのように大規模な抗議行動が行われたではないか、と言いますが、それは本末転倒の主張です。もともと高江の抗議行動(座込み)は参加したい思いがあってもなかなか行けるものではなくて、那覇から車で3時間かかる奥山に住民の皆さんが交代で座り込み、そこに退職者や自営業者、仕事をやりくりしながら各地から駆けつけた人々によってなんとか維持されていたもので、平穏な抗議活動、非暴力不服従の粘り強い運動が続けられておりました。そうした状況は沖縄県警もとっくに把握しています。
要するに、防衛局の工事再開のために全国から何百人もの機動隊が派遣されると大きく報じられ、実際に県外のナンバープレートを掲げた機動隊車両が次から次へと何十台も連なって沖縄島北部に大集結するという異様な事態が先にあり、私たち県民の恐怖、そして憤りを掻き立て、抗議行動が大きくなる引き金となったのです。もとよりヘリパッド建設に反対する高江住民の皆さんへの共感の輪が広がっており、在沖米軍基地の機能強化に邁進する防衛局・日本政府への疑問や怒りが噴出しているなかで、さらに島の外からこれだけ大勢の機動隊が押し寄せてくる、「これは平成の《琉球処分》だ!」との声も各所で上りました。故郷の島を、命の森を、守らなければ、との一心で大勢の人たちが高江の森へと向かったのです。
なぜ、この2016年に沖縄県警は、自分たちの人員体制では困難だからと大規模な援助要求を行ったのでしょう。そこに沖縄の住民運動を知悉した公安・官僚組織の気配を感じるのは私の穿った見方でしょうか。いずれにせよ、大規模な全国からの機動隊の動員には「何としても建設工事を進める」という日本政府・防衛省の強い意志と住民運動弾圧の意図が反映されていることは明らかです。
公安委員会に一方的な情報を鵜呑みにさせて、十分な議論のための時間も場所も与えずに「持ち回り決裁」で援助要求にGOサインを出させたことは、警察の「民主的運営」と「政治的中立性の確保」の役目を担う公安委員会を骨抜きにして、その存在意義を根底から失わせしめました。そうして沖縄県警の「民主的運営と政治的中立性」はあえなく潰え去ってしまったのです。米軍ヘリパッド建設強行のために他都府県から派遣された機動隊のガソリン代や修繕費を支払うことの不当性かつ違法性を、私は、ここに強く訴えます。