なんとなくクラシテル

獣医という仕事をしている人間の生活の例の一。
ほとんどが(多分)しょーもない話。

2019年06月17日 | 仕事

の獣医ってのは気楽な稼業ときたもんだ~~~~。

 同業者と仕事について話すのは久しぶりなんだけど、ここまでレベルが低いとは思わなんだ。いったい、どうなっちゃってるんですかねえ??

 なぜそう思うか、話した(というか怒鳴りあった)のが、自分の持ち馬の件についてだから。ああ、競馬馬じゃありません、勿論。ただの駄馬ですけどね、なにしろ病気のデパートみたいになってる。(多分)腺疫に罹患したのが運の尽きで(これもおそらく、他馬に噛みつかれてからおかしくなってるから、うつされたと疑っている)、そこから罹患馬のうち1~5%程度がなるといわれてる、「免疫過多症候群」(と自分はかねがね呼んでいる。馬の本には「紫斑病」なんて書かれてるが、これは「症状」について示した病名で、実際の「病態生理、つまり病気の成り立ち」を指した名称ではない。馬の疾患にはこういう病名の付け方がやたら多くてー疝痛ってのが、そもそもそうですよねー従って、病名を振り回す関係者多々あれど、その病気が要するに何なのか、と説明できる人間は、獣医を含めてほとんどいない。ヤブ医者が多いわけよのう)という、レアケースにはまってしまった。で、なにかというと出血傾向の発作を起こす。紫斑病=血小板減少症なんだけど、これは一種の自己免疫性疾患で、自分の免疫が自分の血小板を攻撃して片付けてしまうもんで内出血が止まらなくなる、だけじゃなく、免疫異常があちこちに起こるので厄介だ。自分とこの馬については、どうやら急性関節炎・つまりリウマチ様の症状が出る。もうこうなると、とにかく副腎皮質ホルモン剤、すなわちステロイドを使って、免疫の過剰反応を抑え込むしかない。

 で、それについて、ケチを付けられましてね。ステロイドなんぞ使ったら、蹄葉炎になるぞ、そうしたら安楽死だぞ、と脅かされるわけよ。

 そんなこたあ分かっとるわい

 でも免疫過多症候群=紫斑病については、ステロイドを使うよりか方法がないでしょうが、と言い返したら「紫斑病ってなに?」と現役の獣医に聞かれたんですよお~~~ 。

 プロ相手に、免疫とは何ぞやからしゃべらなくちゃならんの???あんた、いったい何を勉強してんだよ!!

 
 問題点は多々ありますよね。いきなり高飛車な物言いといい、脅しつけてそのくせ、まともな対策を指示できないとこといい。しかしもっとまずいのは
1)クライアントの話をきちんと聞かない。経営で言えば、「現状」=貸借対照表だけ見て物を言ってて、カルテ、すなわち損益計算書を見てない。これじゃあ、誤診するに決まってるがな。つうか、馬の獣医ってカルテを付けてないみたいだな。それでどうやって、疾患の継続治療ができるんだ?

 今やスマホ一つで電子カルテをエクセルで作れる時代だ。歩様だって、スマホで簡単に記録できるし、忙しければ、治療内容を音声でとりあえず残しておくこともできる。なーんにもしないのが、馬の獣医らしい。こっちには奴の電子カルテがある。見せてもらえますか、の一言もなし。その場で見れるのにさ。

2)症例に対する敬意がない。これ、最大にまずいですよ。腺疫後の免疫異常、まあこの手の免疫異常症候群は当院では珍しくもないのだが、大動物ではレアでしょう。そういう珍しい症例なら、ぜひ、診させてほしい、状況を教えてほしい、というのが普通の反応だと思うんだけどね。頭ごなしに「ステロイド使うからどうこう」って全然ピントが外れてるんだよ。

 こんな調子で、あちこちでクライアントを脅しつけてえばってて、なのに全然治せないから、なめられるんだよね。

 実際、自分の馬については、馬の獣医の話を聞くと、必ず酷いことになる、のに気が付いたもんだから、関わらせないぞ、と決めて自分で治療することにしたわけだけど。頼みもせんのに勝手にしゃしゃり出てきて、なんなんだ?

 でですね、その獣医と怒鳴りあってて、あーそういえば、と思いついたことがある。「ステロイドを使うと、馬は蹄葉炎になる」のはなぜか??その理由が分かりました。

 これはね、蹄鉄と装蹄師のせいなのだ。

 FBって情報の宝庫なんだけど、グループというのがある。馬の蹄のグループというのに誘われて入ってみたら(もちろん英語のグループです)、世界中の馬の飼主が自分の馬の蹄がおかしい、どうしよう、どうすれば、と悲鳴を上げているのにびっくりした。投稿写真もひどいものが多い。なぜだ?というか、もし、馬がこうまで蹄病にかかるのなら、野生馬なんか、とっくに蹄病で全滅してるでしょ。しかし、そうは全くなってないじゃない。なのに、丁寧に世話されてるはずの家畜馬がこのありさま、どうなってるんだ?

 一方、蹄疾患の病名も訳分らんものばかり。挫跖・裂蹄・砂のぼり・蟻道、全部「状況」病名なんですよ。蹄葉炎も結局は状況。その原因なんか、全然分かってない、らしい。色々言われてますけど、そうかあ???と思う事ばかりでね。

 この件は本当に悩んで、めちゃくちゃ考えた。蹄病学会に入ってみようかと思ったこともある。でも、なんかどこかピントが外れてる感じがしてね。たどり着いたのが、人医の皮膚科。蹄=爪なんだから、そっちからヒントが得られないかと思ったわけだ。で、今の結論は、

蹄病=爪水虫=白癬菌感染症

 ということ。爪水虫は人間でも難治性疾患なのだが、どうやって感染するのか?「爪切り」でうつされるんだそうですよ。家族で爪切りを共有するな、が爪水虫の蔓延を防止する対策の重要な方法なのだ。

 装蹄師の皆さん、道具を一回でも消毒したことありますか?蹄ごとに消毒(しかも、真菌を殺菌するような消毒剤ですよ)してますか?

 ああ、バカの一つ覚えみたいに「パコマ」って言わないでね。パコマはただの逆性石鹸、真菌には全く無効でございますから。そんなことも知らずにパコマ振りかけて「消毒した」ってパコマ感受性の細菌がいなくなったら、逆に真菌が増えやすくなるだけ、なんですよね。

 要するに、馬どもは、装蹄師のヤスリや鎌で蹄に白癬菌をすり込まれちゃってるのだ。シイタケの種菌を原木に植え込むようなもの、あとは環境次第でいくらでも白癬菌がはびこる。白線病や蟻道に罹患する部位は、おそらく、蹄の中でも一番柔らかくて感染しやすい部分なんでしょう。で、真菌は同心円状に広がる傾向があるから、その調子で上へ上へ感染してゆく。そこに追加で別の細菌が入り込む。わやくちゃになっちゃうんでしょうね。装蹄していると、クギ穴からどんどん細菌が入り込むから、ますます話がややこしくなる。蹄鉄を打つ際には蹄を焼いてしまうのだが、その結果、蹄が変性してさらに感染しやすい土壌をつくってしまうし。

 ステロイドを使うと、免疫が抑制される、その結果不顕性感染していた蹄の感染が、一気に憎悪する。で、蹄葉炎に進行してしまう、というわけだ。筋が通ってると思いませんか?

 これは、人医界で言うと、抗がん剤のような免疫抑制の強い薬剤を使うと、口腔内の感染症や虫歯が一気に悪化する、仕組みと共通している。人間の体内で一番汚いのが口腔で、それが家畜馬では蹄、ということなんですね。そりゃそうなるよね、ど汚い、臭い厩舎の床に1日中立ってなくちゃならない日の多さ、馬場だってど汚いのは変わらないしね。

 だから、旧来「挫跖」と言われてるのも、結局はそうした蹄感染症が、なにかの拍子で部分的に憎悪して内出血や化膿巣になる、という事なんだと思う。白線病・砂のぼり・蟻道なんてのは爪水虫の症状、蹄葉炎は、蹄感染症が最悪状況にさせられたこと、となる。それが削蹄や装蹄のせいだとなると、皮肉ですなあ。やらなくちゃならない、という事になってしまってるんだもの。

コメント
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