なんとなくクラシテル

獣医という仕事をしている人間の生活の例の一。
ほとんどが(多分)しょーもない話。

ウサギ

2024年04月16日 | 仕事

の話の続き。

 ウサギの動物としての特徴なのだけど、こんな感じ。

1.交尾排卵だから、交尾すりゃまず、100%妊娠してしまいます。だからポコポコ増える。ついでに言うと、メスはもうしょっちゅう発情を繰り返している。これは、メスウサギの寿命の短さと直結している。後述しますが。

2.野生状態でも、家畜としても寿命は短い。野ウサギの寿命ってせいぜい3年位なのでは。で、みんなの食糧源になってる。家畜としてもそう。だから、どうも、「長生き」を前提とした体構造になってないフシがある。ウサギについては、個々の命の価値なんか極めて薄くて、その代わり、旺盛な繁殖力でもって「種族」を維持する、方にたけてる。この辺は食物連鎖低位のげっ歯類グループ等々は総じてそんな感じなんだけども、ウサギの場合、寿命的なものがハンパに長めだから、ペット扱いした時に面倒が起こりやすいのだ。ハムスターなんかは寿命たってせいぜい3年あるかないか、だから割り切れる、らしいんですが。

3.そのせいもあるかと思うんだけど、非常に地頭が悪い。多分名前も覚えないんじゃないかな。そりゃそうで、なまじ頭がいいと、自分の仲間がある日急にいなくなった(野生だと、多分食われてる、家畜でも肉になったり毛皮になったり)、一々気にしていたら、ノイローゼで死んじゃいますよ。そういうのに感傷を持たない程度にぼーっとしてるから、生き延びられるんですよね、おそらく。

4.頭の悪さが災いしているんだか、病気をまず、飼い主に分からせない。本人も分かってないんじゃないか?とすら思わせられるんですが。で、治療すると急に調子よくなった風に見せたり。要は「just now」な生き物で、これが非常に治療を混乱させる原因になるし、飼主を振り回す元凶にもなる。

 今まで診たケース中、一番大変だった例。メスウサギで、跛行してる、と飼主は言う。レントゲンを撮って分かったことは「子宮蓄膿症」。全然違うやん。しかーし、飼主は全く納得しないのだ。跛行と腹部の異常が全然繋がらないから。開腹手術してみたら(これを納得してもらうのに大苦労しましたよ~~~)、なーんと、子宮破裂を起こしていた。なのに、主症状が「跛行」じゃあねえ。跛行=腹痛の意味だったんでしょうけど、飼主が理解できるはずもない。それどころか、切除した現物を見ても納得して下さらなかった。ホント、一歩間違えば、こっちも訴訟を起こされた可能性があったんですよ。

続きます。

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ウサギ

2024年04月16日 | 仕事

の飼主がなんか起こした訴訟で、動物病院側が60万以上も支払わされる、という判決になったみたい。もう、ウサギの新規患者はお断りしようか、改めて真剣に考えてしまう。今までも、もう何度となくウサギを診療対象から外そうか、と思ったことがあるんですけど。

 動物診療って、要はあくまで「サービス業」でしてね。医療じゃありません。だから、嫌になったら診療しません、でオシマイにできる、そういう権利があります。国税庁でも思いっきり「サービス業」に区分されてるし。当院での診療トラブル、かなり少ない方だと思うのだが、しかしウサギは当院でもとにかくトラブルの確率が高い動物で、もう哺乳類中最強難しい、と常々感じているし。

 なぜ、そうなのか、解説してみようと思います。凄く長くなるから、数回に分けます。これ読んでから、ウサギを飼うかどうか決めてほしい。この判決が出た以上、ウサギを診ますなんて酔狂な動物病院はほぼ絶滅すると思うし。まあ、覚悟して飼うしかないんですよ。

 ウサギって、一見飼いやすそうに見えるし、買いやすい。学校で飼育されてるから、なんか子供でも飼えそうだし、世話も楽そうだし、値段も安いし、可愛い感じがするし。

 これは事実ですが、子供でも飼いやすいというのは「家畜」なら、という条件付きです。ペットじゃない。

 ウサギの家畜化は、そもそもが食用&毛皮用。子供でも扱えるサイズ感・簡単に締められる・簡単にぼこぼこ増える・テキトーにその辺の草だの野菜くずだのあてがっときゃむくむく太る、あと、怖い伝染病があまりない(0ではない。これは後述)、すーべーてー「家畜」として有用な特性なんだけど、「ペット」じゃない。それをペット扱いしてしまっているのが、そもそもの大間違いなんですよね。

 学生の頃、エクアドルを旅行した時に、結構人のうちにお邪魔することがあって、ある田舎のおうちでモルモット料理を食べたことがある。結構旨いんです。そこの人に「日本じゃ。クイ(モルモットの事)はどうしてるんだ?」と聞かれて「ペットで可愛がってますよ」と答えたら、大笑いされちゃって。そういう事ですよ。エクアドルのバスで、ニワトリを生きたままも紐で足を縛って逆さにぶら下げて運んでる人を結構見かけたのだけど、暑い国で冷蔵庫もない、一番便利かつ安全な肉の運搬法が「生きたまま」という事ね。生きてる間は絶対に腐らないもの。で、家で締める。こんなのどこでもついこないだまでやってた事で、ウサギもこういう扱われ方をする家畜に過ぎない。

続きます。

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