なんとなくクラシテル

獣医という仕事をしている人間の生活の例の一。
ほとんどが(多分)しょーもない話。

装蹄師さん

2019年06月20日 | 仕事

の仕事ってしかし典型的な「3K」なんですよね。キツイ・汚い・危険という。設備も規模もバラエティがありすぎる乗馬クラブや個人宅とかで鍛冶仕事をする、というだけで大変だと思うんだけど、相手は人間じゃなくて、馬で、どの馬もおとなしく足を挙げてくれるわけではない。下手をすれば、蹴り倒されて大怪我、も十分あり得る。女性もいらっしゃるようだが、基本的には男性じゃないと続かない仕事のような気がする。鍛冶仕事って力仕事の極みだもん。

 で、装蹄師の資格が国家資格じゃなくなった、というのもつらいものがある。民間の資格になっちゃって、まあ、今でも認定試験はあるけれど、どうしても格が一段落ちるし。

 結果、装蹄師さんは人数が増えない。どんどん減ってしまって、一人が扱う馬の数が増えまくる。定期的に爪切って装蹄して、だけならいいが、しょっちゅう呼び出されちゃやれ落鉄だ、蹄がおかしい、等々、一日中駆けずり回っている人が多そうなのだ。で、クライアントにあーだこーだ文句を言われたり。問題の解決法として、蹄に孔を開ける・蹄を削る・切る、という、「蹄を傷める」方向しかできないし。装蹄師には、蹄病を根本的にどうにかする、手段がない、わけ。まずい部分を削り取るだけが対応策となってしまって。

 中には、「装蹄の仕方一つで跛行が改善する」と言ってる人もいる、確かにそれはあると思う、が、忘れがちなのは「蹄は毎日変化する」こと。じりじり伸びるから、今日ベストだと思っても、10日もたつともう変わってきちゃう。その点が、例えば、ちょっとの調整でべらぼうに変わる、人の歯科治療と異なる。

 蹄の適切な状況とはどうあるべきなのか、も、実は混乱している。簡単に言うと「裸蹄と装蹄では、蹄のあり方が変わってしまう」こと。装蹄を前提にした仕事をしている装蹄師が「裸蹄で過ごさせたいから」という依頼を受けると、とにかく削る、けど、それが適切なのか、が分からずやっているようだ。

 これについては、日本では全く勉強できないみたいなので、海外で勉強できればいいんだろうけど、英語ができる人がほとんどいなさそうだし。

 でねえ、自分的には、結局、どんな切り方しても、健康な蹄になるなら何でもいいわ、となってしまいそうになっちゃうんだ。ところが、健康な蹄が、プロがかかわった途端に不健康になる、というジレンマ。人数が少ない一人当たりが関わる馬の数が増える爪水虫感染が全国レベルで広がってしまう、ということでもある。まいりましたね・・・・・・。

 前回書いたように、装蹄や削蹄の仕事のせいで蹄が感染を起こす、となると、じゃあどうやって対策を打てばよいのやら、となる。ヤスリも鎌も、蹄鉄もクギも鉄製、つまり錆びる。となると、蹄一つ作業するたびに道具を消毒するというのは、全く実用的でない。錆びちゃうし、道具が乾くまでは次の蹄に取り掛かれず、作業時間が余計にかかるし。

 となると、これも人間の水虫感染防止策とリンクするのだけど、削蹄・装蹄し終わった蹄を、その直後に徹底的に消毒する、というのがまず大事じゃないかと思うのだが。


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