短期記憶として一度に覚えられるものは、ほとんどの人が「異なる4~7個」のものだけだそうです。この限界を超えるには、「チャンキング」と呼ばれる、かたまりで覚える記憶テクニックを使うといいようです。いくつかのアイテムをグループ化することで、よりたくさんのものを覚えることができるようになります。
チャンキングをする時には、一見は何の関係もないようなバラバラの情報に、何か意味あるもの、つまり「覚えやすくなるようなもの」を追加します。例えば、「トマト、イチジク、レタス、オレンジ、リンゴ」というような買い物リストを覚えなければならない場合は、その頭文字を取って「トイレ、檻(オリ)」という風に、バラバラに覚えるよりももっと覚えやすいかたちに変えます。いわゆる語呂合わせです。
電話番号(携帯電話が登場する前は特に)や歴史の年号を、語呂合わせで覚えたことがある人も多いのではないでしょうか。このように、記憶したい対象をグループ化したり意味付けをしたりするのは、すでにチャンキングのテクニックを使っているといえます。
最近、米誌「The Atlantic」では、神経科学者Daniel Bor氏の著書『The Ravenous Brain』の中に登場するチャンキングの素晴らしさに注目していました。ある研究では、7桁の数字までしか覚えられなかったボランティアの大学院生が、20カ月チャンキングの練習をした後では、80桁の数字まで覚えられるようになったとあります。そのボランティア院生は短距離走の選手だったので、走るタイムが3分49秒2だとしたら、3492という数字をグループにして覚えるようにしました。
数字や文字列のように、覚えにくいものに意味を与えるというやり方は、ライフハッカーでも以前紹介したように、全米記憶力チャンピオンが使っている方法でもあります。
また、チャンキングは覚えるためだけのテクニックではありません。Borさんは「このようなパターン認識は人間の創造力の源でもある」と言っています。人間は自然とパターンを作ったり、見つけ出したりして、異なるものを一つにつなげています。チャンキングのようなパターン認識の練習をすると、クリエイティブな力が養われ、脳が活性化されます。覚えたいもののグループに、何らかのつながりを見つけようとしたり、意味あるものにしようとしたりすることが大事なのです。
意識とチャンキングは、日々の生活で起きる、ありふれていて意味のない独立した出来事を数えきれないほどの点でつなぎ合わせ、より強力な結びつきを与えます。ポジティブな反応の繰り返しにより、新しいつながりを見つけることがどんどん簡単になります。どうすればうまくいくようになるか理解する能力も発達します。物事の仕組みやメカニズムに対して、おどろくほど鋭敏な洞察力を身につけることになります。同時に、バラバラのデータから分かりやすい構造を見つけ出すような方法を使わなくても、より効果的に知的に記憶することができるようになります。
つまり、チャンキングという記憶するテクニックを使うことによって、記憶力だけでなく、脳の能力自体を高めることになり、結果的にテクニックを使わずとも基本的な記憶力が良くなっていくということです。一時的に覚えたいことがある人も、長い目で見た記憶力を伸ばしたい人も、試してみる価値がありそうです。
Using Pattern Recognition to Enhance Memory and Creativity | The Atlantic
Melanie Pinola(原文/訳:的野裕子)
Photo by Thinkstock/Getty Images.
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