例えば英単語の意味を問われて答えられないとき、諸君は「忘れた」などと答えるだろう。
そして正解を聞いて、「あぁそうだった。そういう意味だったなぁ」と言う。
覚えてるじゃないか。
「そういう意味だった」と言えるということは、忘れてなどいないではないか。それは「思い出せなかった」だけなのだ。
見たもの・聞いたことは、潜在的にはすべて記憶の中にあるという。「忘れた」とは、つまり、「思い出せない」状態なのである。
このことを理解せずに勉強をすすめることは、サッカーの試合に向けて野球のバットを素振りするがごとき行為である。効果はない。
「覚える」ことと「思い出す」ことはまったく別物である。
「思い出す」ために必要なのは、覚える際に、思い出しやすいよう情報を加工した上でその情報を脳にインプットすることだ。
覚えられない、記憶力が悪いと考えている状態は、単に覚え方が悪いだけである。
逆に言えば、覚え方に工夫を施せば、記憶力は格段に向上する。驚異的にと表現しても過言ではないだろう。
記憶の技術とは、修行を積まなければできないような難行や苦行ではない。立ち位置をほんの少し変えるだけで大きく視野が開けるように、ほんの少しだけ視点を変化させることによって大きな効果があらわれる、そんな取り組みなのである。