世界一周タビスト、かじえいせいの『旅が人生の大切なことを教えてくれた』 

世界一周、2度の離婚、事業の失敗、大地震を乗り越え、コロナ禍でもしぶとく生き抜く『老春時代』の処世術

寝息

2018年12月03日 | 100の力
師走にしては、

外はまるで春先のような暖かい雨が降っている。



雨に濡れた山茶花がひときわ美しい。






ベッドの上のトップライトに打ち付ける雨の音が

ショパンを奏でる。


彼女は、ボクの胸に顔をうずめながら言う。


「あなたといると、とても安心できるわ。

いつもこうして大きな胸で私を包んでくるから」


「うん、そうだよ」

ボクは彼女の柔らかい胸を強く引き寄せた。


「でもね、」

彼女も、ボクにしっかりとしがみついたまま、

何か言いあぐねている。


ボクは彼女の長い髪を指で弄びながら

次の言葉を待った。


彼女はためらいがちに言葉をつないだ。

「ときどき不安になるの」


「どうして?」

ボクは聞き返す。


「だって、いついなくなるかわからないんだもの。

あなたは、タビストでしょ」


「ははは、だったら」

とボクは笑って答えた。


「ボクがどこへ行こうが、

ついてくればいいじゃない。

たとえ世界の果てまでだって、

君を連れていくよ。


そしたらいつも一緒にいれるじゃないか。

だから、安心していいんだよ。

いつだって一緒だよ」


いつのまにか彼女は

ボクの腕の中で甘い寝息を立てていた。


「なんだ、聞いていないのか」


ボクは彼女の髪をやさしく撫で、

そっとおでこにキスをした。


「ずっと君といるよ」