http://sp.yomiuri.co.jp/komachi/plus/spice/20161018-OYT8T50050.html2016年10月18日
電通の過労死、同情しているように見えるけれど…
大手広告会社「電通」で24歳(当時)の女性新入社員が自殺したのは、長時間勤務による過重労働が原因だとして労災が認められました。
これに対して、ネットなどでは多くの人が発言をしています。中には「100時間程度で自殺するなんて情けない」という大学教授の発言が炎上する騒ぎも起こりました。この発言は論外ですが、そのほかにも「おやっ?」と思う発言があり、いくつかのパターンに分けてみました。
(1)長時間労働自慢派
100時間ぐらいなんだ。オレはもっと残業していたぞ(50代以上に多い。炎上につながりやすい)
(2)残業じゃなくて、パワハラや環境が問題派
原因は長時間労働ではなく、パワハラのある環境だ。上司や同僚などと励まし合ってやる長時間労働だったらいいよね。みんなで励まし合って、がんばって、良い経験だよね。
(3)好きで長時間労働派
自分で望んだ長時間と人から強制された長時間は違う。好きで働く分には長時間でもいい。そもそも時間を限られたくない。
(4)若いうちは時間で奉仕しろ派
若く経験のない時の100時間を積み重ねて、いずれは成果の出せる時がくる(50代以上に多い)
(5)長時間労働習慣化派
ウチの会社も普通にそれぐらい働いているけれど……(長時間労働が常態化しているパターン。コンサル、ITなどの30代ぐらいに多い意見)
みなさん、この悲劇には深い哀悼の意を表されています。しかし、ちょっと違うんじゃないかと思った意見を集めてみました。つまり、本質的な問題がフォーカスされていないのです。
これらのパターンの人たちは「そもそも長時間労働は悪くない」「長時間労働は当たり前」と思っているのですね。
炎上しがちなのは、50代以上で長時間労働の経験があり、それが成功体験になっている人。こういう方たちは、炎上の結果、謝罪、仕事にも影響が出るなど、大きなリスクがあるので、リスクを考えて発言されたほうがいいかと思います。
いつまで続く「長時間労働当たり前」の“洗脳”
そもそも「長時間労働は生産性が高い」「当たり前」「成長を生む」という考え方自体が、本当に良いのでしょうか。その本質的な議論をしないと、このような悲劇は防げないのではと思うのです。
日本人は勤勉であることを美徳とする。そう言われています。だいたいこの過労死を報道するマスコミ自体、長時間労働が美徳。「24時間稼働できないのはダメなマスコミ人」「親の葬式には行けないと思え」「自分の結婚式に出られないのが武勇伝」なんていう話をつい先日、業界で働く女性たちに聞いたばかりです。
特に「若いときは長時間労働でいい」という考え方は、一見まともに見えて、たいへん危険だとも思います。若いときに長時間を叩たたき込まれた人は、その後も、時代が変わっても「長時間労働は良い事だ。仕事にすべてを捧ささげるのが美徳だ」と信じ続けてしまうからです。つまり若いときに「洗脳」されてしまっている。
後から、例えば子どもができたりして、はじめて「なんとしても定時に帰りたい」と思っても、そこに罪悪感を覚えてしまうのです。そんな女性は多いです。
小田嶋隆さんは「カルト宗教の信者をブラック企業の社員に置き換えても、そんなにかけ離れた話ではない」と長時間労働を自慢する風潮を揶揄やゆしています。
人間の集中力にはもちろん限界がある。長時間労働経験者は「目の前のものを打ち返すのに精一杯」と言います。そんな状態で仕事をしていても本当に「成長」が約束されているのでしょうか? 逆に「思考停止」となり、「洗脳」されやすい状態になってしまうように思えます。
私が企業で若手社員向けに講演をすると「今からライフイベントを含むキャリアなんて考えられない」と反発する女性がいました。彼女は先のことは考えないで目の前の仕事に集中したい。自分が仕事をしながら、ほかのこと――例えば結婚や子育てをすること――が想像できないのですね。つまり「思考停止」。彼女は25歳。自殺した女性より1歳上です。
違う25歳もいました。「今、仕事以外のことも考えて良いのですね」とほっとしたようにつぶやいていました。彼女はきっと上司から「今は仕事以外のことは考えるな」と言われているのかもしれない。
「会社があなたの人生の最優先課題だから」という洗脳は、男性にも苦しいけれど女性にはもっと苦しい。なぜなら頭の中にはすでに「結婚したり、子育てしたりする未来の自分」がいる人が多いから。だから「客観的にみてどうなの? この状況……」とふと、“洗脳状態”から覚めたりする。男性はなかなか覚めない。
「36協定」、会社側もコストを考えて
小町でも「過労死」でひくと、いろいろなトピが出てきます。
中でも見逃せないのは「過労死予備軍」さんからのトピ(「話が通じない」)。新しい社長になってから、彼が仕事のことをあまりわかっていないせいで、無理難題をふっかけられる。
これは危機です。
「しかし二代目はすぐ提出という仕事を無理矢理ねじこんできます。私がその仕事をやるのは良いが、担当する仕事が間に合わなくなるので、助っ人を頼んで欲しいと言っても『でもあなたの仕事の締切は3日後。まだ日数あるじゃないか』と言います」
そんなわけで「過労死予備軍」さんは1日16時間働いているそうです。16時間? 8時間の2倍? もし5時が定時としたら真夜中まで働いている?
仮に1日の残業が8時間なら、10日もやれば「過労死ライン」とされる「月80時間」を軽く超えてしまいますよ。
「こういう人はどのように説明したらわかってくれるのでしょうか?」とトピ主さんは言っていますが、まずは御社の「36協定の特別条項」をチェックしましょう。特別条項は労使が合意すれば、何時間でも残業できることになっています。しかし最近は80時間以上を設定している企業には厳しくなっています。
もし、特別条項の時間以上の残業をさせていたら違反ですから、労働基準監督署がきたらたいへんです。そのあたりのことをまず伝えましょう。
「エクセルで時間管理表を作って説明する」というレスもありました。しかし、同じようにやっても、「この手の人たちは、部下の負荷を把握できておらず、『忙しくても人を増やさずに乗り切った俺って凄すごくない?!』とか考える人たちなので、永遠に平行線ですよ」など、全く理解されなかったというレスもありました。
経営者だったら「労務管理」をきちんとするのは仕事の重要なところであるはず。「社員がちゃんと仕事をしているか」だけでなく、「ちゃんと休んでいるか」「ちゃんと健康で働いているか」「やめそうじゃないか?」――これも重要なポイントだと思います。
先日あるシンポジウムで「リプレイスメントコスト」という言葉が出てきました。それは、もし社員が「残業が多すぎる。もう無理、疲れた」って辞めてしまった場合かかるお金のこと。その人が仕事を覚えるまでに費やしたコスト、新しい人を募集するコスト、そして新人に仕事を仕込むコスト。結構膨大なコストがかかるんですね。
それを考えたら、『社員は無限に働くもの』と扱うのは、かえって会社の損になるのです。
いろいろやってみてダメだったら、労基署に「チクる」というのもあるかと思います。
そして、みなさん、知っていますか? 11月は国が定めた「過労死等防止啓発月間」なんです。全国29か所の会場でシンポジウムもあるそうですよ。ぜひこの問題に関心を持ってくださいね。
感想;
長時間残業の問題
上司のパワハラの問題
会社のガバナンス欠如
サービス残業の強要もあったようです。
自殺した女性を周りが、会社が、社会がさせられなかったのがとても残念です。
開き直ると、困るのは会社ですから。
サービス残業させていたとか。
ブラック企業としてのレッテルが貼られてしまいますから。
開き直ることを事前に練習しておくことが必要なのかもしれません。
電通の過労死、同情しているように見えるけれど…
大手広告会社「電通」で24歳(当時)の女性新入社員が自殺したのは、長時間勤務による過重労働が原因だとして労災が認められました。
これに対して、ネットなどでは多くの人が発言をしています。中には「100時間程度で自殺するなんて情けない」という大学教授の発言が炎上する騒ぎも起こりました。この発言は論外ですが、そのほかにも「おやっ?」と思う発言があり、いくつかのパターンに分けてみました。
(1)長時間労働自慢派
100時間ぐらいなんだ。オレはもっと残業していたぞ(50代以上に多い。炎上につながりやすい)
(2)残業じゃなくて、パワハラや環境が問題派
原因は長時間労働ではなく、パワハラのある環境だ。上司や同僚などと励まし合ってやる長時間労働だったらいいよね。みんなで励まし合って、がんばって、良い経験だよね。
(3)好きで長時間労働派
自分で望んだ長時間と人から強制された長時間は違う。好きで働く分には長時間でもいい。そもそも時間を限られたくない。
(4)若いうちは時間で奉仕しろ派
若く経験のない時の100時間を積み重ねて、いずれは成果の出せる時がくる(50代以上に多い)
(5)長時間労働習慣化派
ウチの会社も普通にそれぐらい働いているけれど……(長時間労働が常態化しているパターン。コンサル、ITなどの30代ぐらいに多い意見)
みなさん、この悲劇には深い哀悼の意を表されています。しかし、ちょっと違うんじゃないかと思った意見を集めてみました。つまり、本質的な問題がフォーカスされていないのです。
これらのパターンの人たちは「そもそも長時間労働は悪くない」「長時間労働は当たり前」と思っているのですね。
炎上しがちなのは、50代以上で長時間労働の経験があり、それが成功体験になっている人。こういう方たちは、炎上の結果、謝罪、仕事にも影響が出るなど、大きなリスクがあるので、リスクを考えて発言されたほうがいいかと思います。
いつまで続く「長時間労働当たり前」の“洗脳”
そもそも「長時間労働は生産性が高い」「当たり前」「成長を生む」という考え方自体が、本当に良いのでしょうか。その本質的な議論をしないと、このような悲劇は防げないのではと思うのです。
日本人は勤勉であることを美徳とする。そう言われています。だいたいこの過労死を報道するマスコミ自体、長時間労働が美徳。「24時間稼働できないのはダメなマスコミ人」「親の葬式には行けないと思え」「自分の結婚式に出られないのが武勇伝」なんていう話をつい先日、業界で働く女性たちに聞いたばかりです。
特に「若いときは長時間労働でいい」という考え方は、一見まともに見えて、たいへん危険だとも思います。若いときに長時間を叩たたき込まれた人は、その後も、時代が変わっても「長時間労働は良い事だ。仕事にすべてを捧ささげるのが美徳だ」と信じ続けてしまうからです。つまり若いときに「洗脳」されてしまっている。
後から、例えば子どもができたりして、はじめて「なんとしても定時に帰りたい」と思っても、そこに罪悪感を覚えてしまうのです。そんな女性は多いです。
小田嶋隆さんは「カルト宗教の信者をブラック企業の社員に置き換えても、そんなにかけ離れた話ではない」と長時間労働を自慢する風潮を揶揄やゆしています。
人間の集中力にはもちろん限界がある。長時間労働経験者は「目の前のものを打ち返すのに精一杯」と言います。そんな状態で仕事をしていても本当に「成長」が約束されているのでしょうか? 逆に「思考停止」となり、「洗脳」されやすい状態になってしまうように思えます。
私が企業で若手社員向けに講演をすると「今からライフイベントを含むキャリアなんて考えられない」と反発する女性がいました。彼女は先のことは考えないで目の前の仕事に集中したい。自分が仕事をしながら、ほかのこと――例えば結婚や子育てをすること――が想像できないのですね。つまり「思考停止」。彼女は25歳。自殺した女性より1歳上です。
違う25歳もいました。「今、仕事以外のことも考えて良いのですね」とほっとしたようにつぶやいていました。彼女はきっと上司から「今は仕事以外のことは考えるな」と言われているのかもしれない。
「会社があなたの人生の最優先課題だから」という洗脳は、男性にも苦しいけれど女性にはもっと苦しい。なぜなら頭の中にはすでに「結婚したり、子育てしたりする未来の自分」がいる人が多いから。だから「客観的にみてどうなの? この状況……」とふと、“洗脳状態”から覚めたりする。男性はなかなか覚めない。
「36協定」、会社側もコストを考えて
小町でも「過労死」でひくと、いろいろなトピが出てきます。
中でも見逃せないのは「過労死予備軍」さんからのトピ(「話が通じない」)。新しい社長になってから、彼が仕事のことをあまりわかっていないせいで、無理難題をふっかけられる。
これは危機です。
「しかし二代目はすぐ提出という仕事を無理矢理ねじこんできます。私がその仕事をやるのは良いが、担当する仕事が間に合わなくなるので、助っ人を頼んで欲しいと言っても『でもあなたの仕事の締切は3日後。まだ日数あるじゃないか』と言います」
そんなわけで「過労死予備軍」さんは1日16時間働いているそうです。16時間? 8時間の2倍? もし5時が定時としたら真夜中まで働いている?
仮に1日の残業が8時間なら、10日もやれば「過労死ライン」とされる「月80時間」を軽く超えてしまいますよ。
「こういう人はどのように説明したらわかってくれるのでしょうか?」とトピ主さんは言っていますが、まずは御社の「36協定の特別条項」をチェックしましょう。特別条項は労使が合意すれば、何時間でも残業できることになっています。しかし最近は80時間以上を設定している企業には厳しくなっています。
もし、特別条項の時間以上の残業をさせていたら違反ですから、労働基準監督署がきたらたいへんです。そのあたりのことをまず伝えましょう。
「エクセルで時間管理表を作って説明する」というレスもありました。しかし、同じようにやっても、「この手の人たちは、部下の負荷を把握できておらず、『忙しくても人を増やさずに乗り切った俺って凄すごくない?!』とか考える人たちなので、永遠に平行線ですよ」など、全く理解されなかったというレスもありました。
経営者だったら「労務管理」をきちんとするのは仕事の重要なところであるはず。「社員がちゃんと仕事をしているか」だけでなく、「ちゃんと休んでいるか」「ちゃんと健康で働いているか」「やめそうじゃないか?」――これも重要なポイントだと思います。
先日あるシンポジウムで「リプレイスメントコスト」という言葉が出てきました。それは、もし社員が「残業が多すぎる。もう無理、疲れた」って辞めてしまった場合かかるお金のこと。その人が仕事を覚えるまでに費やしたコスト、新しい人を募集するコスト、そして新人に仕事を仕込むコスト。結構膨大なコストがかかるんですね。
それを考えたら、『社員は無限に働くもの』と扱うのは、かえって会社の損になるのです。
いろいろやってみてダメだったら、労基署に「チクる」というのもあるかと思います。
そして、みなさん、知っていますか? 11月は国が定めた「過労死等防止啓発月間」なんです。全国29か所の会場でシンポジウムもあるそうですよ。ぜひこの問題に関心を持ってくださいね。
感想;
長時間残業の問題
上司のパワハラの問題
会社のガバナンス欠如
サービス残業の強要もあったようです。
自殺した女性を周りが、会社が、社会がさせられなかったのがとても残念です。
開き直ると、困るのは会社ですから。
サービス残業させていたとか。
ブラック企業としてのレッテルが貼られてしまいますから。
開き直ることを事前に練習しておくことが必要なのかもしれません。