英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

NHK『Q.E.D. 証明終了』 第8回「罪と罰」

2009-03-01 21:14:36 | ドラマ・映画
 以前、『キイナ 不可能犯罪捜査官』で、『Q.E.D. 証明終了』がおもしろいとちらりと書きました。
 この『Q.E.D. 証明終了』ですが、最初、番組案内を見たときは、コメディタッチの軽い推理モノだと思いました。でも、実際見てみると、推理もかっちりしていて、その他に主人公二人の心のふれあいなどもきっちり描かれていて、非常に面白い。毎回ごとに推理以外のテーマも違っていて、それが、想(中村蒼)の冬の心の雪融けであったり、2時間サスペンスおたくの熱い想いだったり、青年の夢だったり、なかなか意欲的で、バラエティに富んでいる。

 今回(2月26日放送)は、演出トリックと水原警部(石黒賢)と娘・加奈(高橋愛)と想(中村蒼)の相互信頼が重要ポイントだった。

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【あらすじ】(番組ホームページより)
 
 可奈(高橋愛)は、期末テストを前にしても勉強する気がのらない。想(中村蒼)に喫茶店でスウィーツを食べようと誘う。そんなふたりを苦々しく見ていたのは、大学院生の千田川邦彦(北条隆博)。学費を稼ぐためにバイトに明け暮れても生活に困っている。「優秀な俺が、なんでこんなに金に困っているんだ」と不公平感を募らせていた。
 一方、水原警部(石黒賢)は、5件目の連続窃盗事件の捜査にあたっていた。被害者は、大学院生・千田川のアパート。犯行の手口は連続窃盗犯と同じだった。だがそれは、近所で連続窃盗事件が起きているのに便乗して完全犯行を試みようとする、千田川によるものだった。千田川が強盗を装って自分のアパートに忍び込み、被害者として名乗り出て、その後の犯行をうまくやろうとする計画だった。
 ところが数日後、千田川が盗みに入った家では、老人がすでに殺されていた。千田川は、引き出しの金を盗んで逃げる。水原警部(石黒賢)は、殺人の容疑者として千田川を追い詰めていくが、立件するには決定的な証拠がない。可奈と一緒に千田川に呼び出された想は、何気なく聞いた千田川の言葉から、一気に事件を解決する。
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 まず、このドラマのメーンである推理。

★水原警部の推理
・強盗殺人事件の現場で、千田川が現場に来ていて、「なにかやったんですか」と問いかける。この言葉に水原警部は違和感を感じる。

・千田川が自作自演で被害者を装った件に関して、他の連続窃盗事件とちがい金があるとは思えない大学院生を選んだのは妙だ。

・今までと違い、通帳やカードには手をつけていないのは変。

・事件後、千田川が一件のローンの返済をしている。金の入手手段を追及。

・殺人後、部屋を物色したと考えられるが、千田川の証言「叫び声を聞いたので、庭に入ると、犯人が逃げていくところだった」に不整合がある。(この時点で、追いつめられた千田川は、実は犯行時に付近にいたことを白状している)

・千田川といる時、わざと部下同士を衝突させ悲鳴を上げさせ、千田川の反応を試す。千田川は何の反応もしない。そのことで、千田川に「悲鳴を聞いても関心を示さないのですね」と追及。

 なかなか鋭い。正直言って、想の出番はなくてもいいのではないでしょうか?

 しかし、千田川の小細工(反抗道具を近所のニートの家に隠す)により、捜査陣はそのニートが犯人であると確定しようとするが、水原警部だけは反対。部下の笹塚刑事が想に手を貸すように頼む。

★想の推理
・庭には被害者とお手伝いさんの足跡と犯人の足跡しか残っていない。しかし、千田川は悲鳴を聞いて庭に入ったと言う。それが本当なら、わざわざ窃盗犯と同じ
26センチの靴を履いて庭に入ったことになると追及。

・泥棒したことは認めるが、殺人はしていないと言う千田川。被害者をサンタのような爺さんと千田川が言ったことに対し
「うつぶせに倒れている被害者の顔を見ることはできない。ただ、あなたが被害者の顔を見る事ができた唯一の瞬間がある。それは、金を取ろうとして忍び込み、被害者と鉢合わせした、その瞬間だ」
 ついに、言い逃れに窮する千田川だった。


 しかし、事件後、殺された被害者を見て、「俺がやったんじゃない。連続窃盗犯がやったんだ」とうろたえる千田川を見ている視聴者は《あれ?殺人犯は別にいるんじゃないの》と思ったはず。
 実際、犯人と断定されたはずの千田川が殺人を認めず「俺はやっていない。やったのは連続窃盗犯だ」とわめくのを見て、想は驚愕の表情を見せる。
 これを見て視聴者は、《想の推理は間違っていたのか?》と思ったはず。実は私も。

 で、あちことのブログを読ませていただきました。
 これは、作者が『犯人が「俺は犯人じゃない!」と言い続け、読者がそれを信じて、犯人に同情したならしめたもの』という見る人を騙す為に作られた叙述トリックということらしいです。
 詳しくは、0時さんのブログ『カートゥン☆ワールド~漫画の世界~』「ドラマQ.E.D.~証明終了~」第8回の感想をお読みください。

 でも、反則ですよね。あの、殺人直後のシーン「オレじゃない。連続窃盗犯がやったんだ」と言っているんですよ。せめて「どうして?」とか「なぜ、こんなことに?」とか呟くのなら納得なのですが。
 今思えば、その後何度も「連続窃盗犯がやったんだ」と呟いていたのは、かえって怪しいと思うべきでした。
 この辺りの視聴者側の心理は、伊達さんの『伊達でございます!』NHK「Q.E.D. 証明終了」第8話:罪と罰 ~連続窃盗事件の怪しい被害者?で、詳細に書かれています。
《千田川邦彦は完全犯罪を遂げることは出来なかった…クローゼットに隠れてゴルフパターで被害者を襲ったのは実は千田川本人。彼はその記憶を完璧に封じ込めてしまい、自身の罪は現金の窃盗のみだと言い張ったのでした》《これは精神医学界では「抑圧された記憶」という仮説として知られています。普通は耐え難い経験をした犯罪被害者などが、その経験を思い出せないというような場合が多いのですが、今回は殺人を犯したことそのものが千田川には耐え難く、記憶を抑圧してしまったということだった》

 想の驚愕の表情は、理論では片付けられない人間の闇の部分を感じたからなのでしょう。

 ちなみに、製作側の意図は
 『笹塚刑事の捜査メモ8』で語られています。


 さて、私がこの回で一番面白いと感じたのは、想、加奈、水原警部の相互信頼。
① 加奈に竹刀で斬りつけるまねをされた時に、想がそれに乗って、やられた振りをするシーン。以前の想なら、無視するはず。
② 千田川が加奈に「お父さん(水原警部)に疑われて困っている」と訴えた時、「警部は、人をむやみに疑う人ではない。隠してることを警部に話したほうがいい」と言う。
③ ②のシーンで加奈は千田川におごらせたフルーツを無邪気に食べ続ける。これは、父親の仕事は間違いないし、娘が口を挟むべきではないという主張。
④ 現場検証に自分だけ立ち合わせてもらえなかったのは、娘が親の仕事に口を挟むことではないと納得していた。
⑤ 娘を現場検証に連れて行かなかったのは、犯人を捕まえることはその犯人の人生を決してしまうという重荷を背負わせたくなかったから
⑥ 想だけ立ち合わせたのは、想には⑤が受け止められると信頼していた。あと、犯人を逮捕することは、推理ゲームではなく⑤も背負わなくてはいけないことを教えたかったから。あえて仕事という言葉を出し「俺の仕事はここまでだ」と言い放つのも、そのためであろう

 と、まあ、知ったかぶりをしています。
 これは、くうふうさんの『見取り八段・実0段』【Q.E.D. 証明終了】第8話が、非常に参考になり、感銘を受けました。

 じつにおもしろかったです。
コメント (6)
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