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「銀打ちのジレンマ」というタイトルは私が勝手に付けたのですが、普通に銀を打ってうまくいかない様にジレンマという言葉がピッタリはまるように感じました。
まず、一番最初に目がいくのは▲2四銀でしょうか。しかし、これには△1四銀(失敗1図)とするりと脇に逃げられうまくいきません。
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では、△斜め後ろに利くという銀の特性を生かして△3四銀と柔らかく玉を攻めてみましょう。失敗1図と違い2五にも攻め駒が利いています。しかし、これにも△1四玉(失敗2図)と逃げられてうまくいきません。
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ならばと▲3二銀とこちらから王手を掛ければ、△1四玉には▲3四龍とすれば詰みます。しかし、今度は△1二玉(失敗3図)で詰みません。
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失敗1~3図を見ると、打った銀が邪魔になっていることに気がつきます。失敗1図では銀が邪魔をして▲3四龍が王手になりません。また、失敗2図では銀が邪魔で▲3四龍ができません。同じように失敗3図ではやはり銀が邪魔で▲3二龍ができません。詰め方(つめかた)の勢力を増したはずなのに、逆に邪魔駒になっているという皮肉な状況です。
特に失敗2図と失敗3図の関係が面白く、▲3四銀(失敗2図)は失敗3図の玉の逃げ方(△1二玉)だと▲3二龍で詰ますことができ、▲3二銀(失敗3図)は失敗2図の玉の逃げ方(△1四玉)には▲3四龍で詰ますことができます。
つまり、こっちを防ぐとあっちに逃げられ、あっちを防ぐとこっちに逃げられてしまうという状況です。打った銀が邪魔になり、しかも二つの逃げ方を一度に防げない状況、まさに「ジレンマ」です。
しかし、この失敗が成功のヒントにもなります。
1二や1四に逃げられた時に3二や3四に銀がいなければ、つまり、3二、3四に銀を置くことなく玉を1二、1四に追いやることができれば解決します。
詰将棋では、いえ、実生活でも、無理に追いたてるのではなく、おびき寄せる方(褒美や賛美)が効果的な場合も多いのです。
この問題の場合は▲1二銀(正解図)で解決です。
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△1二同玉なら▲3二龍(成功1図)、
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△1四玉には▲3四龍(成功2図)で悩みは解決です。
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(問題図で▲1四銀もありそうですが、△1四同玉ではなく△1四同歩で失敗です)