英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

『相棒 Season 10』 第4話 「ライフライン」

2011-11-11 21:33:22 | ドラマ・映画
 タイトルから重い話だとは想像できました。……案の定、悲しすぎるストーリーでした。労働者の不景気アリ地獄を描いた「ボーダーライン」を彷彿させるなあと思ったら、脚本は「ボーダーライン」の櫻井武晴氏でした。
 今シリーズは社会派ドラマ、人間ドラマがテーマなのでしょうか、とにかく、重いです。

 自分の会社を守るため、社員の生活を守るため、サラ金そして闇金融にまで頼らざるを得なくなり、更に深みにはまっていく被害者。金を借りるため取り立て係までやらされる。取り立ての相手は、同業者で同じ苦しみを共有する相手。その相手から殴られ、守ろうとした社員の一人に辞められ、心が折れてしまった被害者は、別の同業者に、「殺してくれ」と漏らしてしまう。
 疲れ果てたゆえの言葉、自殺では保険金が降りないゆえの言葉だった。
 その同業者も、被害者の気持ちが痛いほど分かってしまう。自分の姿を見ているようでつらく、また、被害者を楽にしてやりたい、そんな気持ちから、衝動的に被害者を刺してしまった。
 刺されて、「ありがとう」と言う被害者。刺さったカッターナイフを抜き取り、自ら同業者の指紋を拭き取り力尽く。なんとも、悲しい真相。
 (その他折れたカッターナイフの刃の行方や、その刃の所以により大口仕事の獲得業者は辞めた社員の勤める会社に納まり、その社員が担当となるという皮肉、同業者による資金援助の互助会(非合法)や、犯人逮捕より闇金融の摘発を先にした右京の配慮、着信・発信履歴による推理、捜査二課(組対五課)の活躍(台詞あり)など、書けば長くなるので省略します)

 その他としては、被害者の妻と娘の対比。
 夫に振り回されたことを呪う妻、自分に容疑がかけられ取り乱す。夫が死んでしまい、金と生活の心配をし、闇金融が摘発されたことで返さなければならない借金が減り喜ぶ。右京も擁護していましたが、よほどお金に追いつめられていたのでしょうね。
 それにしても、夫の死を悲しまず、当然、犯人が誰か関心もない妻でした。会社の経営にはノータッチで苦労をしたとは思えないのですが、夫のことを呪うような言葉ばかりで、右京や娘の前で半狂乱になるし。
 対する娘は、父の様子がおかしいことを心配していたが、声を掛けることができずにいた。学校で父の件で帰るように言われ、父が自殺したのではないかと思った。自分が声を掛けていれば父は自殺しなかったかもしれないと後悔していて、他殺と聞いてホッとしたという。
 娘はお金の心配をあまりしなかったからかもしれませんが、あまりに、対照的な二人でした。あと、まったく関係ありませんが、この娘さん、女子柔道の福見選手に似ていると思いました。


 捜査の中で、小規模企業(この話では運送業)の経営者の苦しみが浮き彫りになっていく造りは、「ボーダーライン」と相似(批判しているのではありません)。深く、見ごたえのあるストーリーでした。特に、刺されて「ありがとう」と言う被害者の心境、思わず刺してしまった加害者の心理は、痛々しいです。
 そろそろ、悪者相手に右京の頭脳フル稼働のストーリーが恋しくなりました。 


【ストーリー】公式サイトより
 「帯川運送」の社長・帯川(林和義)が何者かに殺害された。会社の経営に行き詰まっていた帯川にはあちこちに借金のある多重債務者だった。

 伊丹(川原和久)ら捜査一課は、借金の連帯保証人になっていた妻の郁美(立原麻衣)が、夫の保険金目当てで殺害したのでは、と疑惑を抱くが…。

 一方、右京(水谷豊)と尊(及川光博)は帯川の携帯に残されていた、新潟行きの小包の写真を調べ始める。

 帯川の借入先の1つ、「緊急互助会」が、無利子で金を貸し出す同業者の組織だったことがわかり、さらに新潟行きの小包を配送する仕事が「緊急互助会」の副会長・青木(青山勝)の会社「青木配送センター」に回されていたことが明らかになる。金に困っていた帯川がなぜ人に仕事を譲ってまわしたのか…?

ゲスト:林和義 青山勝 立原麻衣 中沢青六

▲脚本・監督

脚本:櫻井武晴 監督:近藤俊明
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする