英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

2016年(2015年度)棋王戦第3局 

2016-03-24 23:15:12 | 将棋
棋王戦は渡辺棋王が3勝1敗で防衛を果たした。

 防衛を決めた第4局は、渡辺竜王・棋王が「自分の全公式戦の中でも3本の指に入る将棋だったと思います」(『渡辺明ブログ』「棋王戦五番勝負第4局。」より)というほどの名局だったらしい。
 「名局だったらしい」と言ったのは、中盤辺りまでしかリアルタイムで観戦できなかったのと、まだ詳細を調べておらず、終盤、渡辺棋王が放った▲7七桂の“うっちゃり”の一手の上っ面しか眺めていないからである。まあ、本人も仰っているし、巷でも評判なのだから、疑う必要は全くないだろう。

 今回取り上げるのは、その前の第3局。こちらはほぼリアルタイムで観戦し、驚愕と感動を十二分に味わった。


 第1図は、驚愕の一手前の局面。

 先手が▲2一飛成と桂を取り、飛車得となった局面。
 ここに至るまで、先手の佐藤天八段が局面をリードし、大駒取りに対し、駒損を甘受して2度も大駒の下から歩を打って辛抱を重ねていた。“先手が1手早く駒を取っていき、その差がついに飛車1枚となった”という印象があった。
 後手も△2八とと飛車を取り返せば駒損を回復できる。しかし、それだと直前に取った桂馬を8四に打たれ、後手の穴熊城に火の手が上がってしまう。駒損はなくなっても、既に飛車を打たれており、その上、▲8四桂と急所に手をつけられては、2手差くらいありそうだ。


 △8三銀打!


 飛車を取らずに自陣の強化。確かに、銀を打たれてみると、後手穴熊は見違えるほど堅固となった。(広瀬八段は△8三銀を予想していた)
 ≪いくらなんでも先手は飛車得。良くないはずはない!≫
 しかし、考えれば考えるほど、次の一手が難しい。
 先手が攻めの手を指したとして、飛車を取られて駒割は互角となり、後手の5七のと金が輝いてくる。後手はまだ飛車を打ち込んでいないので1手遅れている勘定なのだが、△8三銀打と自陣を1手早く補強しているので、差引ゼロ。
 となると、「指したと仮定した1手」プラス「飛車を取られた後の1手」で、後手の5七のと金を活用した攻めを上回る手段が必要となるのだが、うまく寄りつく手段が見当たらない。

 よって、“先手は飛車を逃がし、駒得を主張する方針”を採ったが、△5六角と好所に角を打たれ、“と金”と金の交換がほぼ間違いなくなり、駒割は飛車金交換と差が縮まった上、先手玉の弱体化と2九の飛車の働きの弱さが露呈してしまった。


 △5六角に対し、▲6三歩と攻めの足掛かりを作った局面だが、「楔(くさび)を打ちこんだ」と胸を張って言い切れないほどの弱い楔だ。

 以下、△6七と▲同金△同角成▲4三角△6六桂と進んだ。

 図の1手前の▲4三角はあまり利いていない角打ちに見えるが、△7六馬を防いでおり、場合によっては▲6一角成と先の▲6三歩と連動させた攻めも見た油断のならない手だ。(まあ、▲6一角成と来ても、渡辺棋王なら△同金▲同龍に△7一金打と喜んで打ちそうな気がするが)

 △6六桂と打った第4図、若干後手の攻め駒が少ないが、100人中98人は後手を持ちたいと言うのではないだろうか?
コメント (6)
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