この将棋について書き始めたら「長くなりそうな予感」がしますが……
何から書き始めたらいいのだろう?………
①木村八段、その絶品の解説
②塚田九段の指し方の是非というか、何と言うか…
③Puella α(コンピュータ将棋)の特性
が主な論点。
棋譜を追いながら考えていけばいいと思ったが、それぞれに焦点を絞って書きたかったのですが、それぞれが独立していないのと、焦点ごとに書くと局面が行ったり来たりしてしまうので、手順を追いながら随時、考えてみたい。
図は後手・塚田九段の△6四銀に先手・Puella α(以下「プエラα」と表記)が▲2五桂と跳ね△2四銀に▲1三桂不成と仕掛けたところ。
コンピュータ将棋の特徴として、「隙があれば先攻」「無理気味でも仕掛ける」が挙げられるが、プエラαにもその傾向があるのかもしれない。
それから、わざわざ「不成」としたのもコンピュータらしい。なってもならなくても取る一手(コンピュータ的には取らない手も考える(計算する))なので、評価値は同じなのだと思う。さらに、駒の動きとしては「成る」方が特殊なので、不成の方を先に計算し、評価値が同じなら先に計算した方を優先するのではないだろうか(私の推測で、的外れかもしれません)。
いきなり桂を捨てる過激な仕掛けだが、この仕掛けは前例があり棋士の読みの範囲であるらしい。ただ、塚田九段としては、こう仕掛けられるのなら、その前の△6四銀は不用意だったとやや後悔していたらしい。確かに、実戦の展開を考えると、6四銀の形は中途半端で、この銀は4筋に働かせたいところだ。
とは言え、仕掛けの是非は微妙で、これで塚田九段が形勢を損ねたわけではなさそうだ。
木村八段は1、2を争う解説者である。軽妙で面白く、分かりやすい。ファンを常に意識して、楽しませることも忘れない。爆笑問題の太田光のようなボケや突っ込みを入れたり、アンガールズの田中のように困った悲鳴のようなセリフを吐いたり、俳優の正名僕蔵が演じる変態性で聞き手を困らせたりして、飽きさせない。
1三の桂の取り方も、実に論理的に分かりやすく説明していた。単に指し手を解説するのではなく、局面の考え方の説明から入るので非常に理解しやすい。
さて、1図の▲1三桂不成に△同銀(他の手では不利になると木村八段が明快に解説)に▲2五歩。この▲2五歩は、次に▲1四歩で銀を手に入れる権利を得た手(先に桂馬を捨て、香を取り返されるので、実質は銀と桂香の二枚換え)。
これに対し、△4五歩は4六に居て働きの良い角を退かそうという手。端に利かすか6四~9一を睨み後手の攻めを牽制するか、どちらかを放棄させる手で、先手としても悩ましいところだが、プエラαは1分で▲3七角を選択。
これにより端が緩和されたので、後手も反撃の構えを見せたいところ。候補手として△7五歩の突き捨て、△9四歩(手待ちの意味もある)、△8四歩(8五に桂を跳ねた時の支え)が考えられた。
ただ△8四歩は少し前の局面では有力であったが、
「この局面では……」
と木村八段が解説しようとしたところで△8四歩と塚田九段が着手(1分の考慮)。
プエラαは6分の考慮で▲1四歩を決行。この歩はいつでも突けるので、その権利を保持しておき、他の手を指して一番タイミングの良い時に行使したいというのが棋士の発想である。
対して、コンピュータはタイミングを計るという思考はなく、ひたすら手を読み局面を評価するので、成算があれば決行する。本局の場合は、△8四歩を「隙あり」と判断(計算)したのかもしれない。
第2図以下▲1四歩△同銀▲同香△同香▲8三銀と進む。
この銀打ちがあるので、木村八段は△8四歩に若干の不安を感じたのだ。塚田九段も△8四歩を悔やんでいたとのこと。ただ、先の△6四銀と同様に、この手で後手が形勢を損ねた訳ではないらしい。ただ、このあたりのアヤが微妙に塚田九段の心理に影を差し、今後の指し手に影響を与えたのかもしれない。
第3図は▲8三銀から8手進んだ局面。後手の飛車は3一に追いやられ、成銀と角の成り込みから先手に左半分を荒らされる恐れはあるものの、1筋にと金を作っていて二枚換えの駒得。先手の成銀もどれだけ効力を発揮するかが未定なので、後手としてもまずまずの展開のようだ。
ただ、第3図の▲4六歩はなかなかの好手で、後手陣の急所である4筋の攻めを見ており、先手の攻めの幅が格段に広がった。
木村八段もこの手を高く評価していた。この手を見て木村八段の顔つきが厳しいものになった。
この手は△4六同歩と相手してくれれば、いつでも▲4四歩と利かすことができるが、放置されると次に厳しい手があるわけではない。▲4五歩と取り込んだ瞬間も拠点にはなるが敵陣には直接響かず、更にもう一手▲4四歩と伸ばしてようやく手になる(この▲4四歩が非常に厳しい)。こういう、後に利いてくる手というのは棋士好みの手だ。
第3図以下△1六と▲6二角成△8五桂▲6四成銀(第4図)と進む。
後手は△1六とと手順に▲6二角成と馬を作らせるのも気が利かないが、他の手も難しい。この際、△4六同歩と取り「やって来い」と迎え撃つのも一策だったと思うが、コンピュータ将棋の攻めの強さを知っていたら指す気にはならないだろう。
第4図の▲6四成銀はコンピュータソフトらしい手だ。まず、△8五桂に銀を逃げるかどうかは悩ましいところだが、それを手抜きするのはあり得る手だ。しかし、手抜きは良いとして、駒損をして得た銀を8三に打ち込み成り返った手間暇かけた成銀を、働きの低い6四の銀と簡単に交換してしまう。
コンピュータにとって過去のいきさつは関係なく、現局面での断片的判断のみを採用するコンピュータらしい指し手だ。先手としては損な成銀と銀の交換であったが、後手飛車を追いやった功績は残っていて、計算は合うのかもしれない。
第4図以下、△6四同歩▲4四銀△同金▲同馬△3三銀▲5四馬△4三銀▲6三馬(第5図)と進む。
△6四同歩に▲4四銀は木村八段も予想した手で、これがなかなか手強かった。△4四同金以下後手も2枚の銀を打ち後手陣を修復するが、後手角の活用路が3三の地点で埋まってしまったのが痛い。
さて第5図、大きな分岐点であった。
何から書き始めたらいいのだろう?………
①木村八段、その絶品の解説
②塚田九段の指し方の是非というか、何と言うか…
③Puella α(コンピュータ将棋)の特性
が主な論点。
棋譜を追いながら考えていけばいいと思ったが、それぞれに焦点を絞って書きたかったのですが、それぞれが独立していないのと、焦点ごとに書くと局面が行ったり来たりしてしまうので、手順を追いながら随時、考えてみたい。
図は後手・塚田九段の△6四銀に先手・Puella α(以下「プエラα」と表記)が▲2五桂と跳ね△2四銀に▲1三桂不成と仕掛けたところ。
コンピュータ将棋の特徴として、「隙があれば先攻」「無理気味でも仕掛ける」が挙げられるが、プエラαにもその傾向があるのかもしれない。
それから、わざわざ「不成」としたのもコンピュータらしい。なってもならなくても取る一手(コンピュータ的には取らない手も考える(計算する))なので、評価値は同じなのだと思う。さらに、駒の動きとしては「成る」方が特殊なので、不成の方を先に計算し、評価値が同じなら先に計算した方を優先するのではないだろうか(私の推測で、的外れかもしれません)。
いきなり桂を捨てる過激な仕掛けだが、この仕掛けは前例があり棋士の読みの範囲であるらしい。ただ、塚田九段としては、こう仕掛けられるのなら、その前の△6四銀は不用意だったとやや後悔していたらしい。確かに、実戦の展開を考えると、6四銀の形は中途半端で、この銀は4筋に働かせたいところだ。
とは言え、仕掛けの是非は微妙で、これで塚田九段が形勢を損ねたわけではなさそうだ。
木村八段は1、2を争う解説者である。軽妙で面白く、分かりやすい。ファンを常に意識して、楽しませることも忘れない。爆笑問題の太田光のようなボケや突っ込みを入れたり、アンガールズの田中のように困った悲鳴のようなセリフを吐いたり、俳優の正名僕蔵が演じる変態性で聞き手を困らせたりして、飽きさせない。
1三の桂の取り方も、実に論理的に分かりやすく説明していた。単に指し手を解説するのではなく、局面の考え方の説明から入るので非常に理解しやすい。
さて、1図の▲1三桂不成に△同銀(他の手では不利になると木村八段が明快に解説)に▲2五歩。この▲2五歩は、次に▲1四歩で銀を手に入れる権利を得た手(先に桂馬を捨て、香を取り返されるので、実質は銀と桂香の二枚換え)。
これに対し、△4五歩は4六に居て働きの良い角を退かそうという手。端に利かすか6四~9一を睨み後手の攻めを牽制するか、どちらかを放棄させる手で、先手としても悩ましいところだが、プエラαは1分で▲3七角を選択。
これにより端が緩和されたので、後手も反撃の構えを見せたいところ。候補手として△7五歩の突き捨て、△9四歩(手待ちの意味もある)、△8四歩(8五に桂を跳ねた時の支え)が考えられた。
ただ△8四歩は少し前の局面では有力であったが、
「この局面では……」
と木村八段が解説しようとしたところで△8四歩と塚田九段が着手(1分の考慮)。
プエラαは6分の考慮で▲1四歩を決行。この歩はいつでも突けるので、その権利を保持しておき、他の手を指して一番タイミングの良い時に行使したいというのが棋士の発想である。
対して、コンピュータはタイミングを計るという思考はなく、ひたすら手を読み局面を評価するので、成算があれば決行する。本局の場合は、△8四歩を「隙あり」と判断(計算)したのかもしれない。
第2図以下▲1四歩△同銀▲同香△同香▲8三銀と進む。
この銀打ちがあるので、木村八段は△8四歩に若干の不安を感じたのだ。塚田九段も△8四歩を悔やんでいたとのこと。ただ、先の△6四銀と同様に、この手で後手が形勢を損ねた訳ではないらしい。ただ、このあたりのアヤが微妙に塚田九段の心理に影を差し、今後の指し手に影響を与えたのかもしれない。
第3図は▲8三銀から8手進んだ局面。後手の飛車は3一に追いやられ、成銀と角の成り込みから先手に左半分を荒らされる恐れはあるものの、1筋にと金を作っていて二枚換えの駒得。先手の成銀もどれだけ効力を発揮するかが未定なので、後手としてもまずまずの展開のようだ。
ただ、第3図の▲4六歩はなかなかの好手で、後手陣の急所である4筋の攻めを見ており、先手の攻めの幅が格段に広がった。
木村八段もこの手を高く評価していた。この手を見て木村八段の顔つきが厳しいものになった。
この手は△4六同歩と相手してくれれば、いつでも▲4四歩と利かすことができるが、放置されると次に厳しい手があるわけではない。▲4五歩と取り込んだ瞬間も拠点にはなるが敵陣には直接響かず、更にもう一手▲4四歩と伸ばしてようやく手になる(この▲4四歩が非常に厳しい)。こういう、後に利いてくる手というのは棋士好みの手だ。
第3図以下△1六と▲6二角成△8五桂▲6四成銀(第4図)と進む。
後手は△1六とと手順に▲6二角成と馬を作らせるのも気が利かないが、他の手も難しい。この際、△4六同歩と取り「やって来い」と迎え撃つのも一策だったと思うが、コンピュータ将棋の攻めの強さを知っていたら指す気にはならないだろう。
第4図の▲6四成銀はコンピュータソフトらしい手だ。まず、△8五桂に銀を逃げるかどうかは悩ましいところだが、それを手抜きするのはあり得る手だ。しかし、手抜きは良いとして、駒損をして得た銀を8三に打ち込み成り返った手間暇かけた成銀を、働きの低い6四の銀と簡単に交換してしまう。
コンピュータにとって過去のいきさつは関係なく、現局面での断片的判断のみを採用するコンピュータらしい指し手だ。先手としては損な成銀と銀の交換であったが、後手飛車を追いやった功績は残っていて、計算は合うのかもしれない。
第4図以下、△6四同歩▲4四銀△同金▲同馬△3三銀▲5四馬△4三銀▲6三馬(第5図)と進む。
△6四同歩に▲4四銀は木村八段も予想した手で、これがなかなか手強かった。△4四同金以下後手も2枚の銀を打ち後手陣を修復するが、後手角の活用路が3三の地点で埋まってしまったのが痛い。
さて第5図、大きな分岐点であった。
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