《やられたぁ…》……いや、《不覚だった》と言うべきか……
不覚を取る原因となったのが……息子が誘拐されたと思われる父親・小峰裕司(鎌倉太郎)から「誘拐など起きていないと全否定された」と冠城から聞いた右京のセリフ。
「それは妙ですねぇ。
普通、子どもが誘拐されたら、どれほど犯人に脅迫されようと通報するものです。
自分たちだけで、恐怖に耐えきれるものではありません」
「警察に介入されたくない理由でもあるのでしょうか?」
決めつけ過ぎなのでは?
警察が把握していない誘拐事件は多数あるかもしれない。「警察に通報したら、子どもの命はない」と言われたら相当悩むはずだ。実際?第12話「欺し合い」では、警察が介入していたが、その裏で、親は犯人に身代金を払っていた。
それに「自分たちだけで、恐怖に耐えきれるものではありません」と言うのも変だ。恐怖というよりは、《不安・心配・息子を喪失するかもしれないという悲しみの混じった恐れ》という感情であろう。ただし、精神医学的には“不安”は「対象のない恐れの感情」と定義され、“恐怖”は「対象がある場合」に用いるようで、一概には“変”とも言い切れない。とにかく、悲しみを中心とする負の感情が入り混じった心情で、“恐怖”の一言で言い切ってしまうのには抵抗を感じた。
そんな訳で、このセリフから《子どもが誘拐された親の心情を決めつけ過ぎる下手な脚本だぜ》(←最近、観ている『ジョジョの奇妙な冒険』東方仗助風に呟いてしまうのだった)
特命係が誘拐を察知したのは……
顔に殴られたアザのある少年・影山将(山城琉飛)を見かけ声を掛けたところ、「友だちが悪い奴に……友だちを助けて下さい!」と訴えられたのが発端。
そこで監禁するアジトになると思われる安村(今野浩喜)のアパートを張っていたところ、レンタカーから安村と小峰翔太(加藤憲史郎)が降りて安村の部屋に入っていく。部屋に入ると翔太は布団に入り、二人はひと言ふた言、会話。……拉致監禁というより軟禁。
妙な誘拐だが、二人が旧知の仲で、翔太は誘拐されているとは思っていないのかもしれない。
誘拐を感知した特命係も、《翔太が安村の部屋に遊びに来ただけ》という可能性、あるいはそう言い逃れられる可能性を考え、様子を見ているのかもと……
でも、営利誘拐を実行させなくても。
この後も右京は、肉屋や公園で安村に声を掛ける。捜査と言うより、安村の人となりを探っているようだ。
和菓子職人としての矜持はあるが、商売の才覚がない安村。
「もう一度、一からやり直せればいいんですが」という安村に
「今なら、まだ間に合うんじゃありませんか?」と右京。
一方、冠城は小峰が裏リベートで得た裏金を自宅に隠し持っていることを聞き出す。
「なるほど、裏金を違法に……だとすれば、小峰さんが通報しない理由もわかりますねえ」(右京)
でも、数十店舗のスーパーのオーナーなら、1億なら裏金を使わなくても何とかなるのでは?
「問題は(誘拐の主犯の)大槻健太(西興一朗)がどうやってその事実(裏金を隠し持っている)を知ることになったのか?」(右京)
………というわけで、右京は更に安村と大槻の身辺調査を。安村の和菓子屋の潰れた事情や、安村と大槻の関係、大槻が塾の講師をしていたことなどを突き止める。
さらに、塾での大槻の素行も知り、大槻と翔太の仲も知る。
まあ、大槻と翔太の繋がり云々は、逮捕後でも良いという気がするが、ドラマの脚本としては丁寧なつくりか。
事件は、大槻が身代金をコインロッカーに入れさせ、それを回収しようとしたところで確保・逮捕。
一方、安村は翔太になぜ狂言誘拐をしようと思ったのかを聞く。
誘拐の真相と、翔太の性悪さが露見。自分本位の人の尻を叩くだけの父親にして、この息子だ。
(小峰の激安スーパーもオフィスも安っぽいし、裏金を作るなど、ドラマ冒頭で息子に大口を叩くほどの人物ではない)
この息子も「おじさん、トロそうだ」と馬鹿にするような生意気なガキだった。
翔太の言葉に安村がキレそうになったところで、特命係登場(参入)
ところで、この期に及んでも、私は真相に気づいていなかった……
安村と将との回想シーン
・陸橋で身投げしたい衝動の二人、シンパシーを感じる
・人生ゲームに興じる二人、その中で、将が父親から受けたDVを改めて知る(階段から子どもを突き飛ばすクソ義父)
でも友達なら、虐待の実態を児童相談所などに通報しろよ。あれだけ顔に傷があるのなら、担任も気づかないと。
・安村は、人生ゲームのボードのマス目の不幸なイベントを楽しいイベントに書き換えていた
・将は、安村が大槻から誘拐の共犯の誘いを受けている会話を聞く
・将は安村に悪事をやめるように訴えるが、安村は《犯罪者になる自分と将が友だちであってはいけない》と将と別離する。
聴取後、
「安村さん、一からやり直しましょう。あなたの大福、食べたい人が大勢いると思いますよ」と右京。
公園での言葉と同様に優しい右京だが、だったら、誘拐事件が成り立つ前に、安村を止めろよ!
「親友ができる100万ドルもらう」とマス目に張った紙のラストシーンも良かった。
“ああ見えて、人情味あふれる人”……暇か課長(見かけ通り人情に厚いと思うが)
義父の部屋(家)から将を助け出し、
「きみの友だちのことも、あの二人が必ず何とかしてくれる。
きみはいい男たちと出会った。運が良かったよ」(微笑む)
取り調べ中に将を安村に会わせた暇か課長に右京が
「これは、かなりのルール違反ですよねえ」
「お前に言われたくねえわっ! いつもルールを破ってばっかいるくせにぃ」と課長が反撃。
冠城が同意し、それに右京はちょっと心外な顔をするが、納得顔に。
………
最初は、“下手な脚本家”と思っていた。……冒頭に述べた右京の思い込みのようなセリフ、外堀を埋めるような捜査で誘拐阻止や人質救出に踏み切らない特命係など。
そして、いつもより優しい右京、いつもに増して人情味あふれる暇か課長、いつもより特命係に協力的な捜一トリオと青木……太田愛氏か?
…………脚本は瀧本智行氏だった。
過去脚本は第11話(元日SP)「オマエニツミハ」、第6話「三文芝居」(いずれも今期)。なるほど……
翔太の様子から普通の誘拐ではないとは思っていたが、将の言う“友だち”が安村というのに気づかなかったのは迂闊。
将は《翔太が共犯の狂言誘拐》という内容の会話を聞いていたので、特命係もその辺りまで知っていたと思われる。
私は、《翔太を誘拐する計画がある》ことまでしか特命係は知っていないと思っていて、このズレも見誤った原因か。でも、やはり、冒頭に挙げた右京のセリフが最大の因と言い訳させてほしい。
それにしても、人生ゲームの使い方が秀逸。
秀逸なストーリーだった。
第1話、第2話、第3話、第4話、第5話、第6話、第7話、第8話、第9話、第10話、第11話(元日SP)、第12話、第13話、第14話、第15話
【ストーリー】番組サイトより
誘拐事件をいち早く察知した特命係
“仲間たち”と協力して動き出すが…
顔に殴られたアザのある少年を見かけ、声を掛けた右京(水谷豊)と亘(反町隆史)は、思い掛けず「友だちを助けて下さい!」と頼まれる。
そんな中、近年急激に成長している激安スーパーの創業者・小峰(鎌倉太郎)の小学生の息子が誘拐される事件が発生。ところが、小峰は警察に介入されたくない理由でもあるのか、一向に通報する様子がない。それでも、異変を察知した右京と亘は、伊丹(川原和久)や角田(山西惇)らの協力をあおぎ、手分けして捜査を始める。誘拐に荷担していると思われる男・安村(今野浩喜)をマークする右京。
沈黙を守っている小峰家の動向を探る亘。事件発生に半信半疑ながら“容疑者”の一人を注視する伊丹たち。そして、アザのある少年の保護者に会い、怪我の理由を問い質す角田。さらに、青木(浅利陽介)までもが張り込みに駆り出される。
それぞれが独自の動きを見せる中、事件は思ってもみない方向に転がっていく!
アザのある少年と誘拐事件の関係は?
“チーム特命係”が一丸となり
意外過ぎるカラクリを解き明かす!
ゲスト:今野浩喜
脚本:瀧本智行
監督:東伸児
不覚を取る原因となったのが……息子が誘拐されたと思われる父親・小峰裕司(鎌倉太郎)から「誘拐など起きていないと全否定された」と冠城から聞いた右京のセリフ。
「それは妙ですねぇ。
普通、子どもが誘拐されたら、どれほど犯人に脅迫されようと通報するものです。
自分たちだけで、恐怖に耐えきれるものではありません」
「警察に介入されたくない理由でもあるのでしょうか?」
決めつけ過ぎなのでは?
警察が把握していない誘拐事件は多数あるかもしれない。「警察に通報したら、子どもの命はない」と言われたら相当悩むはずだ。実際?第12話「欺し合い」では、警察が介入していたが、その裏で、親は犯人に身代金を払っていた。
それに「自分たちだけで、恐怖に耐えきれるものではありません」と言うのも変だ。恐怖というよりは、《不安・心配・息子を喪失するかもしれないという悲しみの混じった恐れ》という感情であろう。ただし、精神医学的には“不安”は「対象のない恐れの感情」と定義され、“恐怖”は「対象がある場合」に用いるようで、一概には“変”とも言い切れない。とにかく、悲しみを中心とする負の感情が入り混じった心情で、“恐怖”の一言で言い切ってしまうのには抵抗を感じた。
そんな訳で、このセリフから《子どもが誘拐された親の心情を決めつけ過ぎる下手な脚本だぜ》(←最近、観ている『ジョジョの奇妙な冒険』東方仗助風に呟いてしまうのだった)
特命係が誘拐を察知したのは……
顔に殴られたアザのある少年・影山将(山城琉飛)を見かけ声を掛けたところ、「友だちが悪い奴に……友だちを助けて下さい!」と訴えられたのが発端。
そこで監禁するアジトになると思われる安村(今野浩喜)のアパートを張っていたところ、レンタカーから安村と小峰翔太(加藤憲史郎)が降りて安村の部屋に入っていく。部屋に入ると翔太は布団に入り、二人はひと言ふた言、会話。……拉致監禁というより軟禁。
妙な誘拐だが、二人が旧知の仲で、翔太は誘拐されているとは思っていないのかもしれない。
誘拐を感知した特命係も、《翔太が安村の部屋に遊びに来ただけ》という可能性、あるいはそう言い逃れられる可能性を考え、様子を見ているのかもと……
でも、営利誘拐を実行させなくても。
この後も右京は、肉屋や公園で安村に声を掛ける。捜査と言うより、安村の人となりを探っているようだ。
和菓子職人としての矜持はあるが、商売の才覚がない安村。
「もう一度、一からやり直せればいいんですが」という安村に
「今なら、まだ間に合うんじゃありませんか?」と右京。
一方、冠城は小峰が裏リベートで得た裏金を自宅に隠し持っていることを聞き出す。
「なるほど、裏金を違法に……だとすれば、小峰さんが通報しない理由もわかりますねえ」(右京)
でも、数十店舗のスーパーのオーナーなら、1億なら裏金を使わなくても何とかなるのでは?
「問題は(誘拐の主犯の)大槻健太(西興一朗)がどうやってその事実(裏金を隠し持っている)を知ることになったのか?」(右京)
………というわけで、右京は更に安村と大槻の身辺調査を。安村の和菓子屋の潰れた事情や、安村と大槻の関係、大槻が塾の講師をしていたことなどを突き止める。
さらに、塾での大槻の素行も知り、大槻と翔太の仲も知る。
まあ、大槻と翔太の繋がり云々は、逮捕後でも良いという気がするが、ドラマの脚本としては丁寧なつくりか。
事件は、大槻が身代金をコインロッカーに入れさせ、それを回収しようとしたところで確保・逮捕。
一方、安村は翔太になぜ狂言誘拐をしようと思ったのかを聞く。
誘拐の真相と、翔太の性悪さが露見。自分本位の人の尻を叩くだけの父親にして、この息子だ。
(小峰の激安スーパーもオフィスも安っぽいし、裏金を作るなど、ドラマ冒頭で息子に大口を叩くほどの人物ではない)
この息子も「おじさん、トロそうだ」と馬鹿にするような生意気なガキだった。
翔太の言葉に安村がキレそうになったところで、特命係登場(参入)
ところで、この期に及んでも、私は真相に気づいていなかった……
安村と将との回想シーン
・陸橋で身投げしたい衝動の二人、シンパシーを感じる
・人生ゲームに興じる二人、その中で、将が父親から受けたDVを改めて知る(階段から子どもを突き飛ばすクソ義父)
でも友達なら、虐待の実態を児童相談所などに通報しろよ。あれだけ顔に傷があるのなら、担任も気づかないと。
・安村は、人生ゲームのボードのマス目の不幸なイベントを楽しいイベントに書き換えていた
・将は、安村が大槻から誘拐の共犯の誘いを受けている会話を聞く
・将は安村に悪事をやめるように訴えるが、安村は《犯罪者になる自分と将が友だちであってはいけない》と将と別離する。
聴取後、
「安村さん、一からやり直しましょう。あなたの大福、食べたい人が大勢いると思いますよ」と右京。
公園での言葉と同様に優しい右京だが、だったら、誘拐事件が成り立つ前に、安村を止めろよ!
「親友ができる100万ドルもらう」とマス目に張った紙のラストシーンも良かった。
“ああ見えて、人情味あふれる人”……暇か課長(見かけ通り人情に厚いと思うが)
義父の部屋(家)から将を助け出し、
「きみの友だちのことも、あの二人が必ず何とかしてくれる。
きみはいい男たちと出会った。運が良かったよ」(微笑む)
取り調べ中に将を安村に会わせた暇か課長に右京が
「これは、かなりのルール違反ですよねえ」
「お前に言われたくねえわっ! いつもルールを破ってばっかいるくせにぃ」と課長が反撃。
冠城が同意し、それに右京はちょっと心外な顔をするが、納得顔に。
………
最初は、“下手な脚本家”と思っていた。……冒頭に述べた右京の思い込みのようなセリフ、外堀を埋めるような捜査で誘拐阻止や人質救出に踏み切らない特命係など。
そして、いつもより優しい右京、いつもに増して人情味あふれる暇か課長、いつもより特命係に協力的な捜一トリオと青木……太田愛氏か?
…………脚本は瀧本智行氏だった。
過去脚本は第11話(元日SP)「オマエニツミハ」、第6話「三文芝居」(いずれも今期)。なるほど……
翔太の様子から普通の誘拐ではないとは思っていたが、将の言う“友だち”が安村というのに気づかなかったのは迂闊。
将は《翔太が共犯の狂言誘拐》という内容の会話を聞いていたので、特命係もその辺りまで知っていたと思われる。
私は、《翔太を誘拐する計画がある》ことまでしか特命係は知っていないと思っていて、このズレも見誤った原因か。でも、やはり、冒頭に挙げた右京のセリフが最大の因と言い訳させてほしい。
それにしても、人生ゲームの使い方が秀逸。
秀逸なストーリーだった。
第1話、第2話、第3話、第4話、第5話、第6話、第7話、第8話、第9話、第10話、第11話(元日SP)、第12話、第13話、第14話、第15話
【ストーリー】番組サイトより
誘拐事件をいち早く察知した特命係
“仲間たち”と協力して動き出すが…
顔に殴られたアザのある少年を見かけ、声を掛けた右京(水谷豊)と亘(反町隆史)は、思い掛けず「友だちを助けて下さい!」と頼まれる。
そんな中、近年急激に成長している激安スーパーの創業者・小峰(鎌倉太郎)の小学生の息子が誘拐される事件が発生。ところが、小峰は警察に介入されたくない理由でもあるのか、一向に通報する様子がない。それでも、異変を察知した右京と亘は、伊丹(川原和久)や角田(山西惇)らの協力をあおぎ、手分けして捜査を始める。誘拐に荷担していると思われる男・安村(今野浩喜)をマークする右京。
沈黙を守っている小峰家の動向を探る亘。事件発生に半信半疑ながら“容疑者”の一人を注視する伊丹たち。そして、アザのある少年の保護者に会い、怪我の理由を問い質す角田。さらに、青木(浅利陽介)までもが張り込みに駆り出される。
それぞれが独自の動きを見せる中、事件は思ってもみない方向に転がっていく!
アザのある少年と誘拐事件の関係は?
“チーム特命係”が一丸となり
意外過ぎるカラクリを解き明かす!
ゲスト:今野浩喜
脚本:瀧本智行
監督:東伸児
私は今回の話は神森氏かと思ったのですが、外れました。今シーズンから加わった瀧本氏だったのですね。
瀧本氏に関しては、セリフ回しなどはもう少し工夫してほしいと思うものの、ストーリーの構築は丁寧だという印象を持っています。
今回は誘拐された少年が実は犯人とグル(むしろ少年が首謀者)、「友だちを助けて下さい!」の「友だち」が実は安村という二つのミスリードがありました。
前者は読めたのですが、後者は全く気づけませんでした。きれいに一本取られたなという感じでした。
今シーズンでは、今のところ今作が一番良かったと思います。
脚本家予想の外し方が違っただけで、あとは同感です。
注意深く考えれば、「友達」=安村と気づくのですが、将と安村の年齢の差が、その発想を遮断してしまいました。
>今シーズンでは、今のところ今作が一番良かったと思います。
同感です。瀧本智行氏には期待したいです。