棋王戦は、先日の記事「2022棋王戦 藤井五冠、敗者復活戦に回る」の後、本戦のもう一つの準決勝で、羽生九段が伊藤匠五段を降し、本戦決勝は羽生九段-佐藤天九段戦となった。(藤井五冠と伊藤匠五段は、敗者戦に回り、そこで勝つと本戦決勝の敗者と対戦する)
で、本戦決勝(11月17日)は……羽生九段や羽生ファンにとっては残念な結果となってしまった。せっかく、藤井五冠が準決勝で敗れて、チャンスが大きくなったというのに……私がそんなせこい了見だったのが敗因(そんな訳はない)
羽生ー佐藤天戦は、佐藤天九段が珍しい△3三桂戦法を採用、手将棋の難解な将棋となった。
相撲で言う"差し手争い”が続いた後、一気に大捌きとなったが、この大捌きは佐藤天九段に分があり、佐藤九段が優勢で終盤に。しかし、そこで佐藤九段が誤り、逆転。見た目には羽生九段が相当勝ちやすそうに見えたが、薄い佐藤玉が意外に生命力があり、見た目ほどは優勢ではなかった。
優勢や有利でも、最善手を指し続けるのは難しいという先手(羽生九段)の状況。△6五桂で7七の角取りの局面。後手の飛車が7五におり、角が動くと先手の7八の金が取られてしまう状況。
ここで、《それでもかまいませんよ》と▲1一角成!
玉の守備金をポロリと取られる。しかも、飛車成りで!
角取りに対して、その角を逃げる際、香を取りつつ角を成るというのは、効率の良い手なのだが、その代償(飛車を成り込まれ、守備金を取られる)の方が痛い。
なので、《終盤は駒の損得より、速度》…角を取られる一手(只で取られるのではなく、桂との交換)を利用して敵玉に迫るというのが、普通の棋士の考え方。その常識に捉われず、さらに踏み込む……羽生九段らしい着手だったが、決断の良すぎ、気前良すぎだった。
ここでの最善は、▲6二金(詰めろ)△8四歩▲7六歩らしいが、私には解読不明で、これを最善と読むのは相当難しい。後手玉は心もとない状態だが、△8四歩の延命策が相当しぶとい。歩を突くだけで駒を消費せず、延命できるのが大きい。藤井五冠が先手を持っていたら、残り時間僅かで疲労もあるこの局面で、どう指したのだろうか?
この取引(▲1一角成△7八飛成▲7九金△7五龍)で、佐藤天九段が勝勢に近くなったが、羽生九段も踏みとどまり、《互角近く》~《不利》の形勢で推移した。
見ていて、《ダメそうだな》と思ってしまったのが下図での羽生九段の次の一手。
図の△5一歩は、直前に先手攻略の大きな足掛かりの5六の歩を成り捨てて(二歩にならない為)、打った歩。
マイナス面が大きく、最善手とは言い難いが、佐藤天彦九段らしい実戦的な一着。(糸谷八段も指しそう)
▲4二成桂。……これでは、後手玉に迫るべき成桂が遠ざかってしまう。(これが△5一歩の目的)
暴発せずに辛抱した一着ではあるが、正確な形勢はともかく、後手玉へのプレッシャーがなくなり、佐藤天九段も怖いところがなくなり、実戦的には先手が勝てない将棋となった。
実戦も、着実な△3三香を打たれ、着実に佐藤天九段が勝利に近づいていった。
図での最善手は難しいが、▲7七桂と一旦飛車の態度を聞いて、△7四飛なら▲6五馬と勝負した方が、勝機があったかもしれない。
本局では、踏み込む個所を間違って形勢を損じた。これは羽生九段の負けパターンの一つ(まあ、羽生九段でなくてもそうであろう)。
ただ、佐藤天九段に対しては、そういう方針(大局観)を誤ってしまうことが多いような気がする。言い訳ぽくなってしまうが、佐藤天九段とは読み筋が合わない……そう感じる。
本局の敗局で。棋王挑戦の道が険しくなったが。閉ざされたわけではない。
敗者復活決勝の相手は、藤井五冠になる公算が強いが、伊藤匠五段も強敵。この際、どちらが相手になっても、"楽しみな一局”と思うことにしよう。
で、本戦決勝(11月17日)は……羽生九段や羽生ファンにとっては残念な結果となってしまった。せっかく、藤井五冠が準決勝で敗れて、チャンスが大きくなったというのに……私がそんなせこい了見だったのが敗因(そんな訳はない)
羽生ー佐藤天戦は、佐藤天九段が珍しい△3三桂戦法を採用、手将棋の難解な将棋となった。
相撲で言う"差し手争い”が続いた後、一気に大捌きとなったが、この大捌きは佐藤天九段に分があり、佐藤九段が優勢で終盤に。しかし、そこで佐藤九段が誤り、逆転。見た目には羽生九段が相当勝ちやすそうに見えたが、薄い佐藤玉が意外に生命力があり、見た目ほどは優勢ではなかった。
優勢や有利でも、最善手を指し続けるのは難しいという先手(羽生九段)の状況。△6五桂で7七の角取りの局面。後手の飛車が7五におり、角が動くと先手の7八の金が取られてしまう状況。
ここで、《それでもかまいませんよ》と▲1一角成!
玉の守備金をポロリと取られる。しかも、飛車成りで!
角取りに対して、その角を逃げる際、香を取りつつ角を成るというのは、効率の良い手なのだが、その代償(飛車を成り込まれ、守備金を取られる)の方が痛い。
なので、《終盤は駒の損得より、速度》…角を取られる一手(只で取られるのではなく、桂との交換)を利用して敵玉に迫るというのが、普通の棋士の考え方。その常識に捉われず、さらに踏み込む……羽生九段らしい着手だったが、決断の良すぎ、気前良すぎだった。
ここでの最善は、▲6二金(詰めろ)△8四歩▲7六歩らしいが、私には解読不明で、これを最善と読むのは相当難しい。後手玉は心もとない状態だが、△8四歩の延命策が相当しぶとい。歩を突くだけで駒を消費せず、延命できるのが大きい。藤井五冠が先手を持っていたら、残り時間僅かで疲労もあるこの局面で、どう指したのだろうか?
この取引(▲1一角成△7八飛成▲7九金△7五龍)で、佐藤天九段が勝勢に近くなったが、羽生九段も踏みとどまり、《互角近く》~《不利》の形勢で推移した。
見ていて、《ダメそうだな》と思ってしまったのが下図での羽生九段の次の一手。
図の△5一歩は、直前に先手攻略の大きな足掛かりの5六の歩を成り捨てて(二歩にならない為)、打った歩。
マイナス面が大きく、最善手とは言い難いが、佐藤天彦九段らしい実戦的な一着。(糸谷八段も指しそう)
▲4二成桂。……これでは、後手玉に迫るべき成桂が遠ざかってしまう。(これが△5一歩の目的)
暴発せずに辛抱した一着ではあるが、正確な形勢はともかく、後手玉へのプレッシャーがなくなり、佐藤天九段も怖いところがなくなり、実戦的には先手が勝てない将棋となった。
実戦も、着実な△3三香を打たれ、着実に佐藤天九段が勝利に近づいていった。
図での最善手は難しいが、▲7七桂と一旦飛車の態度を聞いて、△7四飛なら▲6五馬と勝負した方が、勝機があったかもしれない。
本局では、踏み込む個所を間違って形勢を損じた。これは羽生九段の負けパターンの一つ(まあ、羽生九段でなくてもそうであろう)。
ただ、佐藤天九段に対しては、そういう方針(大局観)を誤ってしまうことが多いような気がする。言い訳ぽくなってしまうが、佐藤天九段とは読み筋が合わない……そう感じる。
本局の敗局で。棋王挑戦の道が険しくなったが。閉ざされたわけではない。
敗者復活決勝の相手は、藤井五冠になる公算が強いが、伊藤匠五段も強敵。この際、どちらが相手になっても、"楽しみな一局”と思うことにしよう。
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