うきながら けぬるあはとも なりななむ ながれてとだに たのまれぬみは
うきながら 消ぬる泡とも なりななむ ながれてとだに たのまれぬ身は
紀友則
水に浮いたまま消えてしまう泡のように、つらい思いを抱いたまま消えてしまいたい。生きながらえていればいつかは、とさえ期待のできないわが身は。
「うき」には「浮き」と「憂き」が掛かっています。第三句の「なむ」は他者に対する願望を表す終助詞。泡に喩えたわが身を、他者の目で客観視しているのですね。このまま生きながらえても「いつかは」という望みさえ持つことができない、深い絶望感に苛まれての悲しい詠歌です。