漢検一級 かけだしリピーターの四方山話

漢検のリピート受検はお休みしていますが、日本語を愛し、奥深い言葉の世界をさまよっています。

古今和歌集 0827

2022-02-03 19:42:46 | 古今和歌集

うきながら けぬるあはとも なりななむ ながれてとだに たのまれぬみは

うきながら 消ぬる泡とも なりななむ ながれてとだに たのまれぬ身は

 

紀友則

 

 水に浮いたまま消えてしまう泡のように、つらい思いを抱いたまま消えてしまいたい。生きながらえていればいつかは、とさえ期待のできないわが身は。

 「うき」には「浮き」と「憂き」が掛かっています。第三句の「なむ」は他者に対する願望を表す終助詞。泡に喩えたわが身を、他者の目で客観視しているのですね。このまま生きながらえても「いつかは」という望みさえ持つことができない、深い絶望感に苛まれての悲しい詠歌です。