漢検一級 かけだしリピーターの四方山話

漢検のリピート受検はお休みしていますが、日本語を愛し、奥深い言葉の世界をさまよっています。

古今和歌集 0842

2022-02-18 06:49:38 | 古今和歌集

あさぎりの おくてのやまだ かりそめに うきよのなかを おもひぬるかな

朝霧の おくての山田 かりそめに 憂き世の中を 思ひぬるかな

 

紀貫之

 

 朝霧が立ち込める晩稲の山田の刈り取りが始まっている。その「刈り初め」を見るにつけ、「かりそめ」の儚いこの憂き世のことを思ったことよ。

 詞書には「思ひにはべりける年の秋、山寺へまかりける道にてよめる」とあります。「思ひ」は喪、「おくて」は「置く(て)」と「晩稲」の掛詞、「かりそめ」は「刈り初め」と「かりそめ」の掛詞です。歌の配列からして亡くなった友則の喪かとも思われますが、その点は定かではありません。