さきだたぬ くいのやちたび かなしきは ながるるみづの かへりこぬなり
先立たぬ 悔いの八千度 悲しきは 流る水の かえり来ぬなり
閑院
先にあの世に行かなかった私の悔いとして、何度も繰り返し悲しく思われることは、流れる水が戻って来ないのと同じように、あの人が帰ってこないということです。
詞書には「藤原忠房が、昔あひしりてはべりける人の身まかりける時に、とぶらひにつかはすとてよめる」とあります。弔問につかわされた作者が、忠房の弔意に準えて詠んだということですね。「後悔先に立たず」「流水源に返らず」のことわざを踏まえた詠歌とされているようです。
作者閑院の歌は 0740 と本歌の二首。どのような人物かは不詳です。