延喜十二年、定方の左衛門督の賀のときのうた
みなそこに かげをうつして ふぢのはな ちよまつとこそ にほふべらなれ
水底に 影をうつして 藤の花 千代まつとこそ にほふべらなれ
延喜十二年(912年)、藤原定方左衛門督の祝いのときのうた
水底に影を映して、藤の花は千代にあなたさまの御栄えを願って美しく咲いているかのようです。
貫之歌の特徴のひとつ、水に映る情景ですね。第四句「まつ」には「松」もかかっているとする解釈もあるようです。
藤原定方(ふじわら の さだかた)は平安時代前期から中期にかけての貴族にして、定方自身も勅撰集に十三首が入集している歌人。三条右大臣の名で、百人一首(第25番)にも歌が採られていますね。
なにしをはば あふさかやまの さねかづら ひとにしられで くるよしもがな
名にし負はば 逢坂山の さねかづら 人に知られで くるよしもがな
今日から、貫之集第六「賀」の和歌のご紹介です。引き続きよろしくお願いします。