あひ知りたる人のもとにしばし通はぬほどになりて、なかたえてまた思ひかへして、いひやる
いそのかみ ふるのなかみち なかなかに みずはこひしと おもはましやは
いそのかみ ふるの中道 なかなかに 見ずは恋しと 思はましやは
知り合いの人のところをしばらく訪れないこととなって時が過ぎ、また思い出して詠んで送った歌
昔馴染みの仲の私たちだけれども、いっそのこと逢わなければ恋しいとも思わなかったでしょうに。
貫之集の恋歌に三首しかない、詞書が付された歌。(他の二首は 618、650)
「いそのかみ」は「布留(奈良県にある地名)」にかかる枕詞。上二句が次の「なかなか」を導く序詞であると同時に、「ふる」に「古」がかかっており、詠み人とその相手とが古い知り合いであることも表現していると考えられています。
この歌は、古今和歌集(巻第十四「恋歌四」 第679番)に入集しています。