たつたがは にしきおりかく かみなづき しぐれのあめを たてぬきにして
竜田川 錦織りかく 神無月 時雨の雨を たてぬきにして
よみ人知らず
竜田川が、紅葉の錦を羽織っている。十月の時雨を縦糸、横糸にして編んだ錦を。
「かく」は「掛く」でしょうか。「たて」は縦糸、「ぬき」は横糸。紅葉をもたらすとされる時雨を、紅葉の錦を編んだ縦糸、横糸に見立てて、それを竜田川が羽織っていると見る。初句は「たつたやま」としている本も多いそうで、「錦を羽織る」という情景からすると、山の方がしっくりくるようにも思います。
「神無月」と明示されいることからもわかる通り、ここから巻第六「冬歌」。0342 までの29首ですので、ご紹介が終わるのはまさに神無月の初旬。旧暦とは違いますのでまだ「冬」という季節ではありませんが、さすがに猛暑もなりを潜めているでしょうか。
よろしくおつきあいください。