いまよりは つぎてふらなむ わがやどの すすきおしなみ ふれるしらゆき
今よりは つぎて降らなむ わが宿の すすきおしなみ 降れる白雪
よみ人知らず
今からは、引き続いて降ってほしいものだ。わが家の庭の薄を押しならして降る白雪は。
「おしなみ」は「押し靡み」で押しなびかせる意。降る雪が薄を押しなびかせている情景ですが、その雪が降り続いてほしいのは何故なのか、詞書等もないので良くわかりません。情景そのものを風情あるものと捉えているのでしょうか。
降る雪に薄が押しならされている情景は、万葉集の次の歌(4016番)にも歌われていますが、こちらは「悲しく思ほゆ」と歌っています。旅の宿にあっての詠歌のようですので、作者の置かれている状況が同じ景観を一方では「続いてほしいもの」他方では「悲しく思ほゆ」と感じさせているのでしょう。
めひののの すすきおしなべ ふるゆきに やどかるけふし かなしくおもほゆ
婦負の野の すすき押しなべ 降る雪に 宿借る今日し 悲しく思ほゆ
高市連黒人