漢検一級 かけだしリピーターの四方山話

漢検のリピート受検はお休みしていますが、日本語を愛し、奥深い言葉の世界をさまよっています。

古今和歌集 0331

2020-09-25 19:49:44 | 古今和歌集

ふゆごもり おもひかけぬを このまより はなとみるまで ゆきぞふりける

冬ごもり 思ひかけぬを 木の間より 花と見るまで 雪ぞ降りける

 

紀貫之

 

 冬ごもりの時期に思いもかけぬことだが、木々の間から降る雪で、まるでそこに花が咲いたかと思われることだ。

 0323 と同じく、降る雪を花と見立てての詠歌。降る雪の、まるで花のような美しさを称えつつ、春を待ちわびる気持ちでしょう。


古今和歌集 0330

2020-09-24 19:18:36 | 古今和歌集

ふゆながら そらよりはなの ちりくるは くものあなたは はるにやあるらむ

冬ながら 空より花の 散りくるは 雲のあなたは 春にやあるらむ

 

清原深養父

 

 冬なのに空から花が散って来るということは、雲の向こうは春なのであろうか。

 降る雪を花びらと見立て、春を待ちわびる気持ちをストレートに詠みあげた歌。歌意も、その心情もとてもわかりやすいですね。^^

 


古今和歌集 0329

2020-09-23 19:25:41 | 古今和歌集

ゆきふりて ひともかよはぬ みちなれや あとはかもなく おもひきゆらむ

雪降りて 人もかよはぬ 道なれや あとはかもなく 思ひ消ゆらむ

 

凡河内躬恒

 

 私の思いなど、雪が降って人も通わない道のようなものなのだろうか。降り積もる雪に消えてしまう足跡のように、そこにあったこともわからず消えてしまうのだろう。

 救いのないほどの孤独と絶望。「雪の降れるを見てよめる」という詞書からは、この歌が作者の実際の境遇・思いなのか、降り積もる雪の情景からの想像の歌なのかはわかりませんが、繰り返し読むほどに切ない気持ちにさせられます。

 

 


古今和歌集 0328

2020-09-22 19:55:23 | 古今和歌集

しらゆきの ふりてつもれる やまざとは すむひとさへや おもひきゆらむ

白雪の 降りて積もれる 山里は 住む人さへや 思ひ消ゆらむ

 

壬生忠岑

 

 白雪の降り積もる山里では、雪が融けて消えるように人々の気持ちも寂しさに沈んでしまっているのだろうか。

 「思いが消える」という最終句の解釈が難しいですね。ただでさえ寂しい山里に雪が降り積もる情景が寂しさの象徴とすれば、そこに住む人「までも」思いが消えるという表現は、寂しい情景に、住む人の心も温かさが雪と同じく融けてしまって寂しさに打ち震えている、と解釈してみました。


古今和歌集 0327

2020-09-21 19:46:50 | 古今和歌集

みよしのの やまのしらゆき ふみわけて いりにしひとの おとづれもせぬ

み吉野の 山の白雪 踏みわけて 入にし人の おとづれもせぬ

 

壬生忠岑

 

 吉野山の白雪を踏み分けて、山に入って隠遁した人は、便りさえもよこさない。

 「おとづる」はここでは手紙を出す意。「おとづれもせぬ」の「も」には、山から帰って来るどころか、という思いが入っているのでしょう。懇意にしていた人が吉野の山中で隠遁生活に入ってしまい、会うこともできなければ手紙すらも来ない。一体どうしているだろうという思いですね。