いよいよ、10月17日プロ野球ドラフト会議が見えてきました。世の中で「マニュアル化」にいちばん苦心することになるのが、この「スカウティング」という分野だそうです。「最初に見て、ピーンと来て、こいつや! と思ったら構わないから獲ってこい! どうせわからんのや!」とかつての名スカウトが話しているように、鳴り物入りで他球団に入団した選手が期待外れで、外れ1位や下位指名選手が主力になるケースも多い。今年はU18でも活躍中の両エース佐々木朗希(大船渡)、奥川恭伸(星稜)両投手が一位指名される可能性が高いが、外れても野手を取ればチームの主力に成長する確率は高いのです。チームの主力が円熟期を迎えたソフトバンクなどは必須のはずです。
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今年のドラフトは投手の上位指名が多いと言われる。
高校生の佐々木朗希(大船渡)、奥川恭伸(星稜)、西純矢(創志学園)、宮城大弥(興南)、大学生では森下暢仁(明治大)の評価がとくに高い。ここ5年で1位指名された野手のうち、中村奨吾、岡本和真、野間峻祥、吉田正尚(青山学院大→'15年オリックス)、大山悠輔、村上宗隆(九州学院→'17年ヤクルト)、神里和毅(日本生命→'17年DeNA)、近本光司(大阪ガス→'18年阪神)はチームの顔とも言える主力選手に成長。
成功未満ではあるが、清宮幸太郎(早稲田実業→'17年日本ハム)、辰己涼介(立命館大→'18年楽天)らもチームの戦力になりつつある。2位指名でも宗佑磨、廣岡大志(智弁学園→'15年ヤクルト)、京田陽太、藤岡裕大(トヨタ自動車→'17年ロッテ)がいる。
日本ではドラフト上位で指名されるのは投手が多いが、成功率で見ると野手のほうが断然高い。
現状も将来も、「課題は攻撃力」という球団がある。
たとえば、オリックスは吉田正尚というリーグを代表する強打者を擁しているが、吉田以外は非力な打者が多く、現時点でのチーム成績は打率.244(リーグ6位)、本塁打85(同5位タイ)、得点473(同6位)と低調だ。
セ・リーグではチーム本塁打が2ケタの中日(79本)、阪神(83本)の長打不足が深刻。とくに阪神は主力打者が今季42歳の福留孝介、38歳の糸井嘉男で、シーズン途中に入団したソラーテが二塁16試合、遊撃3試合を守り、守備率は二塁.955、遊撃.800という体たらくを演じている。
打てる野手が少ないので、打てそうな外国人にディフェンスの要であるセカンドとショートを守らせ、それがチーム成績4位という不甲斐ない結果に現れている。
過去5年間で日本一4回のソフトバンクにしても主力の松田宣浩(36歳)、柳田悠岐(30歳)らもベテランの域に差し掛かり、若手で強打者と言えるのは上林誠知(24歳)くらいしか見当たらない。過去5年間に上位で野手を1人しか指名していなければ攻撃力が落ちるのは当たり前。
西武も野手の上位指名が少なく(過去5年間で1位はゼロ、2位で2人)、海外FA権を取得した秋山翔吾(31歳)の去就が不安であり、中村剛也も36歳なので、強力打線が数年先まで維持できるのか難しい状況にある。
これらのことを考えると、ドラフトで野手を指名しなければいけない球団が多くあるのがわかる。投手に逸材が多く、野手の上位指名候補は数人しかいない、という評価を逃げ道にして、育成の難しいと言われる野手の指名から逃げる球団が多そうだが、過去5年の結果が示すように、上位指名された野手のほとんどは戦力になっている。
いない、と言われる中でも、チーム事情に合った野手を探して上位で指名するか、今年はスカウトの眼力とともに「胆力」が試されそうである。
私が上位に指名してほしい野手は次の選手たちである。
高校生では武岡龍世(八戸学院光星)、韮澤雄也(花咲徳栄)、紅林弘太郎(駿河総合)、石川昂弥(東邦)、井上広大(履正社)、捕手では山瀬慎之助(星稜)、藤田健斗(中京学院大中京)、東妻純平(智弁和歌山)、進藤勇也(筑陽学園)。また、海野隆司(東海大)、郡司裕也(慶応大)、佐藤都志也(東洋大)と、大学生捕手にも楽しみな選手が揃う。
近年、注目されている「右打ちの強打者タイプ」を挙げると、紅林、石川、井上が合致する。石川は内角打ち、井上は脚力を不安視する声があるが、それらはプロに入ってからでも補うことはできる。まずは素材の良さに注目して、思い切って上位で指名してほしい。
「“Mr.ドラフト”の野球日記」小関順二