ウクライナのゼレンスキー大統領はビデオ演説で、東部ハルキウ州で露軍が軍事拠点としていたイジュームなどをウクライナ軍が奪還したと宣言した。英国防省は12日、露軍が州のほぼ全域から部隊撤退を命じた可能性を指摘した。ウクライナ軍は短期間の反転攻勢で東部での主導権を握った。
プーチン露政権は2月24日の侵略開始当初から、ドンバス地方(ドネツク、ルハンスク両州)の全域制圧を主要な侵攻目的に位置付けてきた。ドネツク州に近接するイジュームは露軍の出撃拠点だった。英国防省はウクライナ軍のハルキウ州での反攻成功は「露軍の侵略作戦全体に大きく影響する」との見方を示した。
ウクライナ軍の総司令官は11日、SNSでハルキウ州で露軍から「3000平方キロ・メートル以上を奪還した」と強調した。反攻着手から約5日間で奪還した面積は東京都の約1・4倍に相当する。露国防省が11日に発表した戦況に関する地図では、ハルキウ州のほぼ全域が占領地域から外れていた。
ウクライナ軍参謀本部は12日、露軍兵士の敗走は、ドネツク州や7月にロシアが全域制圧を宣言したルハンスク州にも広がっていると発表した。
ゼレンスキー氏は11日放映の米CNNとのインタビューで反攻の目標に関し、露軍を侵略前の位置に撤退させるだけでなく、2014年以降、親露派武装集団が一部を実効支配するドンバス地方全域の「解放」も目指す考えを示した。
英誌エコノミストは、反攻成功の要因として、米国が供与した対レーダーミサイル(HARM)やドイツの自走式対空砲「ゲパルト」を駆使し、露軍を混乱させたことを挙げた。米軍が露軍の動向に関する情報を提供し、事前に反攻作戦についても意見交換を重ねていたと伝えられている。
ウクライナ軍は8月29日に南部などでの多方面の反攻開始を宣言した。ゼレンスキー氏は9月4日、ロシアが14年に併合した南部クリミア奪還に意欲を示した。露軍の東部での戦力を手薄にするため南部での反撃を強調する「情報戦」を展開したとの見方が出ている。今回は情報戦でロシア主力部隊を南部に結集させました。一方、ウクライナ軍はハルキウ州の反攻に、戦車や装甲車などを大量投入しており、周到に準備していたようだ。
露軍にとって4月の首都キーウ周辺からの撤退に次ぐ痛手となる。英紙ザ・タイムズは11日、「手負いのプーチン大統領の方が危険だ」と評し、局面打開のため核兵器の使用に傾くことへの懸念を伝えた。クリミヤ半島奪還を目指すと、核攻撃もあり得ますね。