『名も無く豊かに元気で面白く』

読んだ本、ニュース、新聞、雑誌の論点整理、備忘録として始めました。浅学非才の身ながら、お役に立てれば幸いです。

「中国ブルジョワジーの成功」がマルクス主義によりゲーム・オーバーに近づいている

2023-11-10 06:36:47 | 日記
資本主義は民主主義と一体であり、市場経済があるのと同時に、選挙で選ばれる代議政治と法の支配があります。それらのどれかを切り離せるとは思えません。市場経済のみが存在して、民主主義が存在しなければ、最終的にはその経済は蝕まれるはずです。無責任な官僚制度による利益追求が始まり、腐敗が広がります。 
もし、中国が成功し、資本主義・民主主義の誤りが証明されれば、それは、アダム・スミスから、ハイエク、フリードマンに至るまでの多くの偉大な経済学者もまた間違っていたということになります。
けれども、中国の経済的は崩壊に近づいていると見ています。人口統計学的要素や財政・金融上の逆風により、今後、中国経済は鈍化していくはずです。今後10年で成長率は半分以下になると推測しています。

中国はこの40年の間に歴史上最大のブルジョワジー(中産階級)を創り出しました。一方で、マルクス・レーニン主義者は健在です。大きな矛盾です。マルクスによれば、ブルジョワジーは敵で、革命で打倒すべき対象だからです。
ブルジョワジーは民主主義に興味はありません。彼らの関心は財産権です。それを守るには法の支配が必要です。が、中国では財産権は保障されていません。市民は法で守られておらず、国家の気まぐれで人々の資産は簡単に取り上げられてしまいます。共産党に「お前は腐敗している。規則に違反した」と判断されたらゲーム・オーバーです。
中国の中産階級は不安を感じ始めています。だからこそ、中国には資本規制があるのです。規制がなければ、中国の富の大部分は、法の支配と保護を求め国外へ流出してしまうからです。中国の富、つまり、中産階級の多くは国外への移住を望んでいます。移民を希望する中国人は多く、中国への移住を望む人は少ないという事実が、それを物語っています。

中国の国家と中産階級の緊張関係は、経済の最もダイナミックな場所で顕在化しています。ハイテク産業の集積地深圳のIT企業の人々は頻繁にシリコンバレーとを行き来しています。アメリカのパスポートを持つ人も少なくありません。その彼らに、北京の共産党政府は懐疑的な目を向けています。
「今この国には三種類の中国がある」
「新・新中国」「新・旧中国」「旧・旧中国」の3つです。「新・新中国」とはテクノロジーの世界です。つまりテンセントやアリババです。「新・旧中国」は政党の世界です。そこには、共産党員が子供に経営を継がせる高収益の国有企業があります。そして、最後の「旧・旧中国」は北部の寂れた工業地帯にある採算性が低いままの国有企業です。
これら3つの中国の間には対話も調和もありません。特にテクノロジーの「新・新中国」と共産党の「新・旧中国」の間には、「テクノロジー中国」と「政党中国」の間には、指摘したような緊張関係があります。
アリババの創始者馬雲(ジャック・マー)をはじめとするIT企業のリーダーたちが、習近平の顔色をうかがっているからです。
中国政府が、その正当性の根拠としていた経済成長は、もはや維持できなくなりつつあります。共産党は別の根拠を探さなければなりません。その1つが毛沢東思想です。近年の習近平や共産党幹部の言説に、その復活が垣間見られます。
中国は何らかの形で政治的な危機を経験しています。私たちが間違っているのか、それとも、中国が失敗するのか─。真実の瞬間に、アダム・スミスとフリードリッヒ・ハイエク、ミルトン・フリードマンが正しかったと証明されます。自由な社会がなければ自由経済は長く維持できません。
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